B級グルメの王者・富士宮焼きそばには、もっと人気の「A面」メニューがあった!?

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食いしん坊の読者諸氏なら、富士宮焼きそばはご存知だろう。静岡県富士宮市で親しまれて来た焼きそばで、ご当地グルメが競い合う「B-1グランプリ」の第1回、第2回で連続してゴールドグランプリの座を獲得している。言わば、B級グルメの王者だ。

5月11日放送の『秘密のケンミンSHOW』ではこの富士宮焼きそばが取り上げられた。毎回、日本中のご当地グルメを紹介するのが『ケンミンSHOW』の前半の見どころだが、これまでに富士宮焼きそばを取り上げていなかったのは意外だ。

さすが“王者”だけあって、番組中で出てくるだけでうまそうだ! ダシ粉と呼ばれるイワシの粉がかかっているのが特徴で、なおかつ具として“肉かす”が入っているのも決め手だという。地元のケンミンもこの焼きそばを誇りに思っていることが画面から伝わってくる。特に肉かすは欠かせない具材のようで、「肉かす抜きだとバカみたいな焼きそばになる」と、王者を擁するケンミンらしい一言もあった。全国のほかの焼きそばはひれ伏すしかあるまい。

ところが番組は意外な方向に展開する。富士宮焼きそばを提供するお店のお品書きに謎のメニューを発見したのだ。「しぐれ焼き」という名前。しかも、富士宮焼きそばより地元では人気があるという。他ケンミンが聞いたこともないこの名のメニューは一体どんなものだろう。

地元ケンミンによれば、お好み焼きの中に焼きそばが入ったものだと言う。「広島のお好み焼きのようなものでは?」と聞く取材陣に、地元ケンミンはこともなげにこう言った。「完全に違う」もうさっぱりわからない。

画面に出て来たしぐれ焼きは、確かに焼きそば入りのお好み焼きだが、やはりダシ粉と肉かすも入っている。さらに椎茸や桜エビも入っておりなんとも豪華。そして驚いたことに、コテをギュッギュッと押し付けて薄く薄くしていき、ペッタンコになってしまった。そこが広島のお好み焼きとは“完全に違う”のだろう。薄く焼くからこそ外がカリカリで、中がもちもちになるのが魅力のようだ。富士宮焼きそば学会の渡邉英彦会長によれば、「富士宮ではお好み焼きが主流のA面で、焼きそばはB面だった」のだという。なるほど、B面メニューだからB級グルメの王者となったわけだが、地元ではA面の方が人気ということだ。

後半では、熊本の高菜漬けが紹介された。実は昨年取材していたのだが、震災が起こったため放送しないままだったそうだ。今回の放送では、1年後の取材映像も含めて構成していた。震災前に元気に楽しく高菜漬けを食べていたご家族の、直近の様子も紹介。幸いなことに皆さん無事で、赤ちゃんが生まれた一家もあってホッとする。その感慨を、しんみりともう少しで涙がこぼれそうに語る司会のみのもんたさんには、見ているこちらも目頭が熱くなった。

『ケンミンSHOW』を見ると、日本にはこんなに土地土地でユニークな食べ物があるものかと感心する。そしてそれを地元の人々が親しんで愛している様子が伝わってくる。知っていたつもりでもさらに奥が深く、またそうしたご当地メニューが人々に力と誇りを与えていることもわかってくる。何年も毎週取り上げているのに、ネタはまったく尽きる気配がない。『ケンミンSHOW』の面白さは、それぞれがケンミンである私たち自身の面白さなのだと思う。

【文:境治】

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