俳優・中村蒼、30代目前に宿る思い!「自分のためよりも誰かのために」

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中村蒼
中村蒼

2月22日に放送されるドラマスペシャル『神様のカルテ』(テレビ東京系、毎週月曜日、20時~)の第2話より、中村蒼さんが出演する。中村さんは、福士蒼汰さん演じる主人公・栗原一止の同期で、一止の数少ない友人である優秀な血液内科医・進藤辰也を演じる。

中村蒼、福士蒼汰
中村蒼、福士蒼汰

辰也は、信州にある「24時間、365日対応」の本庄病院に赴任するが、学生時代には「医学部の良心」と呼ばれていた男にもかかわらず、患者が運ばれて来ても「定時なので」と退勤してしまうなど、その姿は大きく変わってしまった。

何が彼を変えてしまったのか。複雑な役どころを演じる中村さんに、作品に込めた思いや、来月30歳を迎えることによる心境の変化などをお聞きしました。

――台本を読んで進藤辰也という役についてどんな印象を持ちましたか?

進藤先生の発言によって病院内でいろいろな問題が生じてしまうのですが、僕は医者としてというより、人間として考えたとき、彼の言動というのは理解できるなと思いました。

――プロデューサーさんが、進藤先生の優しさと芯の強さを表現するのは、中村さんがピッタリだと起用理由を語っていましたが、そういう進藤の本質は意識して現場に入ったのでしょうか?

進藤先生は新しい生き方を見つけて、本庄病院に赴任してきます。自ら決めたことなのですが、どこかで「元々はそんな人間じゃなかった」というような葛藤が、自然と出せたらなというのは意識していました。

――台本で感じた進藤と、現場に入って演じた進藤では違いはありますか?

割り切って自分のスタイルを貫いているものの、どこかで無理しているところが自然と出てしまう……そんな弱さみたいなところがあるキャラクターかなと思っていたのですが、現場では監督から「もっと意志が強い感じでいい」という演出を受けました。僕自身の人に甘えてしまう部分が役に出てしまったのかなと(笑)。すごく難しかったですね。

――長野県松本市でのロケもあったとお聞きしました。

基本は都内だったのですが、印象的なシーンなどは松本で撮影が行われました。実際の舞台となった場所に行けたのは、役を作る上でとてもありがたかったです。病院の屋上で話をするシーンなどは、松本城が見えたり、周りが山に囲まれていたりして、すごく雰囲気があるなと思いました。

――本作では、学生時代の友人である栗原と久々に再会するという関係性でしたが、中村さんは相手との距離感というのは、撮影をしていないところから作っていくのでしょうか?

役柄の関係性に合わせて、撮影外から作っていくという準備の仕方もあると思いますが、僕はあまりそこまで意識していません。恋人役だったのに、撮影以外では一言もしゃべらずに終わったなんてこともありました(笑)。そこはお芝居の力を信じてやっていますが、でも年々そういった役へのアプローチ方法も大切かなとは思っています。福士さんは、とてもフレンドリーな方だったので、短い撮影時間でしたが、コミュニケーションはとれていたと思います。

――中村さんは3月で30歳を迎えますが、家族の愛や仕事観など重層的なテーマを持つ本作に出会ったことで、なにか感じたことはありますか?

劇中で「自分たちの報酬は良心に恥じないこと」という台詞が出てきますが、僕もどれだけお金を稼ぐかとか、どれだけ良い成績を残すかということよりも、自分が大切にしていることを貫けるかということが大切なんだと改めて思いました。

僕にとって大切なものは、家族や友達。そういう人たちにちゃんと向き合っていきたい。今回、命をテーマにした作品に携わって、より周囲の人たちに対して、後悔しないように接しなければいけないなと思いました。命って儚いものですからね。

――お芝居にも変化が?

演じることについても、自分がいかにして現場に立っていられるのか……ということを噛みしめながら作品に参加するようになっています。自分がどう見られたいかという考え方よりも、誰かのためにお芝居をした方が、良い感想をいただけることが多いんですよね。

――そんな思いで迎える30代ですが、どんな10年にしていきたいですか?

「20代をしっかり真面目に生きてきた人は、楽しい30代になるよ」と周囲の人に言われることが多いのですが、正直な話をすると「自分はちゃんと楽しめるのかな」って結構不安ですね。マリッジブルー的な感じなのかもしれません(笑)。

でもあまり不安になってしまうとお芝居にも良くないので、しっかりと楽しもうとは思っています。30代はもっと強い気持ちを持って進んでいきたいです。

――連続テレビ小説『エール』の村野鉄男役も好評で、役柄の幅も広がっているように感じられますが、不安なのでしょうか?

声を掛けていただくこともあるのですが、あまり実感がないんですよね。周囲も大きく変わった印象はないですし。ただ、作品に入るたびにすごく才能のある方々とお芝居をする機会が増えてきた感じはするので、負けないように頑張らないといけないなとは思っています。

――お医者さんの役を演じて、人生観は変わりましたか?

人の命を扱う職業というのは本当に大変だなと思いました。いまこんな時期なので特にお医者さんに甘えることなく、自分自身の行動をしっかり考えて迷惑を掛けないようにしようというのは身に沁みました。

あとは、勝手にまだ数十年生きられると心のどこかで思っていたのですが、人の命というものはどうなるか分からないと感じたので、本当に思っていることはしっかりと言葉にして伝えなければいけないなと背筋が伸びました。

――お子さんも授かって、より命という言葉が重くなったのではないでしょうか?

そうですね。子供は親を選べない。子供にとって絶対的な味方は親だと考えると、その子に恥じないような生き方をしなければいけないし、「子供のためなら自分のことなんて……」という感覚は初めて宿った気持ちです。

――いろいろなことが感じられる作品ですが、どんなところを視聴者に見てほしいですか?

劇中、栗原が「医者としてではなく、人として話をしているんだ」という言葉を発しますが、今回の作品はお医者さんの話というよりは、「人間とは」という大きなテーマがあります。どの世代の人にも共感できるシーンが多くあると思うので、幅広い方々に見ていただきたいです。自分のことを思ってくれている人って、自分が思っているよりもたくさんいるのだなと感じられるドラマになっています。

(取材・文:磯部正和)

<第2話 あらすじ>
「患者を救うために、家族を犠牲にするのか?」栗原一止(福士蒼汰)の大学時代の同期・進藤辰也(中村蒼)が本庄病院に加わる。辰也との再会を喜ぶ一止だったが、患者や看護師と対立する姿に疑問を感じ、衝突してしまう。そんな折、恩師である古狐先生(イッセー尾形)が院内で倒れ、検査結果に一止や大狸先生(北大路欣也)は衝撃を受ける……。一止は医師の責任の中で、夫婦や友人、家族との“つながり”を改めて自分自身に問う。

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