廃棄ジーンズがパリコレに?ゴミが”宝”に大変身!:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

現場で奮闘する人たちの姿を通して、さまざまな経済ニュースの裏側を伝えるドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)。
7月9日(金)の放送では、元の製品に新たな価値をつけて蘇らせる「アップサイクル」を特集。常識にとらわれない"発想"とそれを実現する"技術"が求められるが、果たして、ゴミを"宝"に変えることができるのか?

使用済みプラの再利用には課題が山積み

世界最大の日用消費財メーカー「P&G」(本社・アメリカ、事業拠点約70ヵ国)は、事業規模に比例して、使用済みプラスチックの排出も多い。そこで2019年6月、「P&Gジャパン」(本社・神戸市)は、使用済みプラスチックなどを再利用して東京五輪の表彰台にする「みんなの表彰台プロジェクト」をスタートさせた。
プロジェクトリーダーに抜擢された田上智子さんは、「多くの人が使ってくれている反面、なんとかしないといけないと思う」と話す。

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使用済みプラスチックの回収は、全国のイオングループ約2000店舗を中心に実施。回収目標は約24.5トンだが、実際の数は遠く及ばない。
頭を抱える田上さんにヒントを与えたのが、長男・長人くんの優しさだった。母の手助けになればと、表彰台プロジェクトのチラシを手書きで作成し、自身が通う中学校に呼びかけたのだ。この働きかけを発端に使用済みプラの回収は全国113校まで広がり、約9カ月で24.5トンの確保に成功した。

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だが、問題はここからだった。表彰台の制作を担当する慶應義塾大学・環境情報学部の田中浩也教授は、3Dプリンター(※データを基に樹脂などを一層ずつ積み重ね、立体物を製作する)で一層ずつ積み重ねられていくプラスチックを見て、表情を曇らせる。熱を加えたプラスチックは、冷えて固まる際に縮もうとする力が働くため、反りが発生しやすい。さらに今回はさまざまな種類の廃棄プラスチックが混ざっているため、反りが一層激しくなるという。この時も途中で大きな反りが生まれ、作業は中断された。

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課題が山積み...。「得体のしれない材料で本当に3Dプリントできるのか...なんの保証もない」と話す田中教授だが、廃棄ガラスから作られた素材を混ぜたり安定するデザインを加えるなどし、試行錯誤を重ねた。

2020年2月。ようやく試作品が形になるも、今度はパーツ製作を依頼された3Dプリンターのメーカー「エス.ラボ」(京都市)が、納期に対する数の多さから「できませんよ、正直」と声をあげる。今回必要となるのは7000個で、納期までわずか2ヵ月...。24時間体制で稼働しても、できるのは2割ほど。この後、大会が1年延期になることなど誰も知る由がなく、みんなただただ追い込まれていた。課題だらけの表彰台作りをカメラが追う。

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代用プラスチック普及のため、キャリアを捨てて挑む

元外交官の深澤幸一郎さんは、自身のキャリアを捨てて「アップサイクル」に取り組んでいる。官僚として外務省で9年間働き、アフリカのガーナやイギリスにも赴任。ブッシュ元米大統領の通訳を務めたこともある。
そんな深澤さんを動かしたのが、ガーナで見たゴミだらけの海岸だった。プラスチックゴミを減らさねば、自分は何ができるのか──。深澤さんは外交官を辞めて、2015年に「カミーノ」を設立。紙パックを原料とした製品づくりを始めた。

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「カミーノ」が扱うのは、代用プラスチック「パプラス」。不純物を取り除きパウダー状にした紙パックにポリ乳酸(トウモロコシの澱粉が原料)を加えたもので、植物由来成分は9割以上。硬く丈夫に成形できる新素材で、耐熱性は120度(※耐熱使用の場合)、3〜5年で土に還るという。「90%以上、植物由来の物ができたのは素晴らしい」と専門家も絶賛する。

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「カミーノ」は、パプラスで化粧品のボトルやトレーなどを試作してきた。あとはこれを売り込むだけ。この日、全国に60店舗以上を展開する「スープストックトーキョー」(東京・中目黒)を訪れるが、果たしてその反応は?

目指すはパリコレ...廃棄ジーンズの再生に注力

アパレルの下請けとして、検品や包装、値札の取り付けなどをしている「ヤマサワプレス」(東京・足立区)。一番のウリは、その名の通りプレス技術。会長の山澤治夫さんはプレス歴56年で、海外の有名ブランドから声が掛かるなど、"伝説のプレス師"として知られている。
アパレル不況が続く中、2代目社長・山澤亮治さんが目をつけたのは、廃棄ジーンズの再生事業。アメリカ西海岸の倉庫から買い取ったジーンズのほとんどは、ジーンズの原型といわれるリーバイスの品番「501」だ。その数4万本以上で重さは20トン。

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山澤さんは「25年間アパレルの下請けをやってきて、一生懸命仕上げたものが大量に廃棄される現場をよく目にするようになってきた。『衣料品ロス』に対して取り組めるものがないかと思ったとき、このデニムに出会った」と話す。

有名劇団やアーティストからの依頼を受ける「洗濯ブラザース」直伝の洗濯術を駆使し、女性従業員らが頑固な汚れを落としていく。その後は補修作業へと移り、魅力的な衣類に生まれ変わる。

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この取り組みは、大手百貨店をも動かした。山澤さんの思いに「三越伊勢丹」「阪急阪神百貨店」などが賛同し、共同で商品を開発・販売することになったのだ。そして、一人のファッションデザイナーが「ヤマサワプレス」を訪れたことがさらなる転機となる。狙うは「パリ・コレクション」への出展と世界進出──。町工場に起きた奇跡を追う。

「SDGs(持続可能な開発目標)」が世界の趨勢となり、資源循環の必要性はますます高まっている。大きく変わろうとする企業や事業者の挑戦を、今晩10時からの「ガイアの夜明け」で放送。どうぞお見逃しなく!

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