元日本代表・藤田俊哉が提言!“監督も欧州へ”日本サッカーを進化させる欧州駐在強化部員

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藤田俊哉
藤田俊哉

元サッカー日本代表で、現在は日本サッカー協会の欧州駐在強化部員を務める藤田俊哉が、2月6日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。欧州駐在強化部員の役割や活動に迫った。

引退後、JFAのS級コーチライセンスを取得し、2014年、当時オランダ2部だったVVVフェンロでコーチとして指導者のキャリアをスタートさせ、クラブのリーグ優勝と1部昇格に貢献。2017年には、当時イングランド2部だったリーズ・ユナイテッドで強化スタッフとしてフロント入り。そして、2018年にJFAに新設されたポスト「欧州駐在強化部員」に就任した。

今や50人を超える選手たちが海外クラブに活躍の場を移すようになった。しかし、日本にいながらヨーロッパの選手たちのコンディションや状況を把握するのには限界があり、日本人選手の情報をリアルタイムで集約し、日本と繋ぐ専門職として欧州駐在強化部員が生まれた。藤田は自身の役割について「代表監督が、一番いい選手を選べる状況を作ることが我々の仕事」と言い、国際Aマッチデー以外で日本代表として招集レターを送る際にも「クラブを訪れ、顔を合わせて交渉することで、招集に応じてもらえる可能性を上げられる」と説明。メンバー全員がヨーロッパ組となった去年10月、11月のヨーロッパ遠征の際には、オランダのフェンロに自宅がある藤田と2人の駐在スタッフは、視察のため8か国22都市を訪問。ときには車で700㎞を移動してクラブをまわるなど地道な努力を重ねた。

藤田は視察の際にどのような点に注目するのか? 実はプレーではなく、体と心のコンディションや選手の環境、そして、クラブスタッフや関係者にクラブ内でどのような存在なのかを聞くのだとか。そして、メンタルを読み解くために大事にしているのが選手との食事。「選手もやっぱり日本語で喋りたい。僕が行ったからといって何か大きく変えられるわけではないですが、気にかけている、応援しているということが伝わるだけでも全然違うと思います。海外に行くと孤独さが違う」と活動内容を紹介した。

そして、コーチ時代から数えてヨーロッパで過ごすこと7年。各国を回る中で日本サッカーのレベルアップにつながる重要な点に気付いたという。例えば、ドイツでは5部でも立派な施設を持ち、3部になれば立派なプロとして認識されている。実は、そういったところにも日本人は数多く在籍しており、そこでプロ選手や指導者を目指している。しかし、そういった人たちは個人で頑張っている場合が多く、情報がない中でもがいている。「もし彼らがコミュニケーションをとれるようなネットワークがあれば、いろんな問題点やポジティブな面の情報共有ができるのではないか」と話した。さらに藤田は自身の活動を振り返り「冷静に考えて7年の歳月が必要だったか考えると、わからないからとりあえずもがく時間があった。手探りで道を探すことも必要だったけど、次の人はストレートに目的地まで行って、本当の目的のために勝負できるようにしてあげたい」と駐在員のパイオニアとしての役割について語った。

ヨーロッパの生活の中では厳しい現実も感じたという。日本ではヨーロッパのサッカーを観られる環境が整い、感覚的にはより近い存在になった。しかし、ヨーロッパでJリーグが知られているかと言うとまったく知られていない。話題になった時と言えば、鹿島アントラーズがレアル・マドリードとクラブワールドカップで対戦した際などで、「その時はサッカー仲間が鹿島のことを質問してきた」と言って、世界に名を広めるにはクラブレベルで世界相手に爪痕を残すことの重要性を説いた。

そして、大舞台での活躍が必要なのは、今や選手だけでなく監督にも言える事。「選手は50人近くヨーロッパでプレーする中で、日本の指導者も海外に出て活躍する時代に入ってきたと思う。日本の指導者のレベルは決して低くないし、もっと評価されて良い。Jリーグで結果を残した監督は、次のステップがアジアやヨーロッパであっても良いのでは?」と提言。実際、岡田武史、西野朗、本田圭佑など、アジアで監督として手腕を振るう例は出てきたが、ヨーロッパのトップリーグで監督を務めた日本人はライセンスの問題もあり未だ1人もいない。「ワールドカップで頂点に立つという大きな目標に向かっていくには、国際経験のある監督が必要になってくる」と語り、やはりクラブワールドカップなどで自分たちの力を証明することが必要になってくると話した。

また、日本とヨーロッパのカレンダーの違いに言及。「一筋縄で変わるという話題ではない」としながらも「海外に移籍するにしても、Jリーグクラブが選手を補強するにしてもシーズン途中になる」と指摘。さらに「日本の夏は、心配になるくらい暑い。この中でどれだけサッカーのクオリティと安全性を担保できるのか」と問題点をあげた。

最後に藤田は「Jリーグは27年やって相当レベルアップして、日本代表のレベルも上がった。しかし、ヨーロッパや世界もレベルが上がっていて、なかなか距離が縮まっていない。もしかしたら離れてしまったかもしれない。そこは謙虚に受け止めて、急ぐところは急がないと。現場にいる者として気を引き締めて準備をしていかなくてはならない」と決意を述べていた。

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