部下との関係に難あるCEO、自分を見失った超人気アイドルが島で癒される...「東京放置食堂」をプレイバック!

公開: 更新: テレ東プラス

【3行まとめ】
・「東京放置食堂」第1、2話をプレイバック!
・人を裁くことに疲れた元裁判官の日出子は、大島で居酒屋を手伝うことに。
・日出子は店でIT企業の社長や人気アイドルと交流し、彼らの心の癒していく。

「島が好き。青い空、海、時間がゆっくり流れていく所...日々の喧騒を忘れられる。ドラマを観ていたら、久しぶりに島へ行きたくなりました」「いま人々が求めているのは、正体や本名は聞かないけど、本当のことを打ち明けたりする場所なのでは? と思ってしまう。その場所は食堂でもスナックでもTwitterでもいいんだろうな、きっと...」など、SNSでも話題。毎週水曜深夜1時から好評放送中の水ドラ25「東京放置食堂」。

「テレ東プラス」では、第1話、第2話をプレイバックする!

都心から120キロ南にある、もうひとつの東京「大島」。主人公は元裁判官で53歳の真野日出子(片桐はいり)で、島で生まれ育った小宮山渚(工藤綾乃)と出会い、小さな居酒屋『風待屋』を手伝っている。風待屋は、渚が祖父から受け継いだ店。大島にはコンビニもファミレスもショッピングモールもなく、あるのは火山、海、ゆっくりと流れる時間。これはそんな大島の片隅にある、小さな居酒屋の物語だ。

【第1話】

ある朝、港に到着したジェット船から、仕立ての良いスーツを着た男が降りてくる。男の名は水科繁(近藤公園)。イライラしながら部下とスマホで話し、「何年うちで働いてるんだ。今すぐやり直せ!」と乱暴に電話を切る。足早にタクシー乗り場へ向かうと、南波一平(与座よしあき)のタクシーのドアをノックする。

「ドア開けてくれる?」

「手動なんですよ、ちょっと壊れてて」

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水科は面倒くさそうにドアに手をかけるが、開かない。南波は運転席から降りると「ちょっとしたコツがあるんですよ。少し押してから引く」とドアを開けてみせた。「早く直した方がいいよ」と苦笑いする水科だが、ふと、周りに停まっている車が品川ナンバーだと気づく。

「みんなそうですよ。ここは東京ですから」

「東京ね...」

人を探している水科。取り出したのは、ビシッとスーツを着た日出子の写真だった。真面目で正義感の強い日出子は、この島ではちょっとした有名人。南波も知り合いで、「風待屋に行けば会えますよ」と言う。水科はすぐに向かおうとするが、まだ開店前の時間。少し寄り道すればいいという南波の勧めで、島を見て回ることにした。

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むき出しになった雄大な縞模様の地層を見上げ、呆然とする水科。南波は得意げに「火山の噴火百数十回、約1万5千年の噴出物で出来た地層です。人の一生なんて、ちっぽけに思えてきますよね」と解説する。するとスマホが鳴り、出るやいなや部下を怒鳴り散らす水科。「使えない部下ばかりで。今日中に東京に戻らないと」とぼやく水科に、「無理ですよ。最終便の船、もう出ちゃってます」と返す南波。

その頃、渚はくさや工場『くさやの小宮山』で、従業員の北野康夫(松川尚瑠輝)から告白されていた。だるそうに舌打ちすると、「もう100回以上断ったよね」と答える。そして仕事中は下の名前ではなく『社長』と呼ぶよう言いつけ、去って行った。物陰から見ていた西浦辰彦(梅垣義明)が現れ、肩を落とす北野を元気付ける。

「しょうがねぇよ。巌雄さんが死んでから、まだ一年経ってねぇからな。あの若さで工場と店を継いで、恋愛どころじゃないんだよ、きっと」

祖父の巌雄が亡くなり、『風待屋』と『くさやの小宮山』を受け継いだ渚。夕方になり風待屋のカウンターに立つと、西浦が客としてやって来た。

諦めの悪い北野の失恋は、12年連続で15回目。「罪な女」という日出子をじろりと睨み、渚が魚を捌いていると、客がやって来る。南波が水科を連れて来たのだ。カウンター越しに対峙する日出子と水科を、怪訝な顔で見る渚。

