伊藤智彦監督が語るアニメ『僕だけがいない街』注目ポイント

公開: 更新:

2012年に「ヤングエース」(KADOKAWA刊)にて連載を開始し、「マンガ大賞」や「このマンガがすごい!」に2014年、2015年と2年連続でランクインしている、三部けいが手がけるコミック『僕だけがいない街』をアニメ化。フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて、1月7日(木)より各局にて放送している。

物語は、主人公の青年・藤沼悟(29歳)の前で「悪い出来事」が起こると、その原因が取り除かれるまで「悪いこと」が起こる直前の場面に時が巻き戻ってしまう現象“リバイバル(再上映)”を軸に進行。ある日起きた事件をきっかけに、悟は自らの小学生時代と向き合うことになる……。

今回、テレビシリーズを手がける伊藤智彦監督にインタビュー。作品の魅力や、アニメ声優に初挑戦する土屋太鳳と満島真之介の起用理由。そして、アニメ監督となったルーツなどをたっぷりと語っていただいた。


<インタビュー>
――人気コミックのアニメ化ですが、どのような経緯で監督が手がけることが決まったのでしょうか? また、プレッシャーなどはありますか?

社内にマンガをたくさん持っている制作の渋谷くんという子がいて、原作の2巻が出た時に「これ面白いんですよ!」と紹介されて初めて読みました。そうしたら本当に面白くて、それでKADOKAWAさんとアニプレックスさんにアニメ化の可能性があるか探りを入れてみたら現実的な話になっていきました。今回はアニメ化が前提にある中で監督が決まったのではなくて、こちらからやりたいと話を持って行ったことで、僕が手がけさせて頂けることになりました。プレッシャーと言うよりも、初めてやりたい企画を通したという楽しみが強かったですね。

――連載中のコミックをアニメ化するのは難しいですか?

実は今回、原作とほぼ一緒に終わることができるという恵まれた環境にあります。それに原作を読んでいてもそれほど長い作品にはならないだろうと思っていました。ベストな時期にアニメ化できるのかなと思っています。

――この作品の魅力をどのようなところから感じたのでしょうか?

1巻、2巻を読んだ時は、その巻のラストから先がまったく読めないスリリングな展開に魅力を感じました。それとノスタルジー感が良かったですね。俺は主人公と同年齢なので、原作に子供達が見てる特撮で「ブラック」というワードが出てきても「これは仮面ライダーBLACKのことだろう? いや、RXか?」とわかりやすく共感できたのも良かった。それに小学生時代の悟たちを見ても、小学生の男子って変に意識しているから女子にあまり話しかけなかったこととか、自分の小学生時代と若干重ね合わせて見られたのが良かったですね。

――主人公・悟の声について伺わせてください。いわゆる声優さんではなくて、実写を舞台に活躍されている俳優さんにしたのは、どのような狙いがあったのでしょうか?

悟は主人公だけど、ヒーローではないんです。ヒーローっぽさは消したいけれど、でも存在感は欲しい。選択肢に幅を持たせる意味で「実写系の人も含め、良い人はいないですかね?」と音響サイドと相談しました。すると、土屋太鳳さんと満島真之介さんが候補に挙がったんです。最終的にお二人の声も、他の候補者同様聴かせていただき、悟の声に決めました。

――年齢の違う同一人物を演じてもらうにあたり、どのような演出をしたのでしょうか?

子どもだからってバカっぽくしてしまうと、大人になった時に違和感があるかなと思いました。今回、土屋さんも満島さんも一緒にアフレコすることが多いので、先に大人の悟にセリフを言ってもらって、それが小学生だったらどうだったかをシミュレートして土屋さんには演じてもらうなどしています。声としては子どもだけど、頭の中は大人ということを意識してもらっています。

――収録はいつも一緒に行われているのですか?

基本的には他の声優さんたちと一緒に皆でアフレコしています。俳優さんは忙しくてタイミングが合わずに別録りになってしまうこともありますが、この作品はオファーした段階から一緒にアフレコするのを大前提としていたので、声優さんたちと一緒にブースに入ってもらい、入れ替わり立ち替わりマイクの前に入って声を吹き込んでもらっています。

――現場での2人の人柄について教えてください。

真面目に役に向き合っているのが伝わってきます。休憩があると、スタッフ側のブースに来て「どうでした?」「ここはどういう感じが良いのでしょうか?」と聞いてくるんですよ。いつもは僕が向こうのブースに行って話すことが多いのですが、あちらから聞きに来てくれるのは珍しいなって。その日の収録が終わっても「今回はどんな感じに私の声が聞こえました?」と聞きにきてくれたので、OKテイクを繋げた音源を一緒に聞いて、自分の中でもフィードバックしているみたいです。

PICK UP