米国発の物を”売らない店”に企業が興味を示す理由

公開: 更新: テレ東プラス

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渋谷にオープンした「b8ta Tokyo-Shibuya」

15日に渋谷駅からすぐの場所にオープンした「b8ta Tokyo-Shibuya」。アメリカ発の物を"売らない店"です。

店の入り口近くの目立つ場所には、日産の最新の電気自動車が置かれ、ほかにもラーメンの自動販売機や低周波で頭皮などを刺激できるブラシなど、スタートアップ企業の開発段階の製品から大手企業の新商品までさまざまなものが並びます。商品の半分ほどは購入可能ですが、この店の目的は、客に商品を売ることではありません。

店の天井にはカメラが設置され、商品に興味を持った客の数などをAIで分析し、データを集めます。この店ではそのデータを企業に提供するのです。

「百貨店や商業施設に出店しても、何人が(商品を)体験して何人に話を聞いてもらえたのかフィードバックの声も集めにくかったが、それらを全て可視化できるようになっている」(ベータ・ジャパンの北川卓司代表)

b8taは昨年8月に日本に上陸。3店舗目となる渋谷店では、新たにカフェスペースを設けて店内で試食できるようにしました。コロナ禍の巣ごもり消費で、食品開発に力を入れる企業が増えていることを受け、環境を整えました。

接客も店側が担当し、商品の使い心地など、客から直接生の声を聞き出してくれます。企業側も「お客様の生の声に近いものが収集できるのではないかという狙いがある」(サッポロビール・マーケティング本部の武田悟季さん)、「従来のわれわれの持っているデータ分析と、b8taからのデータを融合させることで新たな可能性を見いだしたい」(日産自動車・日本マーケティング本部の増田泰久副本部長)と話します。

企業は商品を並べるためには、月に1区画、約30万円支払う必要がありますが、渋谷の店では41画全てが既に埋まっています。

データを取ることで新たな気づきを得た企業があります。b8taの日本1号店に1年前から商品を置いている花王です。

花王が店に置いているのがスキンケアができる美容家電「バイオミメシス ヴェール」(一式7万7000円〜)。保湿美容液などを肌に馴染ませた後、スイッチを押すと、肌に白い膜を作ることができます。これは花王の独自技術で、この膜が美容液や肌の水分を外に逃がさないということです。

この商品は百貨店の化粧品売り場で女性をターゲットに販売してきましたが「もっと気軽に試してもらう接点がないか探していた」(花王・化粧品事業部門の大倉誠一さん)ことからb8taに置きました。

その結果、b8taから送られてきたデータで、実際に商品を体験したり、店員から接客を受けるなど、興味を持った客の約2割が男性だったことがわかったのです。

「男性がかなりポジティブに考えていただいてるということで、(男性に向けて)PRやキャンペーンができることは、この情報から思いついた」(花王の大倉さん)

商品への意外な興味もわかる"売らない店"。b8taではさらなる出店に意欲を見せています。

「(東京以外の)他の主要都市でも、すごくいい場所があれば積極的に出していきたい。国内では8〜10店舗ほど、将来的には開けていきたい」(ベータ・ジャパンの北川代表)

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