ヴィッセル神戸のクラブ初タイトルに貢献した、組織作りのスペシャリスト福富信也(東京電機大教員)が、1月18日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。チームを改善させた“チームビルディング”に迫った。

2019シーズン、南アフリカワールドカップの得点王ダビド・ビジャや日本代表の山口蛍、西大伍といった実力者ら総勢11人を補強して挑んだヴィッセル神戸。ところがシーズン前半は14試合で4勝8敗2分(勝率28%)、平均1.4得点と結果を出せず、一時は15位まで低迷。しかし、中断期間を挟んだシーズン後半、10勝7敗3分(勝率50%)、平均2得点とチーム状態は劇的に向上し、元日に国立競技場で行われた天皇杯決勝では、鹿島アントラーズを2-0で破り、悲願のクラブ初タイトルを手にした。

実はこの中断期間中、ヴィッセル神戸のスポーツダイレクター・三浦淳寛が頼ったのが福富だった。2015年、三浦が出席したS級ライセンス養成講習会の講師だった福富と出会い意気投合した2人。現状に危機感を持った三浦は、チームの停滞感を打破するために「チームの一体感」「結束力」「上手く行かないときの乗り越え方」「お互いのミスをカバーしあえる信頼関係の構築」などのチームの課題を伝え、「どうか力を貸してほしい」と福富に依頼し、そこから改革が始まった。

近年のヴィッセル神戸は選手補強に積極的なクラブの姿勢もあり、選手がフィットするのに時間がかかると新しい選手が次々と加入し、いつまでも“はじめまして感”が拭えず、選手間で素直な思いを伝えることが出来ないでいた。福富はそういった状態を「偽りの平和」と呼び、チームの意識にメスを入れた。

そして迎えた中断明けの初戦。ヴィッセル神戸は当時首位だったFC東京から勝利を飾った。チームの変化について三浦は「選手たちが練習の中などオフザピッチでとにかくコミュニケーションをとるようになりました。チームが苦しい時にみんなで解決していく。選手の意識はお世辞抜きで変わった」と絶賛した。

いったい福富はどのようなアプローチをしたのか? そこには4つのキーワードがあった。まずは「ナビのセット」。例えば、カーナビで現在地から目的地を設定すると、ルートは距離優先や有料優先などの選択肢の中から自由に選択することができる。「目指していることは共有しているので、ある程度の自由を許容しながらそれぞれが最短ルートを探しても、リーダーの想定をずれることがない」と話した。

続くキーワードが「心の安全」。どんな人も必ず意見を持っているのに「偽りの平和」で意見を表に出さないと一向に前に進まない。また、一人一人が思っていることこそが大事で、全員の意見があることで初めて正しい全体像となる。それでもなかなか言えない人がいるが、それは本人の問題もあるが、言える空気づくりも必要。例えばリーダーが、その人がちょっとつぶやいた言葉を拾ってあげて、「今、良いこと言ったね」と序列を崩して意見を聞き出してあげるべきと伝えた。

一方で、いろんな意見が出るとまとまらなくなる怖さがある。そこでリーダーがそれぞれの「納得感」を得られるように導いていく。例えば、リーダーが一つの方向性を示し、みんなの同意を経ていくことで、みんなの意見が一つにまとまっていくという。また、福富は「議論を深めずに納得感がないまま突き進んでいくと、あとからバラバラに空中分解することがある」と指摘し、このときに修復する労力を考えたら、最初に時間をかけて一つにまとまる方が結果的にパワーに繋がっていくと話した。

そして最後にあげたのが「決断と責任」。これはリーダーが負うべきもので、成功を収めた際には「みんなが良い決断をしてくれた」と選手の手柄を称え、失敗した際には「俺の責任だ」としっかり言えなければいけない。手柄を持って行ってしまうようなリーダーだとチームに亀裂が入ってしまうと説いた。

また、リーダーに求められている姿も変わってきていると言い、かつてはリーダーが一番知識を持っていて、経験もあって正解を知っているとされていた。しかし、インターネットで誰でも手軽に知識を得られる現代、自分の言っていることが正解だという強烈なリーダーは通用しなくなってきている。「リーダーの限界がチームの限界となってはいけない」と話した。

こうして改革を行っていったことで歯車が回り始めたヴィッセル神戸。中断明けから勝利を重ね、天皇杯も元日の決勝戦へ。この日のスタメンのうち10人がここ1年半で新加入した選手たち。だが、チームビルディングの下地ができたヴィッセル神戸にそれは関係なかった。念願のクラブ初タイトルを獲得し、試合後のビクトリーランの最中には、多くの選手やスタッフが福富のもとを訪れ、三浦も「ありがとう。助かったよ。ヴィッセルを救ってくれた本当にありがとう」と感謝の思いを伝えた。

最後に福富は、「こういう専門家がチームに一人いる時代が来てほしい。変化の連続する時代、正解が一つじゃない時代を生きている我々にとって、サッカーはその先取りですよね。正解のない、変化に対応する訓練はスポーツ選手ならみんなやってきている。スポーツ経験のあるみなさんは自分の体験をもっと大事にしてほしいです」と思いを伝えた。

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