「切り絵」に魅了されたブルガリア人女性が番組史上最大の進化!さらに、壮大な新たな目標も!:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

切り絵の魅力を世界に広め、ブルガリアとニッポンの文化をつなぐ大きな架け橋に

続いて紹介するのは、ブルガリアに住むアネリアさん。

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アネリアさんが魅了されたニッポンの文化は、「切り絵」。奈良時代に神事の場や神棚を飾るキリコが始まりとされ、和紙や伊勢型紙と合わせることで独自に発展しました。色紙を使ったものや照明を入れ独自の世界観を表現したものなど作品のスタイルは実に様々。切り絵を始めて10年…よく切れるカッターをニッポンから取り寄せて作っているという作品が、こちら。

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アネリアさんの作品は、ある日本人の影響を受けていました。「特に好きな作家は渡部弘さんで、いつも真似しています」。
6年前に亡くなった切り絵作家・渡部弘さんは、ニッポンの四季とどこか懐かしい日常風景を切り絵で表現。偶然インターネットで見つけて心を奪われたそう。
そんなアネリアさんを、1年3ヵ月前、ニッポンにご招待!

向かったのは滋賀県米原、山合にある曲谷(まがたに)集落。切り絵作家・早川鉄兵さんが迎えてくださいました。早川さんの作品は、自然をテーマに“体験できる切り絵”として、国内はもちろん海外からも注目を集めています。

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自宅は築100年の古民家で、10年前に切り絵製作のために家族で移住。奥様と長女・しずくちゃんの3人で暮らしています。

自然豊かな地で生まれる早川さんの作品には、自然のモチーフがあふれています。早速、切り絵作りを見せていただくことに。用意した紙を半分に折ると、下絵を書かず、いきなりカッターを入れていきます。切り始めてわずか10分、開いてみると…キツネの顔に!

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よく見ると、耳と目の上に小鳥が、さらに目の斜め上にリスの姿があります。「キツネの中に自然界が表現されています」と驚くアネリアさんに、「山で生きていこうと思ったら、キツネだけでは絶対に生きていけない。でも大事なのはそういう難しいことじゃなくてかわいいかどうか」と早川さん。早川さんの作品は左右対称がひとつの特徴で、3歳の頃、母親に教わった切り方を続けているそう。

さらに、渾身の作品を見せていただくために向かったのは、創建およそ400年の大通寺。お寺には、江戸時代後期、京都画壇で活躍した岸駒(がんく)のふすま絵を始め数々の貴重な作品があり、建物の多くが国の重要文化財に指定されています。早川さんの切り絵は、そんなお寺の本堂正面にありました。
テーマは命の循環。障子18枚分に親鸞(しんらん)聖人を中心にした様々な動物たちが描かれています。製作に丸1年費やした大作。

大通寺の僧侶・永井貴宗さんが、「よかったら中に入りますか?」と本堂の中へ招いてくださいました。中から切り絵を見てみると、切り絵が日の光で浮かび上がり、幻想的な風景に。

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神々しいほどの切り絵に圧倒されたアネリアさんは「心が満たされます。ずっと憧れていたニッポンです」と涙がこぼれます。

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次に永井さんが案内してくださったのは、144畳の大広間。実はここで早川さんの個展が行われる予定で、永井さんから「もしよければ、アネリアさんの作品も一緒に展示するのはいかがでしょう」との嬉しいご提案が。早川さんからも「一緒にオリジナルの作品を考えて頑張りましょう」というお言葉をいただき、アネリアさん、初めてのオリジナル作品作りに挑戦することに。帰国日が決まっているため、製作期間は1週間です。

翌朝。「今日は作品のアイデアを膨らませるため、山に行きます」と早川さん。作品を作る前は、必ず近くの山に行くとのこと。「元気に声を出していかないと熊がでるかも」と教えてくれた早川さん、時々「ア~」と大きな声を上げながら山の奥へと進んで行きます。険しい山道を歩くこと30分。幸いクマには遭遇せず、目的地の「五色の滝」に到着。そこには自然が織りなす造形美がありました。

水辺には鹿の足跡も。「動物たちが森の中でどうやって暮らしてどうやって遊んでいるのか…山に入るとそういうアイデアが浮かんでくる」と早川さん。アネリアさんも、早速作品のアイデアが浮かんだようです。

続いて早川さんのアトリエへ。かつて小学校だった建物を借りていて、家に入りきらない大きな作品が保管されていました。作品を見せてもらった後は、いよいよ製作開始! アネリアさんが考えた作品のテーマは「ニッポンとブルガリアの動物の共演」。
「早川さんの作品に影響を受けたので、ひとつの作品に四枚の切り絵を貼り付けたいです」。アネリアさんが感銘を受けた早川さんの「行灯」がこちら!

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切り絵が一面ずつ描かれ、四面すべてが線でつながっている難易度の高い作品です。

まず、下絵を早川さんに見ていただくと、「オオカミはバランス的に黒がいいと思う。どこを黒にするか白にするかが結構重要」とのアドバイスが。同じモチーフでも、白い部分が多いと明るく、黒い部分が多いと重厚になるので、そのバランスがとても大事。

オリジナル作品を作ったことがないアネリアさんは、下絵を描くのに四苦八苦。あっという間に夜になってしまいました。片付けをしながら「これは日本製のカッターで、ブルガリアでは買うことができません。切れ味が全く違うんです」と愛用のカッターを見せると、「僕も同じ刃ですね」と早川さん。アネリアさんは、ニッポンに行く友人にこの刃を渡し「必ず同じものを買ってきて!」とお願いしているそう。

翌日、早川さんの仕事の都合により、一度お別れすることに。

向かったのは、東京・阿佐ヶ谷。切り絵アーティスト・福井利佐さんを訪ねます。福井さんは中島美嘉さんのアルバムジャケットや桐野夏生さんの小説で表紙を担当。世界各国で個展を開くニッポンを代表する切り絵アーティストの一人です。

作品を見せていただくと、インターネットで知っていたものの、作者がわからなくてずっと気になっていた作品だったようで大感激。鯉が餌に群がる様子を描いたこちらの切り絵は色紙を使っていますが、黒の輪郭は一枚の紙から切り抜いたもの。

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せっかくなのでアネリアさんの作品も見ていただくと、「なるほど。線はきれいに切れていますね」と福井さん。アネリアさんは「私はいつもお手本に沿って切っているだけなので、オリジナル作品が一枚もないんです。“つなぎ”に自信がないんです」と悩みを打ち明けます。
「つなぎ」と呼ばれる切り絵ならではの手法は、全てのパーツを一枚の紙で完成させるために必要な技。そこで福井さんが取り出したのは、「はる」と縦に書かれた紙。離れている二文字をくっつけるため、福井さんが描いた下絵はこのような形に。

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「春という文字のイメージから蝶々やそよ風のような線で表しています」と福井さん。言葉のイメージからアクセントを加えることで、オリジナリティあふれる立派な作品になるといいます。
「意味を持たせてパーツを繋げるのが大事なんですね。私も挑戦したいです」。アネリアさん、苦手な“つなぎ”に挑戦することに。選んだテーマは「あき」。作業開始から2時間…出来上がった作品がこちら!

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アネリアさん初のオリジナル作品です。秋を表す楓を散りばめることでつなぎに成功。さらに文字に切り込みを入れ、枝を表現しています。福井さんからも「キレがある」と褒めていただきました。「つなぎが苦手だと思っていましたが、考えるのが楽しくなってきました」。今後の作品に活かせる大きな収穫があったようです。

次に向かったのは、千葉県の住宅街。迎えてくださったのは、アネリアさんが憧れていた切り絵アーティスト・福田理代さん。アトリエを見せていただいたアネリアさんは「全部知っている作品です!」と大興奮。福田さんの作品は、紙を切って作ったとは思えない細かい描写が特徴で、SNSを通じて世界中に知れ渡っているそう。こちらは代表作の「Octopus」。

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製作期間は2ヵ月で、お値段は約160万円。「細かい部分はまさに神業ですね」と話すアネリアさんに、福田さんも「ありがとうございます。よく見ていただいてすごくうれしい」と笑顔に。普通のコピー用紙を使い、耐久性の限界に挑戦したという作品は、一番細い部分はわずか0.2mm!1円玉の大きさの中に63本もの線があります。

一体どうやって切るのか…見せていただくと、カッターの刃先を使い、白い部分だけを切り落としていきます。アネリアさんは、「ものすごい集中力です! 老眼にならないことを祈っています。私はすでに老眼なので…(笑)」と感動していました。

ホテルに戻ったアネリアさんは、個展に出す作品作りを再開。「素晴らしい先生たちに出会い、この旅は自分が成長するチャンスだと思うので絶対にやり抜きます!」。下絵で姿を現したのは、ブルガリアの国章にも描かれているライオン。3日間、東京観光を全てキャンセルして作業を続けました。出来上がった切り絵を持って、早川さんのアトリエに向かいます。

「おー! いいですね! すごい。この短い時間ですごくいいものができたと思います」と認めていただいた作品がこちら!

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テーマは「ニッポンとブルガリアの動物たち」ライオンのたてがみを葉っぱにすることで、自然な形で他の動物とつながっています。「これで行灯はできますか?」と早川さんに尋ねると、「もちろん! 十分作れます」と力強い答えが返ってきました。
さらにもう一工夫。アネリアさんが取り出したのは、色がついた和紙。これで行灯をより華やかに演出するとのこと。「見ていて面白いですよね。僕も勉強になります」と早川さん。

完成した行灯を持って大通寺へ。残念ながら新型コロナの影響で展示会は中止になってしまいましたが、お世話になったみなさんにお披露目します。行灯に光を灯した瞬間、見ていた皆さんから「お~」と感嘆の声が。

