日本最高級の「豊橋筆」、伝統工芸品「雨畑硯」...書道を愛するアメリカ人が職人技と出会い、驚きの進化を遂げていた!:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

子どもたちのためにそろばん教室を開催。テレビ局の取材も!

続いては、ニッポンのそろばんに魅せられ、そろばんを自作するようになったハンガリー人、元小学校教師・バイダさんの後編(※前編はコチラ!)。そろばんへの情熱を抑えきれず、自宅の裏庭にそろばん用の工房を建築。地元の小学生に低価格でそろばんを提供しています。

nipponikitai_20201207_37_2.jpg
「ニッポンで本場のそろばん作りを学びたい」という夢が叶い、4年前に初来日。180年以上の歴史を持つ「雲州そろばん」の産地・島根県奥出雲町へ。訪れたのは「雲州そろばん協業組合」。伝統を受け継ぐ職人さんからその秘訣を学ばせていただけることになりました。

素早く正確な計算を可能にするのが、「雲州そろばん」の滑らかな珠の動き。まず見せてくださったのは、軸に珠を通す工程。職人歴40年以上の堀江美輝恵さんは、珠が入っている箱の中で数回枠を左右に振るだけであっという間にすべての軸に珠を入れてしまいます。

nipponikitai_20201207_38_2.jpg
バイダさんも挑戦させてもらいましたが、あえなく失敗。熟練の職人技に驚きを隠せません。お次は、最も関心がある珠作りを、そろばんで初めて「現代の名工」に選ばれた職人歴58年の伝統工芸士・内田文雄さんに教えていただきます。そこでバイダさんが見たものは、珠ひとつひとつに精魂を込めた職人技でした。

nipponikitai_20201207_39_2.jpg
材料は、ツゲやカバなど重くて硬い木材を1年以上自然乾燥させたもの。内田さんは、この荒珠と呼ばれる状態でさらに1年乾燥させます。徹底的に乾燥させることで、わずかな誤差が生じるのを防ぐそう。

nipponikitai_20201207_40_2.jpg
ここからが職人の腕の見せどころ。場所によって硬さが違う荒珠をひとつひとつかんなで削り、すべてを均一な形に仕上げます。

nipponikitai_20201207_41_2.jpg
計算され尽くした理想の菱形。指で最も弾きやすい角度になっています。「珠ひとつひとつにここまで手をかけているとは本当に驚きました」とバイダさん。特別に伝統的な珠削りを体験させていただけることに。まずは荒珠作りから。最初は失敗したものの、慣れてくると安定して同じ形を作ることができるようになり、内田さんも「職人だ! 上手い」と絶賛。ところが肝心の手を使っての珠削りはやはり難しく、なかなか上手くいきません。

nipponikitai_20201207_42_2.jpg
均一な形を作るのに苦労するバイダさん。「なぜ機械より手で削る方が良いのか」内田さんに尋ねると、「珠がものすごく硬くなっているので、機械を同じ速度であてると割れてしまったりするんです。きつくあてたりゆっくりあてたりするのは手作業が一番」とのこと。木は生き物...手に伝わる微妙な感覚が重要なのです。「十何年やってようやく何とかなるかな。そりゃそう簡単じゃない」と内田さん。その後は、皆さんのご厚意で仕上げまで学ばせていただきました。「ニッポンのそろばんは私のものとは比べようもないほど精密な作りです。この特別な経験は、今後そろばんを作る上でかけがえのない財産です」とバイダさん。

別れの時。「今日は貴重な勉強をさせていただき、本当にありがとうございました。心から感謝します」と伝えると、「私どもが作ったそろばんです。使ってください」と、そろばんを10挺もプレゼントしていただきました。

nipponikitai_20201207_43_2.jpg
「ありがとうございます。大切にします。絶対に良いそろばんを作ります」。そして、今回お世話になった皆さんのはからいで、「伝統産業会館」のそろばん博物館に、バイダさんのそろばんが展示されることになりました。

nipponikitai_20201207_44_2.jpg
あれから4年。バイダさんからのビデオレターを、「雲州そろばん協業組合」の皆さんに届けます。するとそこには、番組を観てそろばん職人を志した若者が4人も! 後継者不足に解決の道筋が見えてきたようです。

