Jリーグ最強アイデアマンが盛り上げるTOKYO2020!3大企画誕生秘話

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天野春果
天野春果

川崎フロンターレの元企画部長で、現在は東京オリンピック・パラリンピック組織委員会でエンゲージメント企画担当部長として手腕をふるっている天野春果が、6月6日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。天野が手掛ける3大企画の誕生秘話に迫った。

フロンターレ時代には、等々力競技場にレーシングカーを走らせ、相撲部屋とコラボレーションするなど、数々の斬新な企画でサポーターだけでなく地域を楽しませてきた天野。その甲斐もあって、フロンターレは10年連続で地域貢献クラブナンバーワンを獲得するなど、“愛されるクラブ”として成長してきた。

そんなJリーグ最強のアイデアマン・天野が、20年間在籍したフロンターレを離れ東京2020組織委員会へ。アメリカで過ごした大学時代、1996年のアトランタオリンピック・パラリンピックにボランティアとして参加。街全体がフワフワと浮足立つ雰囲気に心を掴まれ、「もし、東京で同じようなことが行われるなら絶対にやろう」と心に決めており、これを機に自らフロンターレを飛び出したという。

天野は、東京2020へ向けて3つの応援企画を仕掛けた。1つ目は「東京2020算数ドリル」。オリンピックは33競技、パラリンピックは22競技あるが、知られていない競技も数多くある。ドリルには、鉄棒の技・大車輪が描く放物線の面積を導く問題など、競技をモチーフにした出題が並び、そこには歴代メダリストやメダリスト候補など豪華アスリートが挿絵となって登場。競技の周知だけでなく、算数嫌いな子供たちの興味を引くことにも一役買っている。

2つ目は、機動戦士ガンダムとシャア専用ザクが宇宙からエールを送る企画「G-SATELLITE宇宙へ」。JAXAと東京大学という日本が誇る知が集結し、今年3月、ガンダムとシャアザクを宇宙へと打ち上げた。来年の大会直前から、アムロ・レイとシャア・アズナブルの声優、古谷徹池田秀一も参加し、アニメの名言を活用したメッセージを配信していく。

そして3つ目は、都内500以上の銭湯が、オリジナルの暖簾で彩られ、店主はオリジナルのはっぴを着て番台で迎えてくれる企画「TOKYO SENTO FESTIVAL」。都内4か所の銭湯ではペンキ絵のデザインも一新。渋谷区にある八幡湯では、マンガ「テルマエ・ロマエ」の作者ヤマザキマリが古代オリンピックをイメージしてデザインを作成する。

これらの斬新な企画を実現してきた天野だが、大会組織委員会に入った際は、様々な規制や制約があり「そんなことできると思っているの?」という空気があったという。そこで天野はフロンターレ時代の成功体験を活かし、国際大会で通用する形に応用発展させようと考えた。算数ドリルはフロンターレ時代に取り組んだアイデアを進化させたもの。どうしてもオリンピックに注力しがちな中、算数ドリルは上巻下巻あり、オリンピックとパラリンピックを同じ割合で使えることも魅力だったという。

「G-SATELLITE宇宙へ」の実現にも様々な壁が立ちはだかった。当初、ガンダムではなく、宇宙空間で宇宙飛行士が船外活動を出来ないかと考えていた。しかし、JAXAから「トランプ大統領と直接ネットワークがありますか?」と聞かれたのだとか。JAXAはNASAなどと同じグループにあり、最大の権限を持つのが米国大統領で、その許可が必要になる案件だった。宇宙飛行士は無理でも、船外で何をやれば楽しいかを考えた天野は、開会式で良く見る平和の象徴・ハトを飛ばす姿を思い浮かべ、それを宇宙でやれないかと思案。しかし、予算は組織員会からは出ず、ただ、白いハトが飛ぶだけではスポンサーは付かない……。そんなとき「白いハトに代わる白い物体ってないかな?」という話をした際に「白い物体って言ったらガンダムじゃね?」という返答が返ってきたのだという。天野はその瞬間、ガンダムが宇宙を飛んでいる姿が思い浮かび、それまで考えていた白いハトの資料を放棄。「ガンダムとシャア専用ザク、作中ではライバルとして争っている2機が大会時は手を取り合う。ハトの精神がシャアザクに宿っている」と語り、実現へ向けて動き出したという。

紆余曲折がありながら打ち上げられたガンダムとシャアザクは、目とバックパックが5色のオリンピックカラーに光るなど細部にこだわりながら、マイナス30℃~100℃に耐えられる宇宙仕様。7台のカメラ、通信設備など様々な機能を搭載した約30cmのボックスに収容され、小型の人工衛星となって宇宙をさまよう。通常、人工衛星を打ち上げる場合、数百億円かかるが、小型化することでコストを100分の1に圧縮した。

さらに天野は「TOKYO SENTO FESTIVAL」の実現に向けても思いもよらない行動をとっていた。なんと東京都の文化事業コンペに個人として参戦し、応募総数2500の激戦を見事勝ち抜いていた。天野は「あえてアナログなものを選ぶ。オリンピック・パラリンピックで最先端テクノロジーを発表することも大事ですが、僕は逆にアナログで温かみのあるものを面白く発信力がある形で企画にできると思っている」と語り、「銭湯は現在、各家庭にお風呂があり、銭湯は体を洗う場というよりも、人との交流や心身共にリラックスできる場。新たな銭湯の魅力を日本人に再発見してもらいたい」と話した。

不可能に思われるような企画を次々に叶えてきた天野。「東京オリンピックってどういう大会だったっけ? と考えた時に競技以外のもので浮かぶものがいくつか欲しいじゃないですか。賛否あってなんぼだと思っている。みんながみんな良いというものはエッジが削られていて、本当に影響力のあるものかと考えると、僕はそうじゃないと思う部分がある」と語り、「誰かが予定不調和なことをやらないと」と、違いを作ることの重要性を説いていた。

最後に天野に大会後のビジョンを聞くと「地域プロスポーツの世界で勝負したい」と明かし、「JリーグやBリーグ、プロ野球など、地域プロスポーツが街や人を元気にすることに直結している。そこで必要なことは組織委員会で見えた」とコメント。さらに新型コロナ禍の影響で開催への不安も広がっているが、「コロナをどうプラスに転じていくかしか考えていないし、できると思っている。全世界を勇気づけられる企画を考えています」と断言。「僕はスーパーポジティブシンキングなので、前を向いてみんなでやっていけるように少しでも面白い企画をやりたい。頑張ります!」と力強く宣言した。

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