
6月20日(土)より全国公開される映画『劔岳 点の記』は、明治40年、日本地図完成のため前人未踏の険しい山の登頂に命を賭けた、男たちの情熱と尊厳を描き出した作品です。この舞台となった劒岳とは、どんな場所なのでしょうか?その魅力、作品の背景となる立山信仰の世界を、映画公開を前に知っておきたいマメ知識としてご紹介します。

富山県東部にあり、北アルプス立山連峰の北端に位置する山。弘法大師が草鞋三千足を費やしても登れなかったと言われるほどの険しさで、古来より「針の山」と呼ばれ、立山信仰では「死の山」とも言われた、未踏峰の霊峰でした。記録に残っている劔岳の初登頂は、明治40年、映画『劔岳 点の記』の主人公である陸軍参謀本部陸地測量部の測量手・柴崎芳太郎によるもの。しかし山頂には錫杖(しゃくじょう)の頭部と鉄剣と、古い焚き火跡が残っており、奈良時代末から平安時代初期に立山修験者がすでに登頂していたと考えられています。


山を神聖視し、崇拝の対象とする山岳信仰の代表として、富士山・白山と共に「日本三霊山」の一つにあげられる立山。その山容、地獄谷など特異な景観により特殊な山岳信仰として注目されました。平安時代の中頃、立山信仰は地獄信仰と観音信仰が結びつき、日本中の亡霊がここに集まると考えられるようになりました。


立山信仰の世界観が表現されているのが「立山曼荼羅(まんだら)」です。立山信仰の発祥の地、芦峅寺(あしくらじ)に住む宗徒たちが布教のために携えたとされ、いわば立山信仰の絵説き版。実際の立山の風景を仏教の極楽浄土と地獄の世界に見たて、鮮やかな色彩で描いています。左端の“劔岳”は「死の山」として表現されています。
画像提供:立山博物館
全国から立山に訪れた人たちが、登拝や祭礼などを行う宗教施設であり、宿泊施設としても利用された場所。中でも「善道坊」は、立山信仰の拠点・芦峅寺(あしくらじ)に19世紀中頃に建てられた建物で、現存する宿坊としては唯一のもの。基本的には農家住宅の作りですが、間取りは仏の間を中央に、左手に客間、右手に居間が配置されています。


芦峅寺にある雄山神社の正式名称は「雄山神社祈願殿(おやまじんじゃきがんでん)」。立山信仰の拠点であり、広い境内には主な社殿が3つ点在。参道右手奥には立山若宮、中心に祈願殿があり、境内奥には立山大宮があります。


映画『劔岳 点の記』で、明治時代の富山駅として登場したのが岩峅寺駅(いわくらじえき)。1921年に建てられた駅で、駅舎の屋根は神社を模し、風情豊かな佇まいが特徴です。雄山神社への最寄り駅となっています。
今回の映画を記念し、待合室には駅のデッサン図や、俳優・エキストラの撮影シーンなどを映したスナップ写真などを展示中です。

駅舎事務所で今も使用されている、
この木造机も実はセットとして映画に登場しています。
映画館でよーく目を凝らしてチェックしてみて!