中田英寿、伝統産業とサッカーから見える「情報」の重要性

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中田英寿、勝村政信
中田英寿、勝村政信 © テレビ東京

元日本代表の中田英寿が、4月24日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。現在、社長を務めるJAPAN CRAFT SAKE COMPANYで手腕を振るう様子を取材し、その思いに迫った。

2週連続出演となる中田。前回放送では、番組MCの勝村政信をはじめ、日本サッカー協会の田嶋幸三会長、漫画『キャプテン翼』の著者・高橋陽一ら、中田にゆかりある人物たちが「今だから聞きたい事」をぶつけていった。

今回は、中田の現在の活動を中心に紹介。社長を務めるJAPAN CRAFT SAKE COMPANYでは、日本酒を中心に日本文化を世界に広めるイベントや商品開発に力を入れている。中田は「伝統産業が好き。素晴らしくもあり、時には恐ろしくもある自然と向き合い、強い覚悟を持って代々受け継いできた姿を目の当たりにして、人間として惚れていきました」と述べ、「彼らと問題解決をしながら、この素晴らしいモノをいかにして世界に伝えていくかを考えていきたい」と取り組みを紹介。そのキーワードが「情報」だという。

中田が小学生の頃、サッカー放送はテレビ東京の『三菱・ダイヤモンドサッカー』くらいで、今とは違いヨーロッパサッカーの情報はなく、「将来、海外でやろう」という発想もなかったという。中田は「情報はそれくらい重要。情報があるから、今の子たちはワールドカップに行くことや、ヨーロッパでプレーすることが当たり前になっている」と語り、「伝統産業は長く続いているが故に、知られていないことがたくさんある。そこをどうにか変えていきたい」と話した。

そこで紹介されたのがアプリ「Sakenomy」。中田は、日本酒業界で足りないのは「情報をきちんと集めること」だと言い、この問題を解決するために、全国に数万ある日本酒の販売元や味、評価を見られるアプリを開発。また、国内だけでなく、海外にも販路を拡大していきたいが、全国の各地方にいる酒蔵の方々が全世界を飛び回るのは難しい。そこでパソコン1つで在庫や品質管理の情報を把握できるようにし、生産者と消費者の間を情報で繋いだ。

サッカー界を離れ、新たなステージで活躍する中田だが、環境が変わることへの不安はないのだろうか? 中田は「僕の場合は21歳でイタリアに行きましたが、それを怖いと思って行ったと思いますか? それと同じことで、分野が変わろうと違う環境に身を置くことはある。自分の常識が通用しなくなることもあるし、通じる部分もある」と、ぶれない姿勢を示した。

そんな中、「どんな形であれ、サッカー界に戻ってくる気はあるのか?」と尋ねたのが、06年のドイツワールドカップで日本代表を監督として率いたジーコ。中田は「うーん……。ないとは言わない」と言葉を選びつつ、監督については「自分が監督の話を聞いていなかったから」、運営についても「現場の方が楽しい」と共に興味は薄い様子。プレーに関わる分野よりも、サッカーのコネクションなどを使った社会貢献には興味があると語った。一方で、「テクノロジーや環境が変わってくるとやりたいことも方法も変わってくるが、今は日本酒を含めた伝統産業が非常に楽しくて、これをいきなりやめてどこかに行こうというのは今の自分では考えられない」と話した。

続いて、勝村から「現在の日本サッカーをどう見ているか?」を聞かれると、「根性論や気持ちは必要ですが、これだけ解析が進んでいる昨今、より理論的に考えなくてはいけない」と指摘。また、「技術は今の子たちの方があるけど、サッカーは技術の見せ合いじゃないので、使い方を知らないと良い結果は出せない。そういうことをずっと考えてやってきた」と根本的なサッカーとの向き合い方を指南した。

番組がスタートした2011年4月、初回ゲストの中田に対して「今後、日本サッカー界には何が必要?」と質問した。その時、中田は「自分たちのサッカーを作り上げていく段階に入った。自分たちのオリジナリティをどう作っていくかが、ここから数年間の命題になる」と回答。あれから10年、日本を取り巻く環境は大きく変わったが、改めて同じ質問をぶつけた。

中田は「技術以前に、サッカー自体が上手くなるしかない。現役の時も思っていましたが、技術もスピードも体力もあるが、サッカーが上手いとは思わなかった」と振り返り、「どこでも全力で行くだけでなく、駆け引きで相手に来させるとか、環境やリズムを自ら作ることを教えていかなければならない。思考のレベルを高くしていくことが大事」と話した。

そして最後に、10年ぶりに出演した番組へメッセージ。中田が「もともとサッカーの試合を見せてどうこうする番組ではないから、逆に今の時代にはハマっていますよね」と称賛すると、勝村は「ただのラッキーですから」と謙遜。すると中田は「でもね、ラッキーは引き込まなきゃだめですよ。自分も色々と文化のことをやってきて、いわゆる日陰というか、今まで知られていない人をいっぱい見るようになりました。普段は見えない人の仕事を知ることで心が動かされて、サッカーファンが増えるような気がします。長く続くと良いなと思います」とエールを贈っていた。

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