「できればここを出て行きたい」ケニア最大のゴミ山で暮らす若者のスカベンジャー飯:ウルトラハイパー ハードボイルド グルメリポート

公開: 更新: テレ東プラス

食うこと、すなわち生きること。食の現場にすべてが凝縮されている。ヤバい人たちのヤバい飯を通して、ヤバい世界のリアルを見る番組「ウルトラハイパー ハードボイルド グルメリポート」。2017年10月深夜に、深夜枠で「ハイパーハードボイルドグルメリポート」が初放送されるや大反響を呼び回を重ね、2019年7月には初のゴールデンタイムに進出し、「ウルトラハイパー ハードボイルド グルメリポート」として放送された。

今回は、ゲストに有吉弘行を迎えてお届けした初ゴールデンの2019年7月15日放送から「ケニア ゴミ山暮らしの若者飯」を振り返る。

ケニアの巨大なゴミ山で暮らす人々の飯

ケニア共和国の人口は約5000万人。最初に訪れた首都ナイロビは、アフリカで最も急速に成長している都市である。ここで暮らす人々の平均月収は約6万円。

まずは腹ごしらえ。道端で、網に乗せて焼いているものとは......

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なんと牛とヤギの頭。頭を割ってスープにするという。隣では「アフリカンソーセージ」(5切100円)を作るため、大量の牛ひき肉と玉ねぎと唐辛子を大きな鍋で炒めている。

スープ作りは、まず焼いた牛の頭を割って湯に入れ、ヤギの頭も加え、さらにソーセージの肉汁も入れて30分煮込む。カップで一人分をすくってシンナーが入っていた空き容器に移し、味付けに塩を加えてフタを閉め、勢いよく容器を振り泡立てる。

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カップに注ぐと、クリーミーな泡がまるでカプチーノのような「牛とヤギの頭のスープ」(100円)の完成。取材ディレクターも「めっちゃ濃厚。一番うまい」と大絶賛の味!

グルメリポート① シンナーチルドレンの贅沢チキン

案内人と合流し、ナイロビ中のゴミが捨てられるダンドラ地区へ。武装したギャングがゴミの利権を巡って抗争を起こすなど、事件の多い危険な場所だという。そこでは子どもたちが、ものを拾って生活費を稼いでいる。このケニア最大のゴミ山で暮らす者たちは、一体何を食うのか?

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道中、ペットボトルで何かを吸っている子どもたちが。中身は靴修理用のゴム糊で、シンナーの匂いがする。彼らはいわゆるシンナーチルドレンなのだ。ケニアには路上で暮らす子どもが30万人以上いると言われ、その子どもたちの大多数はシンナーをはじめとするドラッグに溺れていく。

路上の子どもたちのまとめ役・ジョン(29歳)になぜシンナーを吸うのか尋ねると、「食べる物もない、寝る場所は外。ストレスがたくさんある」と話す。ジョンの両親はいるものの、貧しくて一緒には暮らせない。ここでは親が亡くなったか、親に捨てられた子どもたちが身を寄せ合って暮らしているのだ。

「飯を見せてもらえませんか」と頼むと、よく行くという食堂に案内してくれた。彼らはお金を持っていないため、こちらで支払うことに。

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料理を待つ間、ジョンが手にした何かを吸っている。飛行機の燃料(ガソリン系)を含ませた布だという。体に悪いことはわかっていながらも、「ハイにしてくれる。ストレスがあっても消し去ってくれるんだ」とジョン。他にも「チャビス」というドラッグも見せてくれた。

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運ばれてきたのは、山盛りポテトの上に大きなチキン「チキン&チップス」(240円)。物乞い1日で稼げるのは、良いときで800~1000円くらい。ジョンは「これを食えるのは月に1回だね」と言い、子供たちはうれしそうに食べ始める。

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ところが、かなりの量を残し、子供たちはお腹いっぱいになってしまう。シンナーを吸いすぎると食欲がなくなるというのだ。

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ここでの日々は「すごく厳しい」と話すジョン。物乞いにとどまらず日常的に強盗やスリをしなくては生きていけない。罪悪感はないのかと尋ねると、こう答えた。