白い光を放つアネリアさんの切り絵行灯。
ライオンの目にはブルガリアの伝統的刺繍模様を和紙で表現。山の中で足跡を見つけた鹿は、伊吹山に生える秋の楓とともに姿を見せ、絶滅してしまったニホンオオカミをヨーロッパオオカミと仲良く並べました。ニッポンとブルガリアの動物たちを切り絵で見事に表現しています。

「私がニッポンにきた証をこのような形で残せたのは幸せです。早川さんに感謝しています」と伝えると、早川さんは「アネリアさんが頑張ったからできました。これからもっともっとオリジナルを作っていってくれたら、この先が楽しみだなと思いました」と心強いエールを送ってくれました。

別れの時。アネリアさんは大通寺のみなさんにブルガリアの名産・バラの香水を、しずくちゃんにはお菓子をプレゼント。早川さんからは、ご自身の切り絵の本と、本製カッターの刃800枚をプレゼントしていただきました。

あれから1年3ヵ月。アネリアさんからのビデオレターを、早川さん、福井さん、福田さんの元へ届けます。
「ブルガリアのアネリアです! みなさんお元気ですか? 一緒に過ごした長い時間は、私の切り絵人生に大きな影響を与えてくれました」

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福井さんから教わった「つなぎ」の技は、作品を作る度、使うように心がけているとのこと。
帰国後は、大きな作品を作るため、仕事場と兼用だった机を切り絵専用にしていました。

みなさんからいただいた作品はすべて飾られており、作品作りのインスピレーションになっているそう。また、早川さんを見習って週に1度は山に行き、本物の自然と触れ合って刺激をもらっているといいます。「早川さんからいただいたカッターの刃800枚ですが…この1年でほとんど使い切ってしまいました」。わずか1年で、なんと100作品以上も製作していました。
早川さんは「俺もさすがに、この1年で100作品は作ってないよね」と驚きを隠せません。

ニッポンの切り絵文化を世界に広めようと、昨年オンラインショップを開設。アメリカやヨーロッパからも注文が来るようになったそうで、今は作品作りが間に合わず、もっとスピードをあげるように努力をしているといいます。

意外なところからオファーも! 「小野寺マヤノさんというギャラリーのオーナーから連絡があり、作品をニッポンに送ってほしいという依頼がありました」。なんとニッポンから製作依頼が舞い込んだそう。東京にあるギャラリーに、アネリアさんの作品が飾られていました。

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小野寺さんは「アネリアさんは、全体的にバランスをとって綺麗な作品を作ってくれる」と絶賛。
昨年も「駅」をテーマにした2つの切り絵を出展。現在は鳥取県で展示され、これから日本各地を巡っていくそう。早川さんは「もう完全にプロじゃないですか」とビックリ。

さらにアネリアさんは、自身が経験した旅を紹介するバーチャルツアーを企画。訪れた日本各地の様子を写真で振り返る生配信を、たった1人で約2時間やりきったそう。
「配信は大成功でした。ライブで2000人が視聴し、アーカイブ映像は47000回再生されました。参加者の多くが切り絵に興味を持ったので、これはチャンスと思い、すぐにワークショップを開きました。私のことを“切り絵の先生”呼ぶ人もいて、少し恥ずかしいですが、誇らしくもあります」。

今手掛けている新作は、早川さんに教えていただいたミラー技術、福井さんに教えていただいたつなぎ、福田さんに教えていただいた極細の線、すべての技術を駆使したもの。

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「ようやく完成しました。背景は濃い青にして夜空をイメージしました。これで作品が際立ちます。漢字も美しい文字で気に入っています。この作品はみなさんの力を借りて完成したものです。テッペイさん、リサさん、マサヨさん、本当にありがとうございます」。
作品の美しさに、みなさんからほめ言葉があふれます。

「私はニッポンでの旅を機に、さらなる文化交流を望んでいます。ニッポン文化の楽しさをもっとブルガリア人に知ってほしいのです」。実はアネリアさん、仕事でこれまで手がけてきたイベントのほとんどがニッポンに関連したもので、切り絵以外にも多くのニッポンの文化をブルガリアに紹介してきました。そんな功績が認められ、5年前、ブルガリアの日本大使館から表彰されていたのです!

そんな活躍ぶりをよく知るのが、昨年までブルガリアの日本大使館で勤務していた外務省広報文化担当の西村美咲さん。西村さんによれば、アネリアさんはオーガナイザーとしての能力が高く評価されており、現在は「日本友の会」の事務局長としてイベントを取り仕切っているそう。「日本とブルガリアの架け橋として活躍してくださっている、とても頼りになる存在です」と西村さん。

「今、ブルガリアで展示会の準備をしています。それは来年実現させる私の新たな夢。テッペイさん、リサさん、マサヨさん、ブルガリアでみなさんの合同展示会をやりましょう! 私はできる限りのことを尽くし、みなさんが来るのをお待ちしています。本当にありがとうございました」。

みなさんも「ぜひやりたいですね!」ととても前向き。

アネリアさんをニッポンにご招待したら、切り絵の魅力を世界に広め、ブルガリアとニッポン文化をつなぐ大きな架け橋になっていました!

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