父と母を同時介護する過酷な日々...1人で抱えることに限界を感じたトキコは苦渋の決断をする...:生きるとか死ぬとか父親とか

公開: 更新: テレ東プラス

6月18日(金)深夜0時12分からは、ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」第11話を放送! 原作は、ラジオパーソナリティー・コラムニスト・作詞家と多彩な顔をもち、女性からの圧倒的な支持を集める"独身のカリスマ"ことジェーン・スーが、自身の家族の出来事と思い出を描いたリアルストーリー。主人公のモデルはジェーン・スー自身であり、そんな主人公を吉田羊が演じている。

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主人公・蒲原トキコ(吉田)は20年前に母を亡くし、今では父の蒲原哲也(國村隼)がたった一人の肉親。愛嬌はあるが破天荒な70代の父、独身で勝気な40半ばの娘。ひとたび顔を合わせればギクシャクし一度は絶縁寸前までいった二人だが、今では時々外食しながら話をする関係になっている。そんなある日、トキコは父についてのエッセイを連載することになった。ネタ集めのため父に会うたびいろいろな家族の思い出を聞く。母との出会い、全財産の喪失、そして他の女性の影...。父への愛憎と家族の表裏を描く、普遍にして特別な家族の物語だ。

「テレ東プラス」では、第10話「母親とか懇願とか」の内容をプレイバック。

亡き母(富田靖子)のことについてもありのままを書こうと決意したトキコ。哲也とトキコにとって、どこか信仰の対象のようになっていた母について、哲也は「悪い思い出はひとつもないし、頭にきたことも嫌だと思ったことも一度もないよ」と語る。

「嫌な面や、悪いところを暴くわけじゃないの。人間として苦しんだり、弱いところをさらけ出してくれた、そういうお母さんを書こうと思ってるの。だから今日は、今まで話してこなかったようなことも話したいの」

「...分かった」

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哲也がB型肝炎を患うと同時に、母にがんが見つかり、20代のトキコ(松岡茉優)は2人を同時に介護する過酷な日々を送っていた。母の手術が無事終わったことを告げると、安堵しベッドから起き上がる哲也。トキコは持参した弁当を広げ、水筒の味噌汁をカップに移し、手渡そうとする。だがその時、哲也が泣いていることに気づく。顔を背けるようにして泣き続ける哲也に、「大丈夫だって」と声をかけるトキコ。

母はやがて一般病棟に移った。しかし、術後の回復に時間を要したため、トキコは勤め始めたばかりの会社を休職。母の介護のため、病院に寝泊まりすることが増えた。
一日も早く家に帰ってきて欲しい...母の回復を願うほど、気ばかり焦る。
母の病室で、薬の副作用でぼーっとしている父の様子を伝え「肝臓の方は順調みたい」と言うと、安心したように微笑む母。

「体調良くなったら、旅行にでも行きたいな」

「行けるよきっと、一緒に行こう。どこに行きたい?」

「イタリアかなぁ」

「いいね。お母さん大好きだもんね」

「すぐに行くのが無理だったら、せめて素敵なイタリア映画を見たいわ」

「そんなのお安い御用」とビデオデッキを持ち込むことを提案するが、母は「この画面じゃね」と病室に置かれた小さなブラウン管式のモニターに目をやる。

「やっぱり映画館の大きなスクリーンで見たいわ」

「そっか。どんな映画が観たい?」

「いろいろ観たいけど、今の気分は『ひまわり』かな。恋に落ちたソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニがナポリで幸せな結婚生活を始めるんだけど、戦争が始まってマストロヤンニがソ連に送られるの。戦争が終わっても夫は復員してこないし、戦死したという情報もないから、ソフィア・ローレンはたった一人でソ連に行って、言葉も通じない中でマストロヤンニを捜すのね」

途中、母は口が渇くらしく、水差しで口を潤す。

「そしたら、やむを得ない事情がいろいろあって、夫はソ連で新しい家庭を作っているの。若いロシア人女性と結婚して、小さな子どもも生まれてて...」

「ふーん、悲しい映画?」

「そうね。ものすごく悲しい映画なんだけど、ソフィア・ローレンはほとんど泣かないの。お母さん、そこが好きなのよ。トキちゃんも機会があったら観てみてね」

頷くトキコ。母は病室の窓を眺めながら、「このくらいのスクリーン、いいね」と嬉しそうに笑う。

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その日の深夜。母のベッドの横に簡易ベッドが置かれ、眠っているトキコ。母は目を覚ましてトキコに呼びかけるが、熟睡しているトキコは起きない。体を起こしてもう一度名前を呼ぶと、眠そうに目を開けた。

「トイレに行きたいんだけど...」

申し訳なさそうな母をトイレに連れていき、母は歩行器でベッドに戻ろうとするが、膝から床に倒れてしまう。

「大丈夫!?ごめん!」

トキコの眠気が一気に覚める。

「大丈夫、足に力が入らなくて」

怒るでもなく、申し訳なさそうにする母。

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一方、別の病院に入院している哲也は、パジャマ姿のまま病室を出てふらふらと歩いていた。魂が抜けたようなその姿に、当直の看護師が異変を感じて追いかける。背後から声を掛けるも、無反応で屋上への階段を昇る哲也...。
屋上に到着すると金網の柵をよじ登ろうとし、看護師がそれを必死に引きずり下ろした。

同じ頃、トキコは母をベッドに寝かせていた。

「ごめんね、寝ぼけてた」

「ううん、お母さんの方こそ。寝てばっかりだから足腰弱ってて」

深夜にも関わらずトキコの携帯が鳴る。発信元は父の病院。父が自殺未遂をしたと聞き、絶句するトキコ。

翌日。哲也の病院に向かったトキコは、医師から「薬の副作用だと考えられるが、ここまで状態が悪化したのはあまり例がない」と告げられる。

「本当に父は死のうとしたんですか?」

「ええ。単なる徘徊かと思ったのですが、何か嫌な予感がして後をついて行ったら...」

哲也を止めてくれた看護師からそう言われ、トキコは「本当にご迷惑をおかけしてすみませんでした」と頭を下げる。

「今は誰かが必ず側にいるようにしてあげてほしいんです」

「それは...病院に泊まり込んだ方が良いということでしょうか」

「ええ。もちろん我々も万全の態勢で看護にあたるつもりですが、看護師が目を離した隙に、ということもありますので...お願いできますか?」

「分かりました...」

(母が全力で死から遠ざかろうとしている最中に、父は自ら死へと歩みを進めようとしていた。身体が半分に引き裂かれるような思いだが、私はどちらの手を取ればいいのだろうか...。別々の場所にいる母と父を同時に看病することはできない)

医師の言葉に頭を巡らせながら病室に向かうと、投薬の影響か哲也はぐっすり眠っていた。トキコは携帯電話を取り出すと、母の妹である叔母に電話をかける。なかなか言葉が出ないトキコに、叔母は「姉さんの容態、良くないの?」と心配する。

「ううん、順調だよ」

「そう。なんか声が暗いけど、大丈夫?」

「...うん、大丈夫だよ。それより、今度来る時にカヌレ買ってきてくれない? お母さんが食べたがってるんだ」

「分かった。週末には行けると思うから」

「うん、じゃあよろしくお願いします」

そう言って電話を切ると、大きくため息をつく。母の姉妹には交代で母の看病を頼んでおり、哲也の付き添いまで頼むのは忍びなかった。他に誰か頼れる人はいないだろうか...頭の中で哲也の知り合いの顔を思い浮かべる。

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トキコの頭にある決意が浮かんだ。ベッドテーブルに置かれたままの哲也の携帯電話を手に取る。ロックはかかっておらず、発信履歴を見ると、ある人物の名前が何度も記録されていた。逡巡したあげく、トキコが電話をかけた相手とは...。

6月18日(金)深夜0時12分からは、ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」第11話を放送!

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母が亡くなった後、父(國村隼)の商売は上手くいかず、ある日、家賃の催促状が届く。父はトキコ(松岡茉優)に黙って家を手放していたのだ。二人の関係はどんどん悪化していく。引っ越しのための片付けに、トキコは友人の北野(大友花恋)とミナミ(さいとうなり)を呼んだ。着々と作業をする中、3人は母の「秘密」を見つけてしまう。そして、現代のトキコ(吉田羊)はこの話をどうしても書き進めることができなかったが...。

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