「悪いことをしてるとは思わない。食べ物がないから仕方ないんだ。神様も許してくれるさ」

グルメリポート② ゴミ山の門番余り肉の煮込み

路上で暮らすジョンも「ここよりもっと危険だ」という「ダンドラ ゴミ処分場」へ。東京ドーム5.3個分の広さのナイロビ最大のゴミ処分場で、1日に約850トンのゴミが運ばれてくる。ここでは3000人以上がゴミを漁り生活の糧を得ている。人が捨てたものを拾って生きる彼らは、「スカベンジャー(屍肉食動物)」と呼ばれている。

ゴミ山の入口で、立ち上る煙を発見。火を炊いているようだ。煙の立つ場所にいってみると、缶を鍋にして料理をしている人がいる。なんと、薪の代わりに燃やしているのはプラスチック。

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昼食だという飯を見せてもらえませんかと頼むと、快く缶のフタを開けてくれた。中身は牛の肉や脳みその煮込みで、柔らかくなるまであと1時間はかかるという。ほとんど歯がないため、柔らかくしないと食べられないというのだ。

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料理をしていたのはピーター(65歳)。もう25年もゴミ山で暮らしている。ここでゴミを拾っているほとんどの労働者は周辺のスラム街から通っており、ゴミ山の中に暮らしているのはほんの一握り。

ゴミ山唯一の食堂へ

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ゴミ山の入口を散策すると言うと、ピーターが案内役を買って出てくれた。歩いていると、ゴミ山の内側から火が出ている。大量のゴミによる圧力やゴミ自体の発酵、直射日光などによって温度が上がり、自然に発火するのだ。さらに先に進むと、大量の牛が。そこは家畜の餌場で、ゴミを餌にして乳牛からミルクを得ているのだという。

そろそろ煮込みも完成したころなので戻ってみると、缶がなくなっている。散策しているうちに盗まれてしまったようだ。金もなく、昼食もなくなってしまったピーターは黙って腹をさすっている。責任を感じた取材ディレクターは1食シェアすることに。

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ゴミ山労働者が通う、ゴミ山で唯一の食堂で出てきたのは「チャパティ&ンデング」(100円)。

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緑豆をトマト・玉ねぎ・にんにくで煮込んだ「ンデング」を、チャパティと共にうまそうに頬張る。

元々靴の修理をしていたピーターだが、オーナーにミシンを取り上げられ、仕事ができずやむなくゴミ山に辿り着いた。2人子どもがいるが、ゴミ山では暮らせないので叔母の家に預けている。

「子どもと過ごすことだけが幸せなのに、もうずっと子どもに会えてないんだ」

自分のこれからもどうなるかわからない。ここでの暮らしに幸せだと思える瞬間などないとピーターは語った。

グルメリポート③ ゴミ山汚染豚

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ゴミ山の奥に向かって進むと、豚が餌を食べている。ダンドラで飼われる豚の血中鉛濃度は一般の35倍というデータがある。

ダンドラでゴミを食べて育った豚を食べられるという店「ポークセンター」へ。「汚染は大丈夫?」と尋ねると、店員は「汚染なんてないよ」と答える。

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オーダーした300グラムの豚肉をラードで炒め、トマトと玉ねぎを加えてさらに炒めた、「ゴミ山ポークのトマト炒め」(160円)。取材ディレクターが食べたところ、脂が甘く、トマトでさっぱりしているという。

グルメリポート④ ゴミ山の炊きたてお赤飯

翌朝、ゴミ山の奥で暮らす人を探していると、着替え中の若者を見つけた。ゴミ山に住んで4 年になるジョセフ(18歳)だ。両親は貧しくて養ってくれないので、14歳で食べ物を探しに来たという。

ジョセフはゴミ収集のトラックに乗り込み、街中のゴミ捨て場を人より先に回ってゴミを集めている。トラックが来るまではゴミ山でプラスチックと金属を拾う。重さで値段が決まるので、かさばらず重いものを選んでいるだという。

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朝9時、政府のゴミ収集トラックの荷台に乗り込み、ナイロビの中心部へ。「お金持ちがたくさんいる」というジョセフに、お金持ちをどう思うか聞いてみた。

「一方では好きだけど、一方では嫌い」

お金持ちは貧しい人を救うべきなのに、助けてくれない。けどお金持ちでなければ貧乏人を救えないからだという。

昼12時半、収集されたゴミ袋が荷台に投げ込まれる。ジョセフはゴミからその場で作ったナイフで袋を開いてプラスチックを取り始めた。これがジョセフの仕事。ゴミ収集を手伝う代わりにプラスチックを取らせてもらい、ダンドラに戻ったら売って金にするのだ。