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「やっぱり覚えてませんよね、俺のこと」

「覚えてるよ。あんた、無断リクライニング男でしょ」

以前、新幹線で断りもせずに座席を倒した水科。さらに大声で電話していたため、頭に来た日出子が叱ったのだ。「ヒデさんらしいね」と手を叩いて笑う南波に、「お袋以外にあんなに怒られたことないよ」と話す水科。「ご挨拶遅れました」と名刺を取り出し、日出子の前に置く。そこには有名IT企業『ワンフューチャー』の代表取締役CEOと書かれており、大騒ぎする西浦と南波。「知ってるんですか? うちの会社。こんな島でも」という水科を、渚は「ここも東京なんで」と睨む。

焼酎を飲み、すっかりご機嫌になった水科。会社の部下はイエスマンばかりで、ちゃんと自分を叱ってくれた日出子に無性に会いたくなったという。

「あなたのことはだいたい調べがついてる。なんで裁判官辞めたんですか? 正義感の強いあなたには天職のはずだ」

「疲れちゃったのよ、人を裁くことに。魚を捌く方が性に合ってる」

半年前、大島に降り立った日出子は、ここで初めての冒険をしていると話すと、水科はカウンターを勢いよく叩き「馬鹿げてる! そんなのただの逃避だ」と嘆く。

「あんた何にも分かってない。俺たちみたいな選ばれた人間には、社会を動かす義務があるんだ。どんなにしんどくても、そこから逃げちゃダメなんだ!」

「...さっきからガタガタうるさいんだよ」

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渚が吐き捨てるようにそう言うと、激昂して水科が立ち上がる。「それが客に対する態度か」と怒鳴るが、渚は引くことなく睨み続ける。するとどこからか白い煙が漂ってきて、見ると日出子がムロアジのくさやを焼いていた。焼き上がったそれを目前に突きつけると、あまりの匂いにのけ反り、さらに怒る水科。

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「いいから食べてみな! こんなくさい飯、塀の中でも味わえないよ?」

気迫に押され、おそるおそる口に運ぶ。「うまい...くさいけど、うまい」と驚き、箸が止まらなくなった。日出子と渚は顔を見合わせて笑う。

夜も更け、水科を強引に店の奥へ引っ張って行く日出子。連れて行ったのは、昔、漁港の氷を貯めていた貯氷庫だ。

「こういう肩書きに頼って仕事してるから、部下にそっぽ向かれるんだろ」

日出子はそう言って水科に名刺を突き返す。

「一番近くにいる部下のこと、どれぐらい知ってる? どれくらい把握してる?」

「いえ...」

「部下はあんたの奴隷じゃない! 人間同士の付き合いをしなけりゃ、信頼関係なんかできっこないよ。くだらないプライドはここに置いてきな。あんたが変われば、周りも変わるから」

「...はい!」

日出子に説教され、嬉しそうな水科。

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翌朝、水科とベンチに腰掛ける日出子。「なんで大島なんですか?」という問いに、「南の島に憧れてたから」と答える。飛行機が怖くて乗れない日出子には、沖縄やハワイという選択肢はなかった。

「東京から船で1時間45分。臆病な私には、これが精一杯」

「ここもまだ東京ですけどね」

「ちっぽけな冒険だよね」

日出子と水科が笑い合っていると、南波のタクシーが迎えに来た。

「ここは風待ちの港。誰も拒まない。少しだけ休んで、風が吹いたら出て行けばいい」

「また叱られに来ます」

「くさや用意して待ってるよ」

深々とお辞儀をし、タクシーに向かう。南波が降りてきてドアを開けようとするが、「いいよ。ちょっと押して引くんだろ」と自らの手で開けて乗り込む。そうして東京本土へと帰って行った。

数日後。桟橋に腰かけ、六法全書を読んでいる日出子。そこへ渚がやって来て、新聞を日出子に渡した。紙面には、すっきりとした笑顔の水科の写真。『ワンフューチャーの水科社長は、今月から社長室・役員室を廃止。新人から役員まで自由に意見交換ができる、風通しの良い職場を目指している』という記事を読み上げ、面白そうに笑う日出子。

「ヒデさんの説教のおかげじゃない?」

「まさかぁ」

そう言いつつ、嬉しそうな日出子だった。

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