Bリーグ千葉ジェッツ躍進の秘訣!「脱・勝利至上主義」で得た人気と実力

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Bリーグ千葉ジェッツ躍進の秘訣!「脱・勝利至上主義」で得た人気と実力

Bリーグのトップクラブ、千葉ジェッツふなばしの島田慎二会長が、1月25日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。脱・勝利至上主義から天皇杯3連覇の結果を残し、観客動員リーグトップへと導いた手腕に迫った。

2011-12年シーズン、千葉ジェッツは年間観客動員2.9万人(1試合平均1143人)、スポンサー収入1.5億円と経営危機に陥っていた。しかし、同シーズンに島田が社長(当時)に就任してからというもの業績は右肩上がりを続け、2018-19年シーズンには年間観客動員15.6万人(1試合平均5204人)、スポンサー収入8億円に増加。チームも2017年から天皇杯3連覇を飾るなど、一躍トップクラブへと躍進した。

一体、千葉ジェッツの何が凄いのか? ブレインスカウター・サトミキこと佐藤美希が、島田の案内のもと船橋アリーナを取材。するとアリーナの入り口でスタッフが「ご搭乗ありがとうございます!」と訪れた客に挨拶していることに気づく。島田は「飛行機や空港をイメージするエッセンスを会場に取り込むなど細かいこだわりを持っている」と説明。そしてアリーナに入った瞬間、一面がチームカラーの赤で彩られた空間が広がり、試合開始前にはコート全体を使ったプロジェクションマッピングや花火、炎などでド派手に演出。試合中は、会場の音楽に合わせて観客がチームを後押しし、タイムアウトのたびにチアリーディングチームが会場を盛り上げる。さらに試合後も選手が客席に向かってプレゼントをパスし、コート上で記念撮影にも応じるなど「非日常」のエンターテインメントがそこにはあった。

実は島田、それまでスポーツビジネスとは関係のない旅行会社を経営しており、その経験を活かしてクラブの再建に着手。就任当初からクラブをある程度の規模まで持っていくために3つの段階を整理し、一つずつ問題をクリアにしていった。まず「ホップ」で資金調達をしてクラブの体力を高め、「ステップ」でチームを強化。ある程度チームの魅力が高まったタイミングで社員を増やして観客増加にむけて「ジャンプ」するというもの。

まず資金調達では地方銀行と提携。「銀行は企業の社長の性格も業績もわかっているので、我々が知りたい情報をすべて持っている」と言い、彼らから地元企業を紹介してもらいアプローチ。その時、バスケットボール界のトップチームであるトヨタ自動車アルバルク東京の「打倒」を掲げ、「世界のトヨタを地元の企業が集結して倒しましょう」という燃えるキーワードを軸に少しずつ資金を集めていった。

そこで得た資金を元に、チームの強化に着手。しかし、日本代表のヘッドコーチや代表クラスの選手を加入させても2~3年は結果を出せずにいた。この時のことについて島田は自身のバスケットボール経験のなさもあり「どういうチームを作って、どのような勝ち方をしたいといった哲学がなかった」と反省。「監督によってスタイルが変わるのではなく、まずはチームのアイデンティティがあって、それに合う監督を招聘して、そのスタイルに興味関心を持っている選手たちが集まれる状態にしなくてはいけなかった」と分析し、普遍的なチーム理念として、「アグレッシブなディフェンスから走る」を掲げた。経営陣と監督、選手が一気通貫となったことで、全体でブレずに戦えるようになり状況は改善。2017年から天皇杯3連覇を成し遂げるなど結果が形に表れるようになった。

これには番組MCの勝村政信も共感。「わかりやすいのが日本代表で、どれだけ良い選手が集まっても監督が代わると戦術も変わってしまう。じゃあ、日本のサッカーが何なのか聞かれたら誰も答えられない」と日本サッカー界が長年抱え続ける問題点を指摘。すると島田は、「一番大事なのはファンがあってのプロスポーツなので、また観に来たいと思ってもらえなければ意味がない。あの理念は“勝つための戦術”ではなくて“負けてもまた観たい”と思えるスタイルは何かを考えて決めた。あくまでファンファースト。ファンが増えればスポンサーが増えて、チーム強化に繋がり、またファンが喜ぶというサイクルが生まれる」と話した。

そして、現在の盛り上がりを決定づけたのが集客への取り組み。冒頭で佐藤が目の当たりにした初心者でも楽しめるド派手な演出など、試合以外のエンターテインメントを充実。さらに様々なイベントでストレスになっている飲食ブースの並びを、アプリから注文してキャッシュレスで受け取れるサービスを導入することで劇的に改善するなど、アリーナのホスピタリティを徹底的に向上させた。

さらに千葉ジェッツにはクラブの根幹となるもう一つの理念があった。
「千葉ジェッツを取り巻く全ての人達とともにハッピーになる」
これについて島田は「優勝は目的ではなく手段。チームが強い方が喜んでくれるから勝つことを目指すけれど、決して勝つことだけが目的ではない。これが我々のクラブの最上位概念」と語った。これは、クラブで働く社員にも言えることで、「社員の給料を増やす。スポーツ界によくある、休みがない、帰れない、好きだから頑張りますといった“やりがい搾取”を絶つ」と断言した。

ある男性社員はそれまで深夜まで残業することも少なくなかったが、クラブの方針転換によって勤務状況は劇的に改善。それまで家族との時間を殆どとれずにいたが、今では定時退社して夕飯を子供たちと一緒に食べられるようになるなど、改革の効果は表れてきている。このVTRを見た島田は「うれしいです。社員も社員の子供も奥さんもハッピーになる。それが理想ですよね」と語り、「スポーツクラブだからと甘えた瞬間に発展はないと思っている。競技関係者とか、好きすぎる人だと、競技の魅力を前面に押し出してしまう。バスケットボールというコンテンツを商材にしているサービス業でしかないと割り切っているのが結果的に良かったのかなと思います」と話していた。

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