「どうしてもっと母のために行動できなかったのだろう...現実を直視するのが怖くて逃げていたのかもしれない」ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」第9話をプレイバック!

公開: 更新: テレ東プラス

・SNSでも「泣いた」と話題! ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」第9話をプレイバック!

・トキコ(吉田羊)と父(國村隼)は亡き母(富田靖子)のお墓参りに

・そんな中トキコは、20代の頃の自分(松岡茉優)、同時に病気になってしまった父と母とのつらい日々を思い返す

6月11日(金)深夜0時12分からは、ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」第10話を放送! 原作は、ラジオパーソナリティー・コラムニスト・作詞家と多彩な顔をもち、女性からの圧倒的な支持を集める"独身のカリスマ"ことジェーン・スーが、自身の家族の出来事と思い出を描いたリアルストーリー。主人公のモデルはジェーン・スー自身であり、そんな主人公を吉田羊が演じている。

主人公・蒲原トキコ(吉田)は20年前に母を亡くし、今では父の蒲原哲也(國村隼)がたった一人の肉親。愛嬌はあるが破天荒な70代の父、独身で勝気な40半ばの娘。ひとたび顔を合わせればギクシャクし一度は絶縁寸前までいった二人だが、今では時々外食しながら話をする関係になっている。そんなある日、トキコは父についてのエッセイを連載することになった。ネタ集めのため父に会うたびいろいろな家族の思い出を聞く。母との出会い、全財産の喪失、そして他の女性の影...。父への愛憎と家族の表裏を描く、普遍にして特別な家族の物語だ。

「テレ東プラス」では、SNSで「胸が締めつけられた。来週もやばそう...」「父親が入院して、体調が芳しくなかった母も検査してみたら病が見つかって...。ドラマを観たら色んな事が起きては過ぎていったのを思い出した。もっと優しくすれば良かったとか、出来る事があったんじゃないか、とか...」などの声が飛び交った、第9話「過去とか娘とか」の内容をプレイバック。20代のトキコ役を松岡茉優が演じる。

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トキコがエッセイを連載している雑誌の編集者・今西(DJ松永)との打ち合わせの日。今西が「次の題材は、何かもう?」と尋ねると、トキコは「それがまだなんですよね~。最近ネタ不足というか、マンネリ気味で。父親と出かける機会も減ってまして」と答える。

「そうですか...。お母さんのことについて書かれるのはどうでしょう? これから原稿をまとめるにあたって、お父さんのエピソードってもう充分揃っていると思うんですよ。ただ、お母さんについてあまり触れてきてなかったなって。素敵な方だったというのは分かるんですけど」

「確かに母のことあまり書いてないですよね。いいことしか書いてないっていうか...。母が亡くなってから父と私の間で、母は信仰の対象みたいになっていったんです」

「信仰ですか?」

「はい。父とはしょっちゅう喧嘩したりぶつかったりしてたんですけど、お互いどうにもならなくなると、母のことを想うんです。そうすることで二人とも前を向けるというか」

「なるほど...」

「だから母のことを書いても、いいことしか書けないような気がして。書きたいのは山々なんですけど」

「確かに、光の部分だけじゃなくて影の部分も書いてこそ、初めて"その人を書く"っていうことになりますからね。でも、お母さんの尊厳を損なってしまうようなことがあってはいけないですしね...」

消極的なトキコと考え込む今西。二人の間に重い空気が漂うが、今西はそんな空気を変えるように、父・哲也との旅行を提案する。「一泊ぐらいなら取材費出しますよ」と言う今西に、「旅行か...いいですね」と微笑むトキコ。哲也の体力を考えると近場に限られそうだが、近々、母(富田靖子)の墓参りで哲也と会うので、どこに行きたいか聞いてみようと思うのだった。

今回の墓参りは、哲也の提案で弁当持参となった。おにぎりは哲也の担当なので、トキコは大根入りの味噌汁や玉子焼きなどを作り、母の墓へと向かう。

自身が握ったと思わしき不恰好なおにぎりと、大きなタッパーを供える哲也。タッパーの中身は綺麗なサンドイッチで、とても哲也が作ったものには見えない。「ずいぶん豪勢ですねぇ。誰が作ったんだか」と呆れ顔で言うトキコ。

「お母さんの前でそういうこと言わない」

そう言ってさりげなくタッパーの蓋を閉め、中身を隠す哲也。二人はしばらく手を合わせた後、墓を掃除する。

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「父さん、おにぎりどこで食べる? いくらなんでもここはないよね。老人と中年の女が、墓の前で立ったままおにぎり食べてるなんてシュールすぎるから」

「向こうにあずまやがあったよな? あそこでいいんじゃない」

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あずまやに移動し、弁当を広げる。トキコはおにぎりを頬張りながら、おもむろに「お父さんさ、どこか行きたいところある? 旅行」と尋ねる。

「なんだよ急に。連れてってくれるの?」

「うん、まぁ」

「へぇ、随分景気いいね。うーん、イタリアかな」

思わず笑うトキコ。

「ほら、ママがイタリア好きだったでしょ」

「そうだけど、海外はちょっと無理かな」

トキコは水筒に入れた大根の味噌汁を注ぎながら、「お父さんの体力じゃ海外なんて無理でしょ。どこか近場でないの?」と続ける。あまり興味がなさそうