東大卒の元プロ野球選手、スポーツ経営のプロになってサッカー界に提言

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勝村政信皆藤愛子がMCを務めるテレビ東京のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(毎週土曜24:50~)。2月25日の放送は、スポーツ経営学者で元プロ野球選手の小林至と「Jリーグのブランド力向上へ、未来を明るくするスポーツビジネス戦略」をテーマに話し合った。

1992年、東京大学から千葉ロッテマリーンズに入団した小林は、引退後、コロンビア大学大学院で経営学を学び、スポーツビジネスの道へ。ソフトバンクホークスに入社すると、ビジネス部門やチーム部門の責任者として、球団の成長に大きく貢献した。現在は、江戸川大学社会学部の教壇に立ちながら、スポーツビジネスコンサルタントの側面から、様々な場所でアドバイザーとして活躍している。

まず小林は、スポーツビジネスが進化するためには「ブランド力の向上」が不可欠だと提言。スポーツ興行の主な収入のうちの1つは、チケット(会場で見る権利)やテレビの放映権などの“権利”から生まれると説明し「買い手から、売り手になれ」とキーワードをあげた。

土日のゴルフ中継に“○○オープン”という名前が付いているのは、スポンサー企業が宣伝のために“放送してもらっている”状況だと言い、一方、プレミアリーグは、3年で約1兆4000億円、1試合にすると20~30億円もの放映権料が支払われており、これはテレビ局が“放送したいからお金を払っている”と解説。このように、しっかりとした売り手になることで、リーグのブランド価値を上げていけると話し、日本は、競争させて一番高い値段を付けた人に売るという習慣がないことが弊害になっていると分析した。

また、世界最大のスタジアムが満員になっても10万人なのに対して、日本では視聴率1%で100万人に届けられることを例にあげ「スポーツはメディア産業」だと語った。メディアに取り上げてもらうことがスポーツにとって一番大切なことで、どうやって取り上げもらうかを常に考えなくてはいけない。その為にビッグクラブを作るのも1つの手段との考えを示し、DAZNと結んだ10年2100億円の放映権契約は大きなチャンスだと話した。

そして、海外のスポーツ放送の考え方にも言及。日本ではチャンピオンシップのような決定戦は、皆に見てもらうべきだという“ユニバーサルアクセス”という考え方が主流だが、海外では逆で、途中までは皆に見てもらって、最後の一番面白いところはペイパービューにしてギュッと絞める。これが世界のスポーツビジネスの現実で、こうやって資金を集めることで、選手、スタッフ、チームの価値を上げているいう。

続いて、日本全体のスポーツビジネス改善策として「アスリート・ファーストではなくカスタマー・ファースト」と提案し、前者は当然のことで、それと同等か、それ以上にお客さんのことを考えなくてはいけないと力説。スタジアムの魅力の話題になると、勝村が「あの時、あれが起きたところに俺はいるっていうのは大事ですよね? また行きたくなるし、家族や友達に伝えて広がっていく」とスポーツ観戦の醍醐味を語ると、小林も同意。「半歩先を見たコンテンツ作り」と「スタジアム、アリーナを感動空間にする」という2つの要素をあげ、「毎年行くたびに少しずつ変化したり、LEDやビジョンなど、様々な装置を駆使したりして、お客さんを楽しませることが重要」と解説した。また、勝村はニューヨークの中学に行った際に、バスケットボールの試合を観戦した際のことを振り返り、「中学生の試合でDJが入り、チアガールが踊り、プロとまったく同じことをやっていて、入った瞬間にドキドキした」と、海外のスポーツ観戦環境の“当たり前”との大きな違いを痛感したと明かした。

更に、小林はJリーグだけでなく、プロ野球など様々なスポーツで外資導入を促進すべきだと提案。日本人はこれまでの風習やしきたりに縛られてしまうが、外国人はスペインのトップクラブが700億円稼いでいるのに、経済力で圧倒する日本のトップクラブが70億円はおかしいと考えると指摘した。さらに、マンチェスター・ユナイテッドでは、超一流のビジネスマンが高い報酬で働いていることを例にあげ、高い報酬と働き甲斐をもって優秀な人材を集めていく外資の考え方を入れることによって、様々なイノベーションが起きていくと予測。また、スター選手の獲得については「時には無理してでも連れてくることで、パラダイムが変わっていく」と、変化の必要性を強く訴えかけていた。

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