「普通の家族なんてない...みんなその”普通じゃなさ”と折り合いをつけて生きている...」。「生きるとか死ぬとか父親とか」いよいよ最終話!

公開: 更新: テレ東プラス

【3行まとめ】
・ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」が、いよいよ明日最終話! その前に、第11話をプレイバック!
・母の死後、父(國村隼)とトキコ(松岡茉優)の関係はどんどん悪化していく
・父の事業は上手くいかず、ついに家を手放すことに...。引っ越しの準備をする中で、トキコは母の「秘密」を見つけてしまう

心温まるフィナーレを...。6月25日(金)深夜0時12分からは、ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」最終話を放送! バラバラだった家族のゆくえは...? 「テレ東プラス」では、第11話「不在とか崩壊とか」の内容をプレイバックする。

亡き母(富田靖子)のことについてもありのままを書こうと決意したトキコ(吉田羊)。トキコのエッセイを担当する編集者・今西(DJ松永 Creepy Nuts)は、「自分が10代、20代だった頃の親への気持ちって、まだ言葉になってなかったんだなって。今回の原稿を読んで初めて気づきました...」とトキコに伝える。

「ホントですか? うちは普通の家族じゃなかったから、そんな風に思っていただけるとは...」

「普通の家族なんて、ないですよ」

「......!」

「みんな、その"普通じゃなさ"と折り合いをつけていくんじゃないでしょうか。この連載を担当できて良かったです」

「いえ、こちらこそ今西さんが担当で良かったです」

次の連載について話を進めようとする今西だが、トキコにはもう一つ、どうしても書きたいことがあった。

「父が事業に失敗して、実家を手放した時の話なんですけど。私にとっては母を亡くしたことの次に大きい経験で、その時のことを書いておきたいんです。どうでしょうか?」

「もちろん異論ありません。家族にとって"家"は非常に大切な場所ですし、それを喪失するってどういうことなのか、ぜひ読んでみたいです」

トキコはその大きな出来事を執筆し始める。

母がこの世からいなくなった後も、生活は続いていた。ある朝、20代のトキコ(松岡茉優)はいつものように新聞を取りにいく。ポストにはダイレクトメールや郵便物も入っており、その中に父宛の督促状が混ざっていた。裏返すと、「家賃未納につき至急ご確認ください」という赤文字が。

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母の仏壇に手を合わせている哲也(國村隼)に封筒を見せると、「ああ、これね」となんでもないように封筒を受け取り、仏間を出て行く。

「ねぇ、どういうこと?」

「うん。売ったんだよ、この家」

哲也は、商売でどうしてもまとまったお金が必要になったため、家を売ったと飄々と言う。固まるトキコに「そのうちお前にも説明しようと思ってたんだけどね」と哲也。

「...じゃあ、その家賃っていうのは?」

「うん、ウチが払ってるの。買い手の人がとっても良い人でさ、そのまま住んでていいよっていうからそうしたんだよ」

「そんなこと、今のいままで一言も聞いてないんだけど!」

「だから、言おうと思ってたんだって」

気まずそうにその場を立ち去ろうとする父に、トキコは「お母さんには?」と強い口調で聞く。

「お母さんには、このことちゃんと報告したの?」

「いや、まだ...」

「じゃあ私がするね」

封筒を握りしめて仏間に向かうトキコを、哲也が慌てて制止する。

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「離してよ! ちゃんと報告してあげるから。『お父さんは家族に一言も相談もなくこの家を売ってしまいました。今この家は賃貸で、その家賃も払えなくて困ってます』って!」

哲也はトキコの手から封筒を奪うと、「俺が言うよ。自分で報告する」と仏間へ入って行く。
仏壇に督促状を置き、手を合わせる哲也を、トキコは冷ややかな目で見ていた。

哲也の商売が上手くいかなくなった原因は、精神的番頭ともいえる母が亡くなったことだ。トキコは自分の貯金を家賃や哲也の事業に回したが、もはや焼石に水。
結構な額の家賃を支払うことで家に住み続けることができていたが、やがてそれも難しくなり、この家を出て行くしか道はなくなってしまった。

重苦しい雰囲気が漂うようになった食卓で、哲也が1人で朝食をとっていると、トキコが「もうこれ以上無理だね、この家。出てくしかないよね」と話しかける。哲也は食事の手を止め、皮肉っぽく「もういいよ、こんな金のかかる家」と答えた。

「本当にいいのね?」

「ああ。こんな家いつ出てっても良いと思ってたんだ。清々するよ」

意地を張ってそう言うと、食事を再開する哲也。この頃2人の関係は最悪で、トキコはとても意地悪くなっていた。晩年に家を捨てる...そんな悔しさで歪む父の顔が見たかったほどだ。
一方、このままここにいたら哲也も自分も潰れてしまうので、『どうにかしなければ』とも思っていた。しかし、引っ越しの日取りがおおよそ決まっても、哲也は一向に身の回りの片付けに着手しない。何度頼んでも、どこに引っ越すのかさえ決めなかった。

