部下との関係に難あるCEO、自分を見失った超人気アイドルが島で癒される...「東京放置食堂」をプレイバック!

公開: 更新: テレ東プラス

【第2話】

半年前のこと。大島に降り立った日出子がスーツのまま黒い火山岩で覆われた“裏砂漠”を歩いていると、後ろから「何してるの? 大丈夫!?」と声をかけられた。買い出しで港の近くにいた渚は、緊張した表情で地図を広げていた日出子が気になり、ついてきたのだ。

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「お腹空いた!」

そう叫んだ日出子は、渚に連れられ風待屋にやって来る。看板もメニューもない店の様子に、日出子は次々とダメ出しをするが、渚は無言でくさやを焼く。焼き上がったそれを突き出されると、強烈な匂いに「いらない、下げて。無理なものは無理!」と顔を背ける日出子。

「くさや、ナメんなよ」

日出子の前にくさやを置き、まっすぐ見据える渚。日出子は警戒しながら口に運び、顔をしかめながら咀嚼して飲みこんだ。そしてクスクス笑い出す。

「くさいけど、うまい!」

次第に大笑いする日出子につられ、渚も笑った。

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ある朝。ジェット船が港に到着すると、帽子を目深にかぶった若い女性が降りてくる。挙動不審なその女性は、大人気アイドル・小松原美織(桜井玲香)。周囲を警戒しながら歩いていると、観光客と見た南波が近づいてきて「どちらから?」と声を掛ける。

「…東京です」

「そう。ここも東京だけどね〜!」

美織が辺りをキョロキョロ見回すと、南波がどこかで見覚えのある顔だと気づく。すぐさま走って逃げる美織。海岸まで逃げて来た美織は、一面の黒い砂浜を見渡し「なんで黒いの?このビーチ。撮影で来たのと全然違うし」と呟く。すると背後から南波が近づいて来て、美織の顔を見て確信する。またもや走って逃げる美織を追いかけるが、転んでしまう南波。慌てて北野に電話をかけ、いきさつを説明するのだった。

『くさやの小宮山』で仕事中の北野は、美織が島に来ていると大騒ぎしながら渚に伝える。しかし渚は「誰それ」と顔をしかめるだけ。

「ミオリンだよ!?“『恋の着払い』っていう曲で大ブレイクしたアイドル。あのさ、渚ちゃん」

「仕事中」

「あのさ、社長。午後の仕事休んでミオリンを探しに行っても…」

「ダメ。さっさと配達行って」

同じ頃、美織は島を走り回っていた。気持ち良さそうに自転車で走る日出子とすれ違うが、なりふり構わず走り続ける。

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そして先ほどとは別の海岸に辿り着くと、「どこにもないじゃん、白いビーチ!」と不満そうに腰を下ろすのだった。スマホにはマネージャーから着信が入るが、無視。すると遠くから南波が自分を探している声が聞こえ、再び走って逃げる。

日出子が見晴らし台から海を眺めていると、背後を美織が通り過ぎて行った。美織は道路脇にある火山シェルターの中に入り、タバコに火を付け一服。すると日出子がやって来て、「何してるの?」と話しかける。慌ててタバコを隠し、「誰にも言わないでください、SNSにも書かないでください、お願いします」と怯える美織。

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「なんでそんな怯えてるの?」

「…知らないんですか? 私のこと」

「知ってるわけないでしょ、いま初対面なんだから」

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安堵した美織は、風待屋を訪れる。日出子に出された料理を食べながら目を奪われたのは、カウンターに置かれた焼酎のボトル。「実は毎日飲んでます」と悪戯っぽく微笑む美織。焼酎のソーダ割を豪快に飲み干し、

「アイドルはいつも笑顔、皆に夢と希望を与えなきゃいけない。理屈では分かってるんです。でも私、そんなキレイな人間じゃなくて。こうやってお酒飲んでくだ巻いたりもするし、そのギャップが自分でも辛くて」と愚痴をこぼす。

「嫌なら辞めれば?」と返す渚。

アイドルが嫌なわけではないが、本当の自分との境目が分からなくなっていた。今日は写真集のサイン会で、外にファンが並んでるのを見て怖くなり、心が苦しくなって逃げ出したという。気づいたら大島に来ていたのだ。

すると、美織のスマホにマネージャーから着信が。

「ちゃんと話した方がいいんじゃない?」という日出子に、「ほっといてください」と焼酎を煽る美織。すると、外で南波と北野が探し回っている声が聞こえ、慌てふためく。渚が面倒くさそうに貯氷庫へと案内し、すんでのところで姿を見られずに済んだ。

