小麦アレルギーとは違う「パンケーキシンドローム」とは?

公開: 更新: テレ東プラス

こんな症状が現れたら何科にかかればいい? 無理なくできる健康法ってあるの?--「主治医が見つかる診療所」(木曜夜7時58分から)は、皆さんが感じているさまざまな疑問に第一線で活躍する医師たちがやさしく答える、知的エンターテイメントバラエティです。

今回、WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」で取り上げるのは、日常生活に潜むアレルギーの原因について。おうち時間が増える中で気をつけたい開封後の食品の取り扱いや保存方法などを、体調不良の見逃せないサインにも精通する同番組のレギュラー・秋津壽男医師に教えていただきました!

原因は粉に侵入したダニ。その侵入経路は...

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Q:20代女性です。Twitterで「パンケーキシンドローム」という言葉を見つけ、「じんましんが出て顔が腫れ、息が苦しくなるなどの症状があったらすぐに救急車を!」という呼びかけが投稿されていました。パンケーキが大好きで自宅でもよく作って食べるので少し心配です。これまで小麦粉などでアレルギーを起こしたことはないのですが、具体的にどんな人が発症しやすいのでしょうか?

―― 先生、「パンケーキシンドローム」とはどのような症状・状態をいうのですか。

「パンケーキシンドローム(症候群)は、ダニが混入したパンケーキミックスやホットケーキミックスなどの小麦粉製品を食べたことが原因でアレルギー発作を引き起こしたものをいいます。基本的には家で作ったパンケーキで症状が出ることが多く、お店に食べに行って症状が出るということはほとんどありません。

症状としては、じんましんであったり、のどのかゆみであったり。重症な場合には呼吸困難や意識低下などのアナフィラキシーを起こし、命に関わることがあります」。

―― 小麦粉のアレルギーではないのですか。

「パンケーキでアレルギーを起こすという場合、パンケーキのミックス粉の材料である小麦が原因であったり、セリアック病(グルテンを摂取することで胃腸症状などが現れる自己免疫疾患)であったりすることも、もちろんあります。ただ、ここでいうパンケーキシンドロームは小麦アレルギーのことではないんです。ダニの中にはチリやホコリ、穀物の粉などを食べるダニがいるのですが、そのダニに対するアレルギーなのです。

よくハウスダストアレルギー対策でカーペットを敷くのをやめてフローリングにしたり、掃除や換気をこまめにしたりしますが、そうした家の中にいるダニの一種がミックス粉の中に入り込み、それを食べたり、焼くときに舞い上がった粉を吸い込んだりすることで発作を起こします」。

―― ダニはどのようにして混入するのでしょう?

「たまには家でパンケーキを作って食べようとパンケーキミックスを買ってきたとしましょう。いざ封を開けて作り始めるとたいていの場合、粉が残ったりするんですね。中には全部作りたいけれどダイエットもしたい......と、わざわざ半分で我慢する人もいるかもしれません。その残した粉に部屋の中のダニが混入して増殖し、その増えたダニによって症状が起こるのです。

ミックス粉は砂糖と小麦粉が入っているものがほとんどなので、ダニにとってはご馳走なんですね。混入したとしても翌日に食べ切ればいいのですが、1カ月も経つとその間にダニは爆発的に増えてしまいます。最初に話したお店などで食べても起きにくいのは、パンケーキの粉を大量に開封しても早い段階で使い切ってしまうから。ダニが増える暇がないからなのです」。

粉は使い切るか、すぐ冷凍保管を

doctor_20210707_02.jpg画像素材:PIXTA

―― 賞味期限が結構長めに設定されているので、つい残りはまた次回に...と思ってしまいます。

「賞味期限は未開封の状態で品質が保たれる期限ですよね。品質の劣化とほかの何かが混入することはまったく別の問題ですから、この場合、関係ありません。賞味期限内であっても混入してしまえば意味がないのです。

大事なのはダニの混入を最小限に抑え、その後も増やさないようにするにはどうすればよいかということ。全開封して開けっ放しのままパンケーキを作り、食べ終わって食器を洗うまで放っておいて、最後に残ったミックス粉を片付けたりしていませんか? それではその放置した間にダニが入ってきてしまいます。必要な粉の量を計量したら、まずは残りの粉をすぐに密閉保存容器に移す、あるいは袋の口をしっかりと閉じるといった作業を行ってから調理を始めるようにしましょう。

もうひとつ、混入したダニが5匹や10匹ならそうそうアレルギーは起きません。爆発的に増えるのを防ぐためにも、残った粉は冷蔵庫や冷凍庫で保管するのがおすすめです。"開封後は要冷蔵" などとは特に記載されていませんが、ダニも生き物ですから温度が低いと成長が少なくなります。使いかけのものは余裕があれば冷凍庫に入れておくと安心です」。

―― アレルギーの原因となるダニの数が大事なのですね。

「そうです。大量に増えたときが大変なのです。あとはその人の感受性の問題なので、大量の粉ダニが入っていても気づかない、反応しないという人もいれば、少量でも反応してしまう人がいます。そばアレルギーなど微量でも重篤な症状が現れる食物アレルギーがあることを考えるとわかりやすいかもしれませんね。

日本ではパンケーキシンドローム同様、お好み焼き粉が原因になることもしばしばあります。パンケーキミックスもお好み焼き粉もなくお母さんが小麦粉で作っていた時代は、使った小麦粉は、翌日は天ぷら、翌々日はたこ焼き......と使い切るスピードが速かったのですが、今は専用の粉の種類がたくさんあり、それぞれをちょっとずつ使っては残していると、それがダニの増える温床になってしまうのです。

ミックス粉などは使用期限内であっても早めに使い切ることが大事です。相談者のように心配な人は、密閉して冷蔵または冷凍するか、あるいはちょっと割高でも使い切りの小分けパックのものを探すといいでしょう。すぐに食べる予定がないなら徳用サイズのものは使わないようにするだけでも違うと思いますよ」。

―― 秋津先生、ありがとうございました。

【参考資料(秋津壽男先生・著)】
『放っておくとこわい症状大全 早期発見しないと後悔する病気のサインだけ集めました』(ダイヤモンド社)
【秋津壽男医師 プロフィール】
1954年和歌山県生まれ
1977年大阪大学工学部発酵工学科卒業 1986年和歌山県立医科大学卒業
1998年秋津医院を開業
日本内科学会認定総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医
日本医師会公認スポーツドクター 日本体育協会公認スポーツドクター
日本禁煙学会認定禁煙専門医
著書に「本当に怖いのは、第三の脂肪」(幻冬舎)、「薬を使わずに『生活習慣病』とサヨナラする法: 医師が教える『自己治癒力を高める』コツ」(三笠書房)、「こわい病気大全」(ダイアモンド社)など。

※この記事は秋津壽男医師の見解に基づいて作成したものです。

今回お話を伺った秋津先生も出演する主治医が見つかる診療所(7月8日木曜夜7時58分)は【ママ芸能人一斉検査!これさえ選べば体にお得SP】!

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