「お父さん。私、引越し先決まったから」

ある日、部屋着姿でぼんやりとテレビを眺めている哲也に、トキコがそう告げる。

「ああそう。どのあたり?」

「南町田。ここより多少不便になるけど、家賃のことを考えれば妥当かなって」

「ふーん」

「本当にいいのね? 家探し手伝わなくて。なんなら不動産屋さん紹介するけど」

「必要ない」という風に手を振る哲也は、思いきって千葉の館山や、神奈川の三浦など暖かい場所に住もうかなどと呑気に言う。

「この間は都心がいいって言ってたじゃん」

「考えてみたら、都心にこだわる必要ないかなって」

「じゃあ自分でちゃんと探してくださいね。今月末にはここを出ていかないとならないんだからね」

そう念押しするも、その言葉に背を向けるように返事をしない哲也。さらにトキコは、友達が片付けを手伝いに来るので着替えておくよう言うが、哲也は「はーい」と気のない返事を返すだけだった。
部屋のどこを見渡しても、モノ、モノ、モノ...。荷物の山を前にすると全身から力が抜けていく。だが、感傷に浸る時間は残されていなかった。これを全て空にして出ていかなければならない。トキコが四苦八苦していても、哲也はまるで他人事といった風情だった。

気を取り直して荷物の整理をしていると、玄関のチャイムが鳴る。友人の北野(大友花恋)とミナミ(さいとうなり)が手土産を持って手伝いに来てくれたのだ。
2階に上がると、トキコは「基本的には捨てちゃっていいから。何か売れそうなものがあったら置いといて。判断は任せます」と指示を出し、3人でテキパキと作業を進めていく。すると、朝のような部屋着ではなく、お洒落な格好をした哲也がやって来て部屋をのぞく。

「いらっしゃい、悪いね。トキコ、日本航空の半被が出てきたら捨てないで取っておいてくれないかな。ビートルズが来日した時に着てたのと同じものだから、貴重なんだよ。お父さん、ちょっと出かけるから、夜は寿司でも取って食べてもらいなさい」

そう言って出ていった哲也に、トキコは「ったく、外面だけはいいんだから」と忌々しそうに言う。

「喧嘩してるの?」

「そういう問題じゃないの。引っ越しが決まってからずっと自分の殻に閉じこもって、全然協力的じゃない」

「まだ心の整理つけたくないだけかもよ。私たちは荷物の整理をすることで心の整理をつけたりするけど、お父さんはそうしたくないんじゃないかな」

ミナミの言葉に手を止めるトキコ。

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(確かにそうかもしれなかった。あの時の父は目の前の現実に焦点を合わせられないでいた。心の整理をつけるために家を整理する私とは反対に、父は心の整理がつかなかったから荷物を整理できずにいたのだ)

と、ここまで書いてキーボードを打つ手が止まる。トキコはじっと考え込み、ため息をつく。書くべき文章が出てこない...。

後日、喫茶店で今西と向き合って座り、深刻な顔で俯くトキコ。

「うーん。〆切を伸ばすこと自体は構わないんですけど、トキコさんが書けなくなった原因って何なんですかね」

「......」

「お話を聞いた感じだと、"実家を出ることが決まって、引っ越し作業を進めていく中での父親との対立"がメインモチーフですよね。今はどんな場面を書かれていますか?」

「友達2人が荷物整理の手伝いに来てくれたところです」

「そこはもう書き終えたんですか?」

「いや...」

考え込みながら、青ざめていくトキコ。何かに怯えるようにため息をつき、「あの...思い出しました」と言う。

「そういえばその日、思いがけないものが押し入れの中から出て来たんです」

「思いがけないもの?」

「私...ずっとそのことを忘れてました...」

深くうなだれた後、トキコは決意したように「やってみます。そのこと、書いてみます」と顔を上げる。伝票をつかんで立ち上がると、今西が慌てて「支払いは僕の方で」と引き止め、トキコは頭を下げて家へと戻った。

執筆を再開したトキコだが、数行書き終えたところで苦しそうに頭を抱える。書いた文章を削除するが、それだけでは気が済まず、ノートパソコンを思い切り閉じる。そのまま寝室に向かうと、クローゼットの奥から古びた大きな箱を取り出した。それは遺品整理をしていた時に出て来た、母の衣装ケースだった。蓋を開けようとしたその時、どこかから若い女の声が聞こえる。

『ホントに忘れてたの?』

驚いて声がした方を見る。目を凝らすと、窓辺に20代の若い自分が立っている。

「忘れてた」

『酷いな』

「だって、忘れなきゃ前に進めなかったんだもん」

『そりゃそうだろうけど...』

若いトキコが衣装ケースの蓋を少しだけ開けてずらす。

『前に進めた?』

「......え?」

『忘れることで、お父さんのこと許せたの?』

「誤魔化していただけなのかもね。でも、書こうと思ってる。そしたら本当に前に進める気がするの」

微笑みながら、エールを送るように頷く若いトキコ。母の衣装ケースの中に入っていたものとは...。

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6月25日(金)深夜0時12分からは、ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」最終話を放送!

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父について綴ったエッセイ本がついに完成! そして、トキコ(吉田羊)と父(國村隼)は、亡くなった母の出刃包丁を研ぎに行く。二人の間にはいつもと少し違った穏やかな空気が流れている。トキコはラジオの放送時間の変更を提案され悩んでいた。深夜から昼間の帯番組という提案だ。珍しく父に相談をするトキコ。父がトキコに贈った言葉とは...? バラバラだった家族のゆくえは...? 心温まるフィナーレ!

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