貯氷庫に入るなり、当然のように「毛布借りてもいいですか? 寒くて」と言う美織。渚は「ふざけんな。あんたのマネージャーじゃないから」と返し、その言葉にムッとする。渚は自分で毛布を取りに行くよう言うが、「他のお客さんいるし…」と拒む美織。

「あのね、ド素人には分かんないかもしれないけど、アイドルっていうのは…」

「アイドル言い訳にすんなよ! 自分で選んだくせに」

「!」

「仕事から逃げて、マネージャーから逃げて、こんなとこ隠れて。ただのガキじゃん」

「あんた何様?」

「真面目に働いて納税してる、居酒屋の女将だよ」

「……」

「かわいそう、あんた。ホントの自分が分からないなんて、かわいそう」

美織は悔しそうに立ち尽くすのだった。

1人で店内に戻った渚は、南波と北野に焼酎を取りに行っていただけだと説明する。SNSをチェックしたところ、サイン会が中止になったらしく、心配で食事も喉を通らないという北野。「まあ、そのうちどっかから出てくるんじゃないの? ひょっこり」と、日出子は貯氷庫への扉をちらりと見る。しかし渚は「出てこないよ、このままずっと」と冷たく言い放ち、北野が「もう一度探しに行く!」と席を立った瞬間。

「こんばんは、小松原美織で〜す! ミオリン体操、いっくぞー!」

奥の扉から現れた美織が、アイドル全開で自己紹介をする。すると店内に煙が漂い始め、顔をしかめる美織。目の前にくさやを突きつけられると、「なんじゃこりゃあ!」とアイドルらしからぬ野太い声を出してしまう。その声に驚き、静まり返る一同。

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「…すいません、素が出ちゃった」

「いいんじゃない?」

「え?」

「無理して笑うよりずっといい!」

日出子に勧められ、意を決してくさやを口に運ぶ美織。あまりの美味しさに、「焼酎にもめっちゃ合いますね」と目を丸くする。

「味が良ければ、全部チャラになる。嫌な匂いだって愛されるようになる。期待に応えすぎない方がいいよ。あんたはあんたでしかないんだから」

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閉店後。美織はマネージャーに電話をかけ、明日の朝帰ることを約束する。マネージャーは「次の現場、頑張ろう」と言ってくれたが、次は映画の撮影で気が重い。「苦手なんですよね、お芝居。普段からアイドル演じてるからですかね」と自嘲気味に笑う美織。

「ここにも昔、映画館があったらしいよ」

「え?」

立ち止まり、港を見渡す日出子と美織。

「“風待ちの港”って言ってね。いろんな船が入ってきて、毎日大賑わいだったって。でも今はこんな感じ」

「なんかいいですね、淋しくて」という美織を見て、日出子はおもむろにガラケーを取り出し、その横顔を撮る。驚く美織に、「いい顔してたから」と日出子。

翌朝。美織は帽子も被らず、スポットライトが当たる場所に帰って行った。

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数日後、防波堤で奇妙なダンスをする日出子。そこへ渚がやって来て、怪訝な顔をする。日出子が踊っていたのは、「恋の着払い」のダンス。「最初のところが全然分からない」と言いながら、懸命に練習している。SNSの情報によると、美織は中止になったサイン会をやり直したらしい。「あの子、アイドル続けられるのかな」と言う渚に、

「分かんない。でも私は好きだけどね、『なんじゃこりゃあ!』」

と返す日出子。あの日の美織を真似て笑い合う2人だった。

第3、4話のあらすじは10月13日(水)夜9時30分に公開します! どうぞお楽しみに!

10月13日(水)深夜第5話のあらすじは…。

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視察のため大島にやってきたのは、都議会議員の白鳥真澄(濱津隆之)と秘書の久田晶(小宮有紗)。役場の担当者の代わりに、くさや工場の北野(松川尚瑠輝)が二人を大島の観光地へ案内することに。しかし、白鳥は予定にない視察をいれ、自分勝手に行動してしまう。

久田が注意をするも、全く聞く耳を持たない白鳥。白鳥は、地元の人が集まる店で、郷土料理を食べて話を聞きたいと、また予定にない視察を入れる。北野は、真野日出子(片桐はいり)のいる「風待屋」へ案内するが…。

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