「皆さんのおかげで私のそろばん作りは大きく成長しました。それを見ていただく前に紹介したい場所があります」。向かったのはバイダさんが暮らす街にある「ヨージェフ・アティッラ博物館」。そこにはなんと、バイダさんプロデュースの常設展示が! 「帰国後、どうしてもそろばんのことをもっと広めたくなって市に交渉したら、常設の展示スペースがもらえたのです」。

nipponikitai_20201207_45_2.jpg
ニッポンのそろばんの歴史や「雲州そろばん」での体験を展示。小学校の社会科見学のコースにも指定されています。そして本題のそろばん作り。自宅の工房には4年前にはなかった工作機械が!
「まずはこれを見てください」と木材をセットすると...。

nipponikitai_20201207_46_2.jpg
自動でそろばんの珠に削られて出てきました! 「これがニッポンで学んだ成果です」。以前の珠は、丸いだんご型でしたが、「雲州そろばん」と同じ菱形に変わっていました。「内田さんのように手作業で正確な菱形を作るには10年かかるといわれ、到底真似できないので、何とか近づけられないかと機械を改良しました」。硬いクルミの木を回転させながら削り、軸を通す穴まで開けられる珠削り機を半年かけて開発。これには内田さんも感心します。さらにバイダさん、もうひとつ発明があるそうで...。

nipponikitai_20201207_47_2.jpg
この奇妙な形の器具。「雲州そろばん」の工房で一番衝撃を受けた職人技から考え出したそう。それは、一気に軸に珠を通す珠入れ。「私は全然できませんでした。帰国してからも悔しくてこの器具を考えたのです。ニッポンの職人さんほどではないですが、珠入れのスピードが格段にアップしました」。この器具で珠をひとすくいするとちょうど4つ入り、軸を通す穴も揃うので、一度に4軸に通していくことができるのです。「雲州そろばん」のような艶を出したいと、仕上げにヤスリがけもするようになっていました。

nipponikitai_20201207_48_2.jpg
出来上がったそろばんを振る音を聞き、「いい音がしてるよ」と内田さん。ここでバイダさんからお願いが...。「このそろばんに皆さんへの敬意を込めて『雲州バイダ』と名付けたいのですが...」。「改良してこれだけのそろばんが出来たので"雲州"を名乗っていただければ我々もありがたいです」と快諾してくださいました。

「雲州そろばん」での体験を糧に格段に滑らかな動きになったバイダさんのそろばんは、これまで1000挺以上製造し、子どもたちに愛用されています。「匂いを嗅いだり撫でたりして、みんな笑顔になるんです。その瞬間が最高なんです!」。さらにバイダさんは子どもたちのためにそろばん教室も開催。この日は、テレビ局の取材が来ていました。

nipponikitai_20201207_49_2.jpg
「電卓のあるこの時代にそろばんを使う意味は何ですか?」と聞かれると、「そろばんは計算をするという単なる道具ではなく、脳の活性化にもいいし、計算力を高めてくれます」と答えていました。

最後にバイダさんから、もうひとつ報告。「実はおじいちゃんになったんです」といって見せてくれた家族写真のお孫さんの手には、早くもそろばんが!

nipponikitai_20201207_50_2.jpg
「いつか2人の孫が"雲州バイダ"を継いでくれるのが夢です。その夢を叶えるためにも改良を続けていきます」。バイダさんをニッポンにご招待したらそろばんの質が向上し、そろばんおじさんとして普及活動にも力を注いでいました!

今晩8時放送! 月曜プレミア8「世界!ニッポン行きたい人応援団」は...。

nipponikitai_20201207_51_2.jpg
▼「押し寿司について学びたい」アルゼンチン人男性
約2年前、ニッポンにご招待。その際、山口県岩国市の皆さんから米5升を使った重さ7.5㎏の日本一大きい押し寿司の作り方を学んだ。そんな彼からビデオレターが届く。帰国後、自身で開いていた料理教室の生徒が増加。しかし今年、教室が閉校することに...そんな状況から芽生えた新たな夢とは...? また嬉しい報告が!

▼「墨流しを実際に見て学びたい」アメリカ人女性
約4年半前、ニッポンにご招待。その際、京都にある染色工房「墨や」にいる全国に数人しかいない墨流し職人の元へ。さらに創業80年の和染工芸で全国で数軒しか行なっていない「型染紙」の作り方も教えてもらった。そんな彼女からビデオレターが届く。そこには驚きの進化が! そして「墨流し」が生活を救う!?

どうぞお楽しみに!

PICK UP