左から勝村政信、中村憲剛、中澤佑二

俳優の勝村政信がMCを務めるテレビ東京のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(毎週土曜24:20~)が、1月30日に放送開始500回を記念して1時間スペシャルを放送。番組ブレイン(ゲスト)として最多7回目の出演となる中村憲剛、番組アナリストの中澤佑二と共に、4つの視点「得点力」「ゴールキーパー」「海外移籍」「Jリーグ人気」から「日本サッカーの現在地」を語り合った。

まずは「得点力」について。かつて高原直泰は番組で「アルゼンチンのストライカーはペナルティエリアの幅から絶対に動かない。常にゴールを意識ながらプレーできるのは一つの能力だと思う」と発言。中村も「フェルナンド・トーレス選手が日本サッカーの話をした時に“日本では守備をみんなでやらなくてはいけない”と言っていたのですが、スペインではその概念がなかったと思う。(日本に絶対的なフォワードが生まれない大きな要因は)これかもしれないと思った」と語った。しかし、その一方で「日本の選手にそれは無理だと思う。日本のサッカー自体が11人全員でやるものになっているから」と指摘。さらにストライカーは「作るものではなく才能や感覚」だと持論を展開し、川崎フロンターレで共に戦った大久保嘉人小林悠を例にあげ、「彼らは点を取って負けると、コメントでは悔しいと言いますが、”でも点は取った”とすぐに切り替えている」と思考回路を分析。「今の日本の土壌だと、そういう子たちを育成年代でピックアップして、“守備はしなくて良いから点を取って”というプレッシャーをかけて、専門的に育てていくしかないと思う」と、点取り屋を生み出すには個性を削ることなく育成することの重要性を説いた。

一方で、絶対的なストライカーを育てる以外に得点力を上げる手立てはないのか。その可能性を示したのが昨シーズンJリーグを制覇した川崎フロンターレ。総得点88(1試合平均2.6得点)は2位ガンバ大阪の46点(同1.3得点)を大きく上回り、史上最多得点を記録。中村は「5人の交代枠や4-2-3-1から4-3-3へのシステム変更が功を奏した」と振り返った。また、日本代表も川崎のようなプレーを目指すべきか聞かれると「簡単ではない」と答え、「勝つという目的は一緒だけれど、方法論はそれぞれ違うので、それを揃えるだけで大変だと思う」とクラブと代表の違いを指摘した。スペイン代表のバルセロナやドイツ代表のバイエルン・ミュンヘンといったトップクラブのメンバーを中心に代表を組む方法については、「日本代表で川崎フロンターレのようなサッカーをするなら、うちの選手をたくさん入れた方が早いとは思うが、相手は世界なのでそれで勝てるかはわからない。でも、個人的には観てみたい」と話した。

放送500回記念の祝花で彩られたスタジオ
放送500回記念の祝花で彩られたスタジオ

続いてのテーマは、ストライカーよりも深刻と言われている「ゴールキーパー」について。サンフレッチェ広島の大迫敬介、アルビレックス新潟の小島亨介など、日本代表にも選ばれる若手は台頭しているが、一方で、川崎フロンターレのチョン・ソンリョンをはじめ、Jリーグは外国人の正GKが席巻。昨シーズンはJ1の18クラブ中7クラブのGKが外国籍選手。さらに2020年10月に日本代表に召集された海外組GKに目を向けると、その時点では全員が公式戦への出場はゼロだった。

中村は外国人GKと日本人GKの間に、背や体の厚み、手の大きさなどサイズの違いがあることを指摘。「近年は、日本の育成年代も大きい子や、大きくなりそうな子をプロジェクトとして育てているそうなので、徐々に若い子も出てきていますが、もう少し時間がかかるのでは」と話した。また、近年のGKはビルドアップへの参加やフィードの技術など、役割が多岐にわたっているが、その中でも絶対に欠かせないのがシュートストップと断言。「僕の中では、それが絶対。ほかのことは何もできなくても、止めてさえくれれば失点はしない」と語り、特に守備において重要なコミュニケーションが取れなくても、シュートストップ能力の高いことは大きなメリットだと話した。そのほか、キーパーは点を取られて怒られるイメージがあって子供たちがやりたがらないことや、ミスを恐れずにチャレンジすることよりも、ミスをしないことに重きを置きがちな日本の風土といった問題点をあげていた。

