杉野遥亮、連ドラ初主演で「いままで以上に俳優という仕事について考えるように」

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犯罪現場の貧困をテーマに、裏社会に生きる若者たちへの取材を行うルポライター・鈴木大介さんのノンフィクション「老人喰い」を原案に連続ドラマ化されたMBS/TBSドラマイズム『スカム』(TBS、7月2日スタート、毎週火曜25:28~/MBS、6月30日スタート、毎週日曜24:50~※初回は25:50~)。

リーマン・ブラザーズの経営破たんにより、失業者があふれた東京近郊を舞台に、一流企業から新卒切りをされ、流されるままにオレオレ詐欺に手を染めることになってしまった若者の顛末を描いた社会派詐欺エンターテインメントだ。

本作で、主人公・草野誠実を演じるのが、近年映画やドラマへの出演作が相次ぐ若手俳優・杉野遥亮さん。自身にとって初となる連続ドラマ主演を務めた杉野さんに、撮影現場でのエピソードや、主演を務めたことで変化した意識などを語っていただきました。

――オレオレ詐欺に手を染める主人公でしたが、どんな人物だと捉えてらっしゃいますか?

誠実のような立場の人は、世の中にもたくさんいると思うんです。やっていることは犯罪なのでダメなことですが、窮地に追い込まれたとき、支えになったり寄り添ってくれるものにしがみついたりしてしまう気持ちは分かったので、そういう共感する部分をしっかり表現できればと思いました。

――鈴木大介さんの原案はお読みになったのですか?

はい。詐欺について全然知らなかったので、「受け子」や「出し子」のような独特の用語を覚えるのが大変でしたが、鈴木さんの「老人喰い」を読むうちに、誠実の気持ちに寄り添えるようになっていきました。

――題材的にきわどい話ですが、視聴者にはどんな見方をしてほしいですか?

こういうことがあるんだということを知識として得ることで、騙されてはいけないという教訓になったり、詐欺というものへの犯罪意識なども持っていただけたりしたらいいなと思いますね。あとは、悪いことをしているのですが、誠実の刹那的なきらめきや、何に心動かされていったのかなどは感じてもらえたら嬉しいです。

――本作が連続ドラマ初主演ですが、どんな気持ちで臨まれましたか?

現場に入る前に、映画『居眠り磐音』で共演した柄本佑さんから「主演は人より寝る時間が少ないだけだから。でもそのぶん、いろいろな景色が見られるよ」とアドバイスをいただいたんです。それで変な気負いはなく撮影に臨むことができました。

――では変に構えることなく、撮影に入られたんですね?

そうですね。現場に入る前は、何をどう伝えたらいいのか、正直あやふやな状態だったのですが、撮影前に小林(勇貴)監督やスタッフさんとお話をして、この作品を映像化する熱量や思いをお聞きして、変な迷いは消えました。素直に誠実という人物を楽しんで演じようという気持ちで入ることができました。

――柄本さんが仰っていた主演ならではの景色は見えましたか?

自分が見ていない現場がほとんどないぐらいの出演頻度だったので、作品全体の状況が把握できました。現場でシーンやセリフが生まれることも目の当たりにして、小林監督やスタッフさんともいろいろな会話ができました。一緒に作品を作り上げていくという感覚はとても楽しく、貴重な経験ができたと思っています。

――台本を読むとクレーンで吊られるなど大変なシーンが多いように感じましたが。

拷問シーンは、インパクトは強いのかもしれませんが、どちらかというと楽しくできました。それよりも、台本上はシーンが割られている部分も一連で撮影することがあったんです。その緊張感は、これまであまり経験したことがなかったので、苦労しました。

――作品を経験して、詐欺などに対する危機管理みたいなものは増しましたか?

リアルな手口とかが出てくるので、親とかには「こういうことがあったら気をつけてね」とは知らせたいですね。

――小林監督からはすごく熱量が感じられたとお話しされていましたが、ご一緒していかがでしたか?

自分の中で誠実の気持ちを確認したいシーンがあって、前日小林監督に電話をしたんです。出てくれなくて……(笑)。後日聞いたら、寝ていなかったのですが、それは現場で感じたことを演じてもらいたかったから、敢えて電話に出なかったそうなんです。なんかそういう関係性がすごくありがたいというか、とても信頼ができる方だなと思いました。

――今回の作品を経験して、何か得られたと実感していることはありますか?

一つ一つ作品を重ねて次のステップにいくという向上心は常に持っているのですが、今回の作品に出会えたことで、いままで以上に俳優という仕事について考えるようになりました。

――連続ドラマ初主演を果たしました。次の目標はありますか?

たくさんあるのですが、いまは撮影が終わってロス状態で……。しいて挙げれば、まだまだ伝えられることがたくさんあると思うので、続編みたいな形で続いてくれたら嬉しいなと思っています。

取材・文:磯部正和
撮影:大江麻貴