アジフライに魅了されたイタリア人女性!名店が美味しく作る秘密を伝授:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時~)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は、日本食に欠かせない"海の幸"を愛する外国人の方を紹介する「ニッポンの味(アジ)を愛する外国人スペシャル」をお届けします。

3店で作り方を学び、独自のアレンジで進化したアジフライ

紹介するのは、イタリア北部の街・ヴィチェンツァに住む、アジフライを愛するキャーラさん。

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ニッポンが誇る揚げ物の定番、アジフライ。1年中食べられるアジですが、実は最も脂が乗る初夏から夏が旬。ニッポンでは縄文時代から食され、味の良さからアジという名前に。さらに「美味しくて参った」ことから、"魚偏に参る"という字があてられ、「鯵」の漢字ができたともいわれています。
明治時代の洋食ブームでフライが人気となりましたが、高級とされていた洋食とは違い、安いアジを使って家庭などで普及したことから、アジフライは和食としての地位を確立していきました。

ニッポンの料理が大好きで、和食のイベントを手がけているキャーラさんは、10年前、ニッポンのアニメ映画で観たアジフライを揚げるシーンに魅了されて作るように。実はイタリアでアジはあまり人気がなく、お店で見かけることも少ないそう。それでも近年は、栄養価が高く値段もお手頃なアジが徐々に人気になっているといいます。

アジを調達し、早速調理を開始! さばくのが難しいというキャーラさん、お腹から開いて、身が繋がった状態で骨を取ろうとしますが......穴が開いてしまいました。
続いて取り出したのはニッポンのパン粉。乾燥したパンやクラッカーなどを細かく砕いて作る海外のパン粉に対し、ニッポンのパン粉は食パンをほぐして作るしっとりとした生パン粉と、それを乾燥させたドライパン粉があります。油切れの良さや食感の軽さから世界でも大人気で、ミラノの名物カツレツにも、ニッポンのパン粉を使うお店が増えているそう。

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小麦粉と卵をつけてからパン粉をまぶし、さばいた時に開いてしまった穴をカバーするためにさらにもう一度卵とパン粉をつけます。それをひまわり油で、しっかり4分揚げるのがこだわり。この日は10匹揚げ、しょう油とバーベキューソースを合わせた手作りソースと、みじん切りにしたセロリやきゅうり、ニッポンのマヨネーズと寿司酢で作った自家製のタルタルソースでいただきます。
アジフライを頬張り、「おいしっしも!」とキャーラさん。「おいしっしも」とは、「おいしい」のイタリア語「ボニッシモ」と日本語を掛け合わせた、キャーラさんの造語。

「ニッポンの伝統、アジフライがイタリアにも広まって欲しいです」というキャーラさんを、3年前、念願のニッポンにご招待!

キャーラさんたっての希望で向かったのは、東京・中央区にある「京ばし松輪」。こちらのアジフライは食感がふわふわなのだそう。「揚げ物を柔らかい食感にするのはとても難しいので、どうやって作るのか知りたいです」。
開店20分前にも関わらず、店先にはすでに行列が! 全国からお客さんが集まり、90人並んだこともあるそう。

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ランチはアジフライ定食のみで限定70食。添えられているのは大根おろしと生わさびですが、店長の親戚が作った生の柚子胡椒で食べるのが通なのだそう。脂が乗ったアジなので、あっさりと醤油でいただきます。念願のアジフライを食べたキャーラさんは、「ボニッシモ!(とても美味しい)」と笑顔に。

お昼の営業後、店主の田中平八郎さんにアジフライの作り方を教えていただきます。「京ばし松輪」のアジフライの美味しさの秘密は、究極の鮮度。千葉・館山にある専用の生け簀で釣りたてのアジを落ち着かせ、さらに数日間餌を与えない「活かし込み」をして身に脂を行き渡らせます。最高の状態に仕上がったアジを専門のスタッフがその場でさばき、毎日お店に直送。これが、美味しい柔らかな身になる秘密なのです。