そして「海外移籍」のテーマでも議論は白熱。この10年で海外移籍が当たり前になりビッグクラブへの移籍も増加した。一方で、出場機会を得られない選手も数多くいる。そんな現状に小野伸二は「なんでこんなに良い選手なのに試合に出られていないのか不思議。試合に出ないで何しに行っているのだろうと思う」、セルジオ越後も「どのリーグに行ってもある程度の結果を出さなかったら日本代表に呼んではいけないと思う。日本は若い選手を呼んだら皆が喜ぶのも文化的におかしい」など、これまで多くのブレインが苦言を呈してきた。

中村は川崎に来た外国人選手の姿を見て「自分が助っ人であるという認識が全然違う。そういう選手がベンチに座り続けるのは本人にもクラブにも損。だったら試合に出られる選手を取った方が有益」と話した。また、試合に出られないことでコンディションの低下は避けられないと指摘。「海外組は日本で試合をやるときに帰国しなければならないから、時差もあるしコンディションは良くないことが多い。しかも、活躍しなければならないというプレッシャーもあった。それが成長の一因だったのかもしれないけれど、クラブに戻って試合に出られずコンディションを崩すという選手もいたので、必ずしも呼ぶべきなのか」と疑問を投げかけた。

最後のテーマが「Jリーグ人気」。2019シーズン、J1の平均入場者数が史上初めて2万人を突破、J1~J3の総入場者数も史上最多となる1141万人を記録するなど、Jリーグの定着を物語る数値となった。番組がスタートした10年前と比べてJリーグのレベルは上がったか尋ねると、中村は「レベルは上がっていると思います。競技レベルもそうですし。ここ数年特に、アウェーに行くとアウェー感を感じるようになった。それはスタジアムだけでなく、皆がそのクラブを応援する空気感が街に生まれた。そういった総合的なところを含めてアウェー感が出ているのだと思う。努力し続けた結果だと思います」と、クラブと地域の関係を継続して強化してきたことが結実してきていることを肌で感じたという。

また、Jリーグ黎明期以来となるワールドクラスの選手たちのJリーグ移籍も大きく寄与。スペインのアンドレス・イニエスタなど世界的なスターが来日すると、そのプレーを一目見ようとチケットの売り切れが続出した。中村は「僕自身も相手として刺激を受けましたし、子供たちがスタジアムで彼らを見られるのは財産だと思う。これからも来てほしいし、だからって負けたくないし、そんな簡単じゃないと思わせたい。切磋琢磨していければ」と語った。

そして近年、大小問わずフットボール専用スタジアムが次々に誕生している。番組SNSで好きなスタジアムのアンケートを取ったところ、パナソニックスタジアム吹田をはじめ、専用スタジアムが上位を独占。その見やすさや臨場感が評価された。中村は「どんな年齢層の方でも性別問わずにみんなが安心して安全に観戦できるスタジアムって日本だけだと思う。これは本当に誇らしいこと。より熱量を感じるには専用スタジアムはポイントで、サッカーがより文化になる」と話した。

中村憲剛
中村憲剛

そして最後に、18年間にわたり日本サッカー界のトップを走ってきた中村に、世界のトップに立つために何ができるかを質問。「誰かがやるのではなくて、サッカーに関係している皆でどうやったら良くなっていくかを熱く話していくことが大事。そういう意味では『FOOT×BRAIN』が500回を迎えていることは凄く大きな意味がある。この番組は、サッカーがどうやったら進化できるかを多角的に考え、真摯に取り組んでくれている。そして、サッカーを愛する人たち皆が見ている。僕が言うのもおこがましいですが、それだけで日本サッカーに役立っていると思うんです。それぞれがそれぞれの想いを持って日本サッカーを成長させていこうという、その想いが続いてほしい。番組が1000回を迎えるころには、日本が世界のトップにいるかもしれない」と提言した。

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