竹野内豊「江口洋介は漁師そのものだった」映画『人生の約束』で初共演

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――ドラマ界の巨匠といわれる石橋監督ですが、お二人にとって印象的な作品は?

竹野内:やっぱり『池中玄太80キロ』ですね。子どもの頃に、本当にドラマが面白いなとすごく強烈なインパクトがありました。役者さんが演じているような感じがしなくて、本当にこの人たちがいるんじゃないかって。西田敏行さん演じる池中玄太が、本当に存在するかと思うくらいリアリティがありました。

江口:僕も『池中玄太』です。今でもあの情景というか、情感たっぷりの雪のシーンで鶴が佇んでいるような風景がポンポン浮かんでくる。竹野内くんが言うように、本当にそこにいるかのように、生きているかのように見えるっていうのは、役者がそこでめいっぱい呼吸をして、泣いて、笑っている証拠。台本があるんだけれども、台本の世界を飛び出して歩き始めたような感じがしますよね。

――劇中に「40代が人生の踊り場。過去も、未来も見える」という言葉が登場しますが、40代のお二人はどのように受け止められましたか?

竹野内:この「人生の踊り場」っていうセリフも、すごくわかるような気がします。ただ、本当の意味では自分はわからないなと思っていて、正直、冠さんに失礼かもしれませんが、素直に「主演をやらせていただくのに、自分はわからない」と伝えたんです。そうしたら、冠さんが「俺もわからないんだよ。ただ、わからないからこそ、この言葉に出来ない思いや気持ちを、映像で見せたい。だから、こんなことを言うのは恥ずかしいけど、パッションがすごく大事だと思っているんだよな」っておっしゃいました。なので、それはもう現地に行って、江口さんとかスタッフの人たちにお会いした時に、そこから世界観がワッと出来上がって、冠さんがやりたいことはこういうことなのかなっていうのが、だんだんと立体的に見えてきました。それまでは活字の中でしか感じ取ることができなかったことが、現地に実際に行った時に、すべて現実のものとしてわかっていったような気がしましたね。

江口:「40代は人生の踊り場」っていうのは、生まれてきたことも、これから死についても意識する年齢ということで、僕自身すごく共感する部分はありましたし、非常にしっくりきながら演じていました。『人生の約束』は、アニメーションや原作ものが多い現代において、監督の奥さんの実家がある新湊を舞台にしたオリジナル作品。すごく普遍的な人間ドラマですし、町を見てインスパイアされるものがあった。その中で見せたかったものというのが、日本のいろんな地方都市どこでも当てはまる、半径数百メートルの中の人の付き合いというものがあれば、人生って豊かになっていくんじゃないかとか、失ったものに対しての悲しさもあるけれど、次に自分はどういうものをリスペクトして生きていくのか。そういうことを考えながら演じたんですけど、それは今の年齢だからこそ、より感じる部分はあったと思いますね。

――劇中では、祐馬と鉄也が拳で語り合うようなシーンも登場します。若い方と接する機会も多いと思いますが、お二人は普段どのようにコミュニケーションをとられていますか?

江口:俳優みたいな仕事は、どちらかというと組織の人間じゃない。僕たちは若いやつをたきつけながらコミュニケーションを取るというか沸かしていく。そうやって現場の温度を上げていく感じでずっとやっています。手を差し伸べるということはあまり考えないかな。逆に難しいからね。遊んだり、ふざけたり、いじることで仲良くなれたりするし、変に優しくなることの方が逆に危ない。なので、あまり意識しない方がいいのかな、とこの頃は思っています。

竹野内:江口さんが仰るように、優しくするということが決していいことではない。本当にそう思いますよね。

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