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時折、咳き込むジョセフ。ゴミ山の有毒ガスで胸をやられているらしい。

「強くないと、ここじゃ生き残れない」

家族について聞けば、妹が2人と弟が3人、遠く離れて暮らしていると。しかし、それ以上は話さず、うつむいてしまった。

午後5時半、ダンドラに戻り、集めたゴミをゴミ山の麓の買取所に売りに行く。この日の稼ぎは6.5キロで90円だった。

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飯の準備のため、まずは火を起こす。使うのはクッションの中綿で、よく燃えるらしい。案内人によると、それは人体に有害なアスベストだという。自然発火したゴミを火種として枝と中綿を燃やし、先ほど降った雨で冷えた体を温める。

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店で買った水と米とマドゥンド(煮豆)を、大きな缶で炊き上げると、「ゴミ山のお赤飯」(70円)が完成。

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ペットボトルの底を皿にして、赤飯を頬張る。ジョセフは取材ディレクターにもわけてくれ、「お金があればもっといいものが作れたのに」と。

ここでの暮らしはどうかと尋ねると、「できればここを出て行きたい」と話す。将来は奥さんと子どもを持ち、プレイステーション屋を開く夢があるという。アフリカの多くの国々では、家庭用ゲーム機が1台手に入れば、客をとってプレイ代で稼ぐことができるのだ。

最後に「今幸せ?」と問うと、ジョセフは穏やかな表情でこう答えた。

「あなたに会えたから幸せだよ」

この1週間後、ダンドラエリアの数ヶ所で連続強盗事件が発生し、多数の被害者が出た。ジョセフも巻き込まれ腹と背をナイフで刺されたが、運よく病院に運ばれ翌日にはゴミ山に帰ったという。

ギリシャ難民漂着飯と激動の香港デモ飯

10月14日(月・祝)夜10時より放送の「ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート」は、"今"の飯。ボートで海峡を渡りギリシャにやって来た難民とその密航を手配するブローカーや、香港のデモの当事者たちを徹底取材!

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■ギリシャ難民漂着飯
2019年の夏、突然大量の難民がトルコを離れ、EUの玄関口となるギリシャへ渡った。ギリシャのほぼ東端、小さな島に生まれたヨーロッパ最大の難民キャンプで暮らす者たちは何を食うのか。命を賭してボートで海峡を渡ってきた者たちは何を食うのか。そして、トルコ側で難民たちの密航を手配するブローカーは何を食うのか。

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■激動の香港デモ飯
参加者200万人とも言われる超大規模なデモ。イギリスから返還されて21年経った香港が今、中国の支配から逃れようともがいている。デモの当事者たちは何を食うのか、その口からは何が話されるのか。

さらに詳しい内容は、番組ホームページをチェック!

【番 組 名】「ウルトラハイパー ハードボイルド グルメリポート」
【放送日時】10月14日(月・祝)夜10時~11時24分放送
【出 演 者】小籔千豊
【放 送 局】テレビ東京系(TX、TVO、TVA、TSC、TVh、テレQ)
【番組HP】https://www.tv-tokyo.co.jp/hyperhard/
【公式ツイッター】https://twitter.com/HYPER_GOURMET ハッシュタグ「#ハイパー」
【公式TikTok】 ID:hyper_hardboiled アカウント名:ハイパーハードボイルドグルメリポート

◆Paraviではスピンオフ「放送できなかったヤバい飯」全4話を含むシリーズ全作を配信中!
さらに10月14日(月)オンエア最新作の独占見放題配信も決定! ※配信開始日調整中
Paravi(#1~#6・スピンオフ#1~#4)

◆以下動画配信サイトでも配信中! ※過去作の一部のみ配信
Netflix
Hulu
Amazon プライム・ビデオ

◎7月15日に放送されたスペシャル版を期間限定で無料配信!
ネットもテレ東 ※TVer、GYAO!、ニコニコチャンネルでも視聴可能
◆7月15日放送のスペシャル版(#6)・・・10月28日(月)まで
◆スピンオフ動画シリーズ#1「リベリア編」・・・10月21日(月)まで

◎スピンオフ動画シリーズ#2「ロサンゼルス編」を好評配信中!
テレビ東京公式YouTubeチャンネル

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