「ゴールゲッター」「国際経験」「文化」日本サッカーの弱点『FOOT×BRAIN』解説詳細

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勝村政信皆藤愛子がMCを務めるテレビ東京のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(毎週土曜24:50~)が、11日に記念すべき300回目の放送を迎えた。スタジオでは、番組の歴史を振り返り、元日本代表で番組アナリストの3人、都並敏史福田正博秋田豊が「日本のワールドカップ優勝を本気で考える」をテーマに“3つの提言”を行った。

「日本サッカーが強くなるためにできることのすべて」をテーマに、様々な視点から議論を行ってきた本番組。これまでを振り返るVTRでは、中田英寿の「自分たちのオリジナリティをどうやって出すのか。自分たちで作っていく段階」、三浦知良の「試合じゃなくて練習が一番大変」、本田圭佑の「ちょっとやそっとスポーツやサッカーの教育を変えようというレベルではダメ。根元を変えないと」、そして、現日本代表監督・ハリルホジッチの「自信や勇気、強い気持ちを持って戦いに行くこと」という近年の日本サッカー界のキーパーソンたちのコメントを紹介。そのほか、五郎丸歩(ラグビー)の「フィジカルから逃げてしまうとラグビーもサッカーも戦えない。日本人は小さいからという考えを捨てないとダメ」という提言など、各界の言葉を改めて振り返った。

番組後半では、アナリストたちが「日本のワールドカップ優勝を本気で考える」をテーマにトークを展開。Jリーグの発足から四半世紀。ワールドカップのベスト16進出、昨年のクラブワールドカップ(CWC)の決勝では、鹿島アントラーズが欧州王者のレアル・マドリードを延長まで追い詰め2位に躍進するなど、目覚ましい成果を上げてきた。

そんな中、都並は、昨年のCWCでの鹿島の活躍を見て「敵わなくない」と意識が変わったと明かしつつ、日本に足りないのは「ゴールキーパーとの駆け引き上手なゴールゲッターの出現」と提言。チームとしての守備や中盤の構成からチャンスを作り出す能力はついてきたと一定の成長は認めながらも、ゴール奪取に関してはまだまだだとコメント。「自分でキーパーを揺さぶるテクニックを、本当のゴールゲッターは持ってなくてはいけない」と語り、「スアレスは相手の身体の重心の稼働まで意識しながら身体の向きやステップやリズムを変えて、キーパーを“無”にして入れていく」と世界最高クラスとの違いについて語った。

これに対して、かつて日本代表や浦和レッズでストライカーとして活躍した福田は「日本の評価制度に問題がある」と持論を展開。“フォワードのディフェンス貢献が評価され過ぎている”と昨今の風潮に異を唱える。そして、ドイツでプレーした高原直泰との会話を振り返り「日本は自分でプレッシャーを掛けなくてはいけない。向こうは、点を取らないと試合に出られない。そこに尽きると言っていた」と明かし、改めて点を取るためのプレーを評価する環境を作ることが、ゴールゲッター誕生には不可欠ではないかと力説。都並も「本質は勝つことだから。勝つために守備をサボって攻撃に専念する。それも賢い選手の特徴」と同意していた。

続いて福田が掲げたテーマは「国際経験」。昨年のリオ五輪の初戦、ナイジェリアとの試合を例に挙げ「“あんなに足が出てくると思わなかった”って、その試合の時に言われたってどうにもならない」と語り、それを“日常”にするために、Jリーグに質の高い外国籍選手を呼び、一方で海外進出することが、世界で感じたギャップを埋めていく活路だと提案した。また、テニスで世界のトップクラスに位置する錦織でさえも、全豪で負けた際にマイケル・チャンコーチに「もっと意地悪になれ」と言われたというエピソードを紹介し「あのレベルでも言われる。駆け引きが日本にはない。それが日本の文化だし教育。スポーツの中でも」と世界との意識の違いを問題視。

それに連なるように秋田も「サッカー文化の浸透」を提言。「サッカーの魅力を伝えることが足りていない」と語ると、皆藤が「もっと小さい時から刷り込んだほうが良いですよね。サッカーがせっかく地域にあるのだから、遠足で観に行くとか」と実情に即した提案をする。しかし続けて「癒着じゃないけど、教育機関とかと……。ジャニーズにキャーキャー言うのも良いですけど、そのお年頃の子が……」と発言し「番組を潰す気か!?」と勝村を慌てさせた。

そして、かつてJリーグに集まった世界レベルの外国籍選手たちの話題に。現役時代、エムボマ、カレカ、スキラッチといった名ストライカーと対峙していた秋田は「頭も身体もすべてを使ってあらゆることをやらないと抑えられなかった。でも、そういう経験が世界に出た時に重要になってくるし、活きてくるので、世界のトップ・オブ・ザ・トップが来て欲しい」とコメント。福田は、現役の後半に浦和でプレーしたエメルソンに衝撃を受けた事を明かし、「彼と一緒にやってFWとしてはもうダメだなと思った。モノが違い過ぎた。彼の場合は技術だけじゃなく、若くてスピードもあった」と語り、日本代表として名を馳せた福田でさえも、世界レベルとの違いを感じたと明かす。

また、ドリブルがテーマになると、近年のサッカー用語として随所に使われる「抜ききらない」という言葉の話題に。福田は「僕らもどうしても使ってしまいますが、大切なのはシュートコースを作ること。そのためのドリブル。目的と方法を勘違いしてしまっている」と語り、多くの場合で“抜ききる必要はない”と解説。一方の都並はヴェルディで同僚だったセンターバックのペレイラのプレーを引き合いに出し、「最終ラインで落ち着いてクライフターンをする。サイドバッグが追い詰められて、ボールを受けるのが怖くなっているところで、ペレイラがクルッとターンして逆に行ってくれる。それだけで全くサッカーが変わってしまう」と、攻撃以外で発揮する個人として持っているドリブルの深みの重要性を語った。

そして秋田は鹿島の伝統を作り上げたジーコのエピソードを語り「ビスマルクとかレオナルドからも良いボールは来るけど、ジーコは歩幅まで合わせてくれる。ビリヤードとかで下を打つとピタッと止まるじゃないですか。それと同じことをやっていた」と“神様”と呼ばれる男のプレー精度について語った。

最後に勝村が「そのジーコがワールドカップで優勝してない」と語ると、福田も「並大抵のことじゃ難しいって結論になりますね」とコメント。皆藤に「それを踏まえて何が一番必要だと思いますか?」と締めの言葉を求められると、勝村は「僕の中でちゃんと明確なビジョンがあります。それはこの番組です!」と堂々宣言。スタッフの笑い声がスタジオに溢れていた。

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