ポジションでも違う?サッカー選手が好きな「読書」の傾向と影響

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ポジションでも違う?サッカー選手が好きな「読書」の傾向と影響

元陸上選手で読書家としても知られる為末大が、9月26日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。読書がアスリートに与える影響を分析した。

少年時代から3000冊以上の本を読み、走る哲学者とも呼ばれた為末。学生時代は読書部に在籍し、今でも年間100冊は読むという根っからの読書好き。近年はV・ファーレン長崎のフィジカルアドバイザー(2017~2019年)やJリーグ理事としてサッカー界にも活躍の場を広げている。

サッカーについてはまだまだ勉強中だという為末だが、以前番組でも特集した岡田武史の著書「岡田メソッド」は既に読んだとのことで、「こんなマニアックな本はないというくらい凄い。サッカーがわかったような気になりました」と絶賛した。

サッカー界にも中村憲剛、長谷部誠、本田圭佑など読書を趣味としている選手は多い。そこで番組では、現役Jリーガーがどのような本を読んでいるのか調査。名古屋グランパスの中谷進之介は「チーズはどこへ消えた?」(スペンサー・ジョンソン)、ヴィッセル神戸の西大伍は「自分の中に毒を持て」(岡本太郎)と「生命とリズム」(三木成夫)、鹿島アントラーズの町田浩樹は「アルケミスト 夢を旅した少年」(パウロ・コエーリョ)、と「〈パワーポーズ〉が最高の自分を創る」(エイミー・カディ)、浦和レッズの武藤雄樹は「ロベルト・バッジョ自伝」(ロベルト・バッジョ)、FC東京の林彰洋は「ハイパフォーマーの睡眠技術 Sleep Skill」(小林孝徳)、名古屋グランパスの長谷川アーリアジャスールは絵本「えんとつ町のプペル」(にしのあきひろ)、横浜FCの六反勇治は「心。」(稲盛和夫)、そして、湘南ベルマーレの梅崎司は「弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉」(鈴木颯人)をあげた。

ポジション別に選手の読んでいる本の傾向を調べたところ、FWは自伝、MFは絵本や名言など実用的な本、DF・GKはビジネス・自己啓発などメンタルに関する本が多かった。ちなみに読書好きの選手をJリーグに紹介して貰ったところ、DF・GKは5名、MFは3名だったのに対して、FWはわずか1名。番組アナリストの福田正博は「僕もFWですけどね、この傾向はあるかもしれない。GKやDFは基本的にリアクションなので相手に合わせたり我慢したりするからメンタルや自己啓発を求めるのかなと思う。FWはどちらかというと感性でやるところがあるから、あまり本をじっくり読まないのかも。MFはバランスが良い感じなのでは?」と自身の経験則を披露。この考えに為末も賛同し、「陸上だと短距離の選手があまり読まないですね。きっと色々考えると邪魔になるのでしょう。もっと直感的に力を出すのだと思う」と話した。

そして福田は「直感型の人は指導者には向いてない?」と質問。すると為末は「感覚を伝える言葉と説明するときの言葉は違う気がしていて、僕みたいに本を読み過ぎている人間は、いろんなことが説明的すぎる。言っていることはわかるけれど、どうしたら良いかはわからない場合がある。一方で直感的なコーチが“この瞬間にグイっといくんだよ”と言うとピンとくることがある」と一概には言えないと伝えた。

続いて、読書がサッカーにもたらす影響の話題に。為末は「言葉を学ぶことでコミュニケーションの質を上げられる」と言い、例えば理不尽と不条理と言う似た言葉がある。前者は個人に対して、後者は社会に対して理屈に合わないことを指す言葉だ。本を読むことで、このようにニュアンスがおぼろげな単語の輪郭が浮かび上がり、人とのコミュニケーションにおいても曖昧さが無くなり伝わりやすくなるという。「サッカーであれば、言葉の精度が良くなることで、瞬間的なコミュニケーションの制度が上がるのではないかと思います」と話した。

すると福田が、サッカーにおいて言語を統一することの重要性を指摘。「チームで統一した言語でコーチングすることを“コーチングの質を高める”と言うのですが、言っている側と聞いている側が同じイメージを持てる」と語り、「岡田メソッド」でも同様のアプローチをしており、言語を作り出すのが一番大変だったのではないかと話した。

そして、読書をすることで自分自身の情報のキャパシティが上がり、様々な事態に陥ってもパニックになりづらくなる効果があるのだとか。為末は「感情を爆発させるときに言葉はいらない感じですけど、何かがあって整理する際には言葉の力が効いてくると思います。スポーツの世界で体罰をしてしまう先生は、言葉が足りなくて怒りが高ぶるような感じなので、何で自分がイライラしているかを言葉で整理できると、怒ってはいるのだけど訳が分からなくなるようなことにはならない」と語り、読書をすることで、多くの言葉を知り、頭の整理がしやすくなることでスポーツや私生活でも役に立つと話していた。

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