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アジフライをさらに美味しくする秘密を特別に教えていただきます。まずはさばき方。アジフライにする際、必要ない部分は背びれ、腹びれ、そして骨。これらを鮮度を落とさないように素早くまとめてさばくには、背開きにすることが重要だそう。腹開きにしていたキャーラさんは「根本的に大きな間違いをしていました」と、メモを取ります。
さらに、おろしたての生姜汁をかけて臭みを消し、冷蔵庫で凍らないギリギリの温度を保ち、一晩寝かせて熟成。この下ごしらえで旨味が増し、水分がほどよく抜けて身にふっくらと厚みが出るのです。

揚げ方のポイントは、身の方から先に油に入れること。皮から入れると、皮が熱で引っ張られて丸まってしまいます。180度で2分揚げ、衣に色がつき始めたら油から引きあげますが、この時の身はまだ半生。お客さんに出す間に、余熱でふっくらと仕上がるのです。
鮮度が良いアジを使っているからこそなせる技。揚げたてを試食させてもらい「おいしっしも!」と大絶賛のキャーラさん、田中さんと熱いハグを交わしました。

続いて向かったのは、東京・目黒区にある「割烹 すずき」。「ミシュランガイド東京」で、13年連続、一つ星を獲得したお店です。この道50年、寿司職人として腕を磨き、魚料理に定評のある店主の鈴木好次さんが30年試行錯誤してできた、究極のアジフライの作り方を見せていただきます。

使うのは、自ら買い付ける一本釣りのマアジ。日本近海にはおよそ60種類のアジが生息しており、同じマアジでも全体的に黒っぽいセグロアジより、黄色いキアジの方がより脂が乗っているそう。また、目が透き通っていて、張りがあるものの方が鮮度が高いといいます。

そして、ここからの丁寧な仕事が、一流料理人の真骨頂。余分な水分と臭みを抜くため、多めに塩を振り、塩分が入りすぎないよう10分ほどで流して酢にくぐらせます。「これをやることによって、ふわっとした美味しいアジフライができる」と鈴木さん。

小麦粉をつける際は、なるべく余分な粉をつけないように刷毛を使います。キャーラさんは「初めて知る技です」と興味津々。パン粉は、サクサクでカリッとした2つの食感を出すため、生とドライのパン粉を半々に混ぜて使用。そこに味と香ばしさを加えるため、隠し味として粉チーズを入れます。「パルメザンはイタリアのチーズの中でも特に成分が凝縮されていて、味が濃厚で旨味も多いチーズなんです。なのに、やってみようと思ったこともありませんでした」とキャーラさん。

パン粉を優しく乗せるようにまぶし、しつこさが残りにくい米油の中へ。170度の油で2分ほどあまり触らずに揚げたところで一旦油から引きあげ、身から出る余分な水分を衣に移し、旨味だけを中に閉じ込めます。30秒ほど経ってから再び油の中へ。衣に水分が浮き出ているため、最初に揚げた時よりも音が大きくなります。

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揚げたてを粗塩でいただいたキャーラさんは「魚自体の旨味がダイレクトに感じられます」と感想を。さらに、割烹ならではの食べ方も。レモン汁に白味噌と卵黄、白醤油とみりんを加え、アクセントに練り辛子と米油を入れます。日本料理で使われる黄身酢を、酢の代わりにレモン汁でさっぱりと仕上げたソース。「どれほど美味しいか言葉になりません」。

「アジフライはとてもシンプルなものなのに、どうしてこんなに仕上がりに差が出るんですか?」と質問すると、「料理って素材そのもの。それをあまりいじらず、シンプルに出すことが一番大切なんじゃないかと僕は思います」と鈴木さん。その気さくな人柄と、素材に対する謙虚さに感銘を受けたキャーラさん、鈴木さんと固い握手を交わしました。

次に向かったのは大阪にある「日本酒 弘大(ひろしだい)」。徹底した下処理をすることで、他では食べられない絶品の半生アジフライを出すお店です。お店の名前は、オーナー・宮部弘さんと娘・由衣さんの夫・大さんからとったもの。

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早速、アジフライ作りを見せていただきます。使うのは、高知の中央市場から直送された、体長50センチのマアジ。尾びれを切り落とした箇所にホースをさして水を流し、血を抜いていきます。お店で最も大切にしているのが、この下準備。締めてから時間が経つと、血が脂質と反応して臭いの原因に。血抜きをすることで、臭いのもとを出さず、長く鮮度を保てるといいます。

