新機軸のマッチングでハッピーに!スポーツビジネス界が求める人材とは?

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新機軸のマッチングでハッピーに!スポーツビジネス界が求める人材とは?

ヤフー株式会社の本間浩輔常務執行役員が、3月28日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。スポーツ業界で求められる人材や就職方法、そして、働く事の意味を考えていく。

6000人のスタッフを抱えるIT最大手ヤフーで、数々の社内改革を成功させてきた本間。その著書は人事のバイブルとなり、多くの企業がそのメソッドを参考にしている。さらに、スポーツに特化したビジネススクール「スポーツヒューマンキャピタル」で人材育成を行う、まさにスポーツ×人材のプロフェッショナルだ。

そんな本間も、スポーツ業界への就職人気の高まりを感じているという。20~30代に「給与とやりがいどちらが大事?」と質問を投げかけると、やりがい57.47%、給与42.53%(Wantedly調べ)という結果が出ており、やりがい重視派にスポーツ業界は人気が高いのだとか。しかし、そこには思わぬ落とし穴が……。それは近年の耳にすることが増えた「やりがい搾取」。雇用主が従業員のやりがいに甘え、不当に安い給料や劣悪な環境で働かせていることが問題となっている。

本間は「それをやっていたら優秀な人は入ってこないし、人に夢を与えるはずのスポーツなのに、それを運営する組織がブラック企業というのはあり得ない」と断罪。「少なくとも働いている人が幸せであることが前提。そこを変えなければ結果として日本のスポーツは良くならない。なんとしても僕らの代で断ち切らなければならない」と強く訴えかけた。

また、スポーツクラブは一般的な会社とは違った特殊性がある。「ただ儲ければ良いというわけではないですし、(どんなことをしても)強ければ良いかというとそうでもないですよね? 地域に受け入れられるクラブにして、スポンサーとの付き合い方も考えていかなければならない」とスポーツクラブならではの在り方を説明。「勝つ・儲ける・地域貢献するという連立方程式を上手に解いていくのが難しいところで、ビジネスで成功した人がクラブ経営で上手く行くとは限らない」と話した。

さらに働きたいと思ってもJリーグクラブの求人は多くなく就職は狭き門。一体どのような人材が求められているのか? まず、本間が掲げたのは「自ら考え動ける人」。スポーツクラブの社員やスタッフは少なく、多くても40~50人。しかし、人数のわりに大企業並みに仕事が多く、個々が必要な仕事を選択して動いていかないと回らない。さらにチケット販売やイベント運営、選手の管理など専門的な仕事が多岐にわたるため、「専門分野を持つ人」が重宝されるという。「新卒の人がスポーツ組織に入るときに専門分野がないのはつらいかもしれない。(本来は)就職してから経験して一つずつ極めていけば良いのだけれど、そういう人を雇っている余裕がない」とリアルな姿を伝えた。

一方で、受け皿となるクラブ・企業はどうあるべきか? 本間は「ミッションが明確であること」と述べ、何をやって何をやらないか優先順位を付けることで行動にぶれがなくなるという。例えば鹿島アントラーズが掲げているミッションは「全ては勝利のために」。その結果、選手・スタッフ一丸でJクラブ最多の20タイトルを獲得。ビジネス面でも2018年度の営業収益は約73億円を記録した。番組アナリストで、関東リーグ・ブリオベッカ浦安の監督でもある都並敏史も選手獲得の際には「クラブの理念を叶えられる選手であることが大切で、技術レベルはその後に見る」という。本間は「組織はそうあるべき」と賛同し、「優秀というだけでとると大概は失敗する。こういう組織にしたいからこういう人材が必要とするべき」と話した。

近年、これらの考えを第一にしている求人サービスをJリーグクラブも活用している。そのサービスが「ウォンテッドリー」。従来の求人サイトとの違いは、給与など採用条件が載っておらず、その代わりに企業理念や行動方針を打ち出している点。ウォンテッドリーの仲暁子CEOは「特に若い世代は給料だけではなく、会社の向かう方向や意義が腹落ちしていないと頑張れないという層が多い」と語り、条件面だけでなく価値観を共感し、人材と企業のミスマッチが起こらないようにすることを目指しているという。

そんなウォンテッドリーが推奨しているのがカジュアル面談。Webサイト上では、従来の重苦しい雰囲気の面接への導線ではなく、募集ページに「話を聞きに行きたい」ボタンを用意。気軽に会話をすることでお互いを知るところからスタートする。「ゴールは転職や採用ではなくて、採用された人が活躍し、お互いにハッピーになること。突然結婚するのではなくて、まずはデート感覚で」と狙いを明かした。

そして、ヤフーの人事の責任者でもある本間が、人材流出を防ぐために実践しているのが「1ON1」と呼ぶコミュニケーション。本間は週1回、必ず自分の部下と1対1で対話をしているという。ポイントは、上司ではなくて部下が言いたいことを言うこと。社員が辞めていく多くの理由は「自分のことを会社は全然わかってくれない」「人間関係」の2点で、声の大小によることなく部下の思いを平等に聞くことの大切さを強調した。

最後に本間は「これまでスポーツ界は体育会気質の中で異質なものを排除していた。凄い人が来ても、“あの人はサッカーのことを知らない。僕らのやり方でやるぞ”と言ってきた。これからはスポーツ界が外からの異物をどういう風に受け入れてイノベーションしていくかが大事。現場で多様性を受け入れる力が重要になる」と話した。

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