佐藤信介監督「“ニュー池松壮亮”の奥行きが…」8年振りで印象に変化『デスノートLNW』

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佐藤信介、裏の根本テーマは「死神のあり方」劇中のこだわりを告白】

――本作において監督が最もこだわった点は?

死神のあり方にはこだわりました。いかにも「死神です!」「異世界です!」みたいな感じでやるよりも、一人のキャラクターとしてそこにいて、息遣いというか、彼らの醸す空気みたいなのが感じられるようなキャラクターになってほしいなと。人間たちもそういう思いで撮っているんですけど、死神も全くそのスタンスを変えずに撮りたいなっていうのがありました。だから、「どうだ、死神だぞ」みたいな感じで撮るのではなくて、見えている人にとっては非常に日常として見えるような感じ。そうなってくると、死神の空気感とか質感というのが、そこにあるとしか思えないような感じでやりたいなと思い始めて、それが裏の根本テーマです。

――そんなこだわり抜いた死神が本作では3体登場します。まずはお馴染みのリューク、新キャラクターのアーマについて教えてください。

リュークに関しては前作のイメージが強くあるので、それは崩さずにいきたいなと。この映画を見れば見るほどリュークの見たことのない質感というか、リューク像が見えてこないかな、みたいな感じでこだわりました。アーマに関しては、感情移入できる色っぽさみたいなものですかね。現実にいてもおかしくないなという感じで、「アーマ役は誰なんだ?」みたいに思わせるのが究極目標だったので、表情作りから何からすごく手の込んだことをやっています。今回のCGチーム・デジタルフロンティアさんの仕事もすごく時間をかけて丁寧に、最後の最後まで粘り強く、目の薄いサンドペーパーで削ってなじませていく作業を続けていただきました。

――もう1体の死神・ベポ役は、なんと松坂桃李さん! 起用理由を教えていただけますか?

ベポはいろいろ悩んで、いろいろ考えました。声の深さもそうだし、見終わった時の驚き感みたいなものも欲しいなと思いました。松坂さんには、僕の作品にいろいろ出てもらったものがあって、マルチプレイヤーというかいろんなキャラクターがやれる人というイメージがありました。なので、死神も意外に行けるんじゃないかっていうのがあったんですね。それでも、ちょっとこんな感じ、あんな感じって試行錯誤しながら作ったところもあるし、声も聞いたことないような絶妙な感じの声質にしました。完成して最初に聞いた時に、僕も「これだ」って感じがしました。

――死神以外に、ハイクオリティな小道具も多数登場します。竜崎の象徴的なアイテムでもある“ひょっとこのお面”については、池松さんから登場シーンを増やしてほしいと提案されたそうですが?

竜崎の初登場が、バイクでやって来て銃を撃つというようなシーンだったんですけど、フルフェイスヘルメットを被っているのが当初の設定でした。それは、前作でも顔を見せないためにフルフェイスのヘルメット被っていたので、その流れを汲んでもいいかなと。ただ、竜崎なので「街中でいきなりひょっとこを被っていてもいいよね」と、スタッフからのアイデアが出てきたんです。最初のきっかけはちょっとしたことだったんですけど、そこから始まってだんだんと膨らんでいきました。「竜崎だったらどんなマスクなんだろう?」みたいなところから、だんだん「色って白でいいのかな?」とか浮かんできて、お面を作られる方に「木彫り」だったり「単色」だったりのデザインを作ってもらいました。その中に突拍子もない色もあったりして「面白いね」とか言いつつ、だんだん絞っていって、どんどん形になっていったのが劇中のひょっとこです。ものすごい工程を踏んでいるんですが、そもそもはそんなに使う予定でもなかったですよね。でも、実物を見て池松さんも刺激されて、「監督、ここでひょっとこしてたらどうですかね?」みたいな提案が結構あって、だいたいが「いいね」って即採用でした(笑)。

――みどころ満載の作品に仕上がっていますが、特に思い入れの強いシーンを挙げるなら?

色々思い入れのあるシーンはありますが、長期間携わったという意味で、アーマの登場シーンになるかな。何気ないシーンなんですけど、何となく情感というか、ちょっとした寂しさみたいなものとかを表現したいなと。もちろんすごくいろいろな手が込んだ撮影をしなければいけないので、早い段階から仮に撮ってみたりしながら、かなり初期段階から準備し始めて、制作の最後の最後まで関わったシーンの一つです。なので、見ていると何気なく普通にアーマというものがいてということですけど、他のシーンと比べても非常に濃度の濃いシーン。苦労したというか長期間思い入れを込めていたので、そこは何度見てもらってもいいかなと思います。

――ありがとうございます。それでは、最後に作品の見どころや視聴者へのメッセージをお願いします!

前作の『デスノート』を見ていない人も、本作を見て「10年前に何があったんだろう」っていうのでもいいと思いますし、10年前見た人は「あの後どうなったんだろう」っていう興味でも楽しめるかと。10年後に何があったのかは原作にもなくて、前回の作品を最後まで見てもそのあとの展開っていうのは予想できないし、本作を見るまで全く予想も出来ないストーリーだと思うので、そこを楽しみに見に来ていただきたい。展開は映画を見終わるまで謎で、マンガやネットなどを見てもどこにも書いてない。僕もそういうオリジナル作品を世の中に出せてよかったなと思うし、自分も一観客だったらすごく楽しみにして見るだろうと思います。レンタルビデオで前作を見たり、スピンオフ作品をHuluでやったりするので、いろいろ準備しつつ楽しみにしながら劇場に行かれるといいかなと思います。

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