テレワークで、がん、脳梗塞、心筋梗塞のリスクが高まるってホント?秋津医師に聞く!

公開: 更新: テレ東プラス

長寿番組「主治医が見つかる診療所」(木曜夜7時58分から)は、いま話題の健康法から、いざというときの医師・病院選びのコツまで、医療に関するさまざまな情報をお届けする知的エンターテイメントバラエティ。

今回、WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」に寄せられたのは、コロナ禍による生活様式の変化でがんなどの病気のリスクが高まるのか知りたいという男性からの質問です。さっそく同番組のレギュラー・秋津壽男医師にお答えいただきました!

テレワークによる"体重増加" と "運動不足"が遠因に

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Q:30代男性です。新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークになり、通勤ラッシュから開放されたかわりに座っている時間が確実に増えました。こうした「長時間座ったまま仕事をすること」が、がん発症リスクを上昇させるというのは本当でしょうか? また、なぜ長時間座ることがいけないのか理由と予防策が知りたいです。

―― 通勤時間がなくなったぶん、体を動かす機会がぐんと減ったという人は多そうです。

「テレワークが本格的に導入されてまだ1年半くらいなので、テレワークとがんの関連性についてまだ正確な情報は出ていないのですが、我々はやはりこの先増加するだろうと思っています。

というのはテレワークによる運動不足、少なくとも通勤に伴う有酸素運動の機会が減ることで、テレワーク太りあるいは自粛太りで体重の増加が推測できるからです。"体重増加" と "運動不足" は明らかにがんの発症リスクを増大させるというエビデンスがあることを考えると、新型コロナウイルス感染症によるテレワークへの移行でがんが増える可能性は十分にあると思います」。

―― 先生は脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まることも心配されていますね。

「体重増加と運動不足の2つは、脳血管、心臓血管系の病気のリスクでもあります。海外のレポートで1日のうちの座っている時間と寿命を比較した研究があって、座っている時間が長ければ長いほど脳・心臓疾患が多く、寿命が短いという報告があります。もちろん、1日10時間デスクワークをしているけれど、そのあと3時間はジムに行っているような人は別です。たいていは座っている時間が長い人=運動不足の人で、しかも体重が増加していることが多いんです」。

通勤時間分の散歩で元の運動量をキープしよう

doctor_20210623_02.jpg画像素材:PIXTA

―― 国立がん研究センターの研究(※)でも、仕事中に座っている時間の長さは、がんの発症リスクが高いことと関連する可能性があると報告されているようです。

「運動不足で肥満になればすい臓がんのリスクを高めますし、テレワークになったことでアルコール量が増えている人も多そうですよね。お酒の強い人なら昼間にビールを飲んでも支障なく仕事はできるでしょうし、外に飲みに行きたくてもお店自体が時短営業であったり、お酒の提供ができなかったりするのなら家で早くから飲み始めたいということで、ますます家飲みが増えてしまうのでしょう。実際、血液検査でγ-GTP(ガンマ‐グルタミルトランスペプチダーゼ/肝臓の解毒作用に関係している酵素)は、が明らかに高くなっている人も多くなってきています。

統計調査での結果は、アンケートなどで集められた習慣や行動パターンを統計的に処理した中で有意差(偶然起きたとは考えづらい差)が見つかったということであり、もちろん関連があるのは事実です。ただ現在のところ、その原因が何かというところまではっきりとわかっていなかったりすることも多いのです」。

―― さまざまなところから発信される情報の中にはあまり有益ではないものも混じっていそうですが、情報を受け取る側として何か注意しておきたいことはありますか。

「たとえば、がんになった人が自分のがんの治療法を探すなど、緊急性があるものでなければ、新しい情報は半年や1年待ってから信用してもいいかもしれませんね。その間に誤った情報は淘汰されていきますから。

この相談に関しても、テレワークで体を動かさないのは絶対によくないことは間違いありません。がんだけでなく、足腰など運動器の健康(ロコモティブシンドローム)、心臓病、糖尿病、高血圧、すべてにおいてよくないので、がんの発症リスクを心配するなら運動したほうがいいでしょう。少なくても通勤相当の運動は毎日するといいですね。いままで通勤で朝夕15分歩いていた人は、用事がなくてもそのぶんだけ近所を散歩してみる。電車で30分以上立ちっぱなしだった人は家の中でも立って仕事をするとか、テレビドラマ、アニメの1話分は立って観るなど工夫の仕方はいろいろです。環境が変わってもなるべく元の運動習慣に近づけるようにしましょう。

最後に、心配をするということは気づいたということです。気がついた人は実行に移せば健康になれますよ」。

―― 秋津先生、ありがとうございました。

(※)Cancer Sci. 2020 Mar;111(3):974-984.
国立がん研究センター・社会と健康研究センター・予防研究グループが実施し、医学誌『Cancer Science』に掲載・発表された多目的コホート研究(JPHC Study)。職業性座位時間(仕事中に座っている時間)が長いほど、がん罹患リスクが高くなる傾向があることが示された。(https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8485.html

【秋津壽男医師 プロフィール】
1954年和歌山県生まれ
1977年大阪大学工学部発酵工学科卒業 1986年和歌山県立医科大学卒業
1998年秋津医院を開業
日本内科学会認定総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医
日本医師会公認スポーツドクター 日本体育協会公認スポーツドクター
日本禁煙学会認定禁煙専門医
著書に「本当に怖いのは、第三の脂肪」(幻冬舎)、「薬を使わずに『生活習慣病』とサヨナラする法: 医師が教える『自己治癒力を高める』コツ」(三笠書房)、「こわい病気大全」(ダイアモンド社)など。

※この記事は秋津壽男医師の見解に基づいて作成したものです。

今回お話を伺った秋津先生も出演する主治医が見つかる診療所(6月24日木曜夜7時58分)は【体の不調を主治医が診断!芸能人お悩み解決SP】!

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今回は「体の不調を主治医が診断!芸能人お悩み解決SP」と題し、ゲスト4人の体の隅々までを徹底検査! 私生活から判明した、芸能人の体の悩みや不調の原因とは? 他にも栄養のプロが厳選する「焼肉食べるならコレチョイス!夏に向けて今の時期食べて欲しい焼肉」をご紹介。正しく選べば、脂肪を燃やして美肌効果も期待できるオススメの焼肉を大公開。さらに、梅雨に得する裏ワザ5連発! あの夏野菜の保存法や2日目のカレーの裏ワザもお届け。どうぞお楽しみに!

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