中国、少子化で苦肉の「三人っ子政策」 子ども一人に4000万円!?

公開: 更新: テレ東プラス

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経済的事情から子どもについて悩んでいるという范浩華さん

人口14億人を超える中国で、少子化が深刻な問題になっています。中国の出生数を見ると2016年には35年以上続いてきた人口爆発を止めるための「一人っ子政策」を撤廃し、2人目の出産を認めました。しかしその後、出生数は再び減少。昨年は一人っ子政策の導入以降、最も少ない1200万人台となりました。そこで先月示されたのが「三人っ子政策」です。中国はこの先の人口減少を止められるのでしょうか?

中国上海。外資系保険会社で働く范浩華さん(33)は一人息子、佑廷くん(4)の子育てに必死な毎日です。幼稚園が終わった後にやってきたのが、幼稚園児向けのレゴ教室。この日のお題はフランス・パリのエッフェル塔。構造を学びながらレゴを組み立てていきます。日本では玩具のイメージが強いレゴですが、中国の幼稚園児の間では今、定番の習い事だと言います。週1回のクラスで、月謝は約1万円です。

「勉強のためではなく頭脳の開発です。もし能力がすごく高ければ、進学にも役立つかもしれない」(范浩華さん)

午後6時、ようやく帰宅。佑廷くんはすぐに父親へ向けて英語の本の朗読を始めました。朗読をスマホで録音して、塾に提出します。

「通っている幼稚園は私立幼稚園だし、学ぶ内容は比較的多い。できるだけ早い段階に知識を吸収させれば、小学校へ入った後に楽になる」(范さんの夫)

全ては進学校の小学校に入るためです。佑廷くんは教育カリキュラムが整った私立幼稚園に通いながら、レゴの他に英語、絵画など週6日で習い事をしています。

現在の教育費は年間340万円。大手IT企業に勤める夫と合わせて夫婦の年収は1800万円もありますが、范さんはもう一人の子どもをつくるか悩んでいます。

「私はもう一人、女の子が欲しいけれど夫が断った。経済的なプレッシャーが大きいから」
「子どもの教育を非常に重視している。力を尽くして最高の教育、もしくは標準以上の教育を受けさせたい。2人目を産むことで、息子の生活の質に影響を及ぼしたくない」

住宅価格の高騰も少子化に影響

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人気の小学校周辺の住宅価格も高騰している。

中国メディア「証券時報」の試算によれば、1人の子どもが大学卒業までにかかるコストは北京や上海で4000万円以上になります。これは日本で全て私立学校に通った場合の2500万円を上回ります。

人気の小学校周辺の住宅価格の高騰も少子化に影響を及ぼしています。学校近くで建設が進むマンションの値段は約75平米の3LDKで1億7000万円から。100平米を超える4LDKでは2億円を超えます。

街で上海市民に話を聞くと「私は親が用意してくれたけど、同世代の人にとって自力でのマンション購入はプレッシャーが大きい」「稼ぎが日常の支出と住宅ローン返済で全く残らない」「過去に戻ることができれば、子どもを1人しか産まないか、1人も産みたくない」との声が上がります。

女性の社会進出に伴う非婚化などもあり、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す「合計特殊出生率」の2020年の中国の数値は1.3と日本の1.34を下回りました。

先月31日、中国共産党は3人目の出産を認める「三人っ子政策」の方針を示しましたが、SNSでは「夫婦で両親4人の面倒を見て、子供3人も育てるのか」「老後は9人の孫の面倒を見なくてはならない」「子供の教育費はどうするのか。2人の子だけで精一杯なのに」など悲観的な意見が目立ちます。

大手旅行会社「トリップドットコム」CEOで、経済学の専門家の梁建章教授は経済的支援の必要性を訴えます。

「国は高い不動産価格によって多くの税金を徴収している。その税金の一部を割引の形で、1人、2人、多数を産む家族に還付する。現金を配るほかにも所得税、社会保険の減少・免除が必要だ」

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