血抜きを初めて見たキャーラさんも、この作業を体験。15分ほどかけて丁寧に血を抜き切ると、普通のアジの身よりも白っぽい色に。この色の違いこそ、血抜きができた証拠です。

ビニールで丁寧に包んで空気を抜き、真空のような状態にします。こうすることで、脂が乗ったアジなら一週間ほど日持ちするそう。血抜きが重要なもう一つの理由は、長期熟成が可能になること。腐りやすく熟成させるのが難しい魚も、この下処理のおかげで熟成でき、旨味がぐんと増すのです。お店では、扱う全ての魚に血抜きを施しています。

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粗めの生パン粉をつけ、揚げ時間はわずか50秒。血抜きで鮮度が保てるアジは半生で提供します。鳥取の造り酒屋の奈良漬を刻み、マヨネーズ、米酢、ゆず果汁などを加えたタルタルソースをたっぷりと添えて......さらにウスターソースも! 「中は刺身のようですが濃厚な味わいがあって、外側のフライと二重で美味しさが楽しめます」とキャーラさん。

別れの時。弘さんから、お店で使っているぐいのみや、作りたてのタルタルソース、血抜きの道具などをいただきました。血抜き用のホースは、大さんがイタリアの蛇口を調べて、合うものを用意してくれたそう。「グラッチェ」と皆さんに感謝しつつ、最後は熱いハグを交わしました。

あれから3年...。キャーラさんのビデオレターを、お世話になった皆さんの元へ届けます。

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帰国後、キャーラさんが書いたアジフライの魅力についてのネット記事が大反響! ミラノの日本領事館から連絡があり、ニッポンでの体験がニュースレターに掲載されたそう。そして、イタリアで2万人が参加する「ジャパンフェスティバル」、3万人が参加する「ミラノ寿司フェスティバル」に招待され、アジフライをテーマにした講演をするなど、イタリアではちょっとした有名人になっていました。最近は、オンラインイベントでもアジフライの魅力を伝えています。

キャーラさんの影響で、パートナーのニコーラさんもアジフライ愛に目覚めていました。「帰国してから毎日ニッポンで撮ってきた写真を見せてきて、アジフライの美味しさを自慢されて...我慢できなくなりました」。ニッポンのアジフライが食べたいと1年間仕事を掛け持ちして貯金を続け、2019年に2人で来日。「京ばし松輪」でランチのふわふわのアジフライ定食を楽しみ、夜には「割烹 すずき」を訪れました。日程と予算の都合で、大阪の「日本酒 弘大」へ行けなかったのが心残りだといいます。

進化したキャーラさんのアジフライを見ていただくことに。アジが旬を迎える夏には、週に一度アジフライを揚げているそう。「日本酒 弘大」でいただいた血抜き用ホースも使っています。この日はどうしてもアジが手に入らず、タラで代用。以前は腹開きにしていましたが、今は「京ばし松輪」で教わった背開きを実践。「きれいですよ、何の無駄もない」と田中さんも感心。すりおろした生姜をかけて冷蔵庫で一晩寝かせ、身を柔らかくしてから、「割烹 すずき」のように小麦粉を刷毛でつけます。「教えたことをきちっと守ってくれているのは、やっぱり嬉しいね!」と鈴木さん。

続いてつけるのはパン粉。鈴木さんは粉チーズを入れていましたが、キャーラさんは風味づけに、チーズ同様旨味が強い発酵食品である鰹節を加えます。このアレンジを見て、「うまそう!」と「日本酒 弘大」の大さん。田中さんと鈴木さんも試してみたいと話します。
衣をつけて二度揚げし、アジフライならぬタラフライが完成!

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そしてもう一品、「日本酒 弘大」風マグロのレアフライも作ります。添えるのは、お店で教わったタルタルソース。奈良漬の代わりに小玉ねぎの酢漬とピクルスを使っています。さらに、「京ばし松輪」の柚子胡椒を参考に、唐辛子とレモンの皮で作ったレモン胡椒も!

「おいしっしも!」とフライに舌鼓を打つキャーラさんとニコーラさん。ビデオレターを観て、「教わることが多いですよね」と田中さん。弘さんも「キャーラタルタルとして店で出てるかも」とコメント。鈴木さんは3年前を思い出し、「胸に熱いものを感じる。目の前でもう一回作りたい」と振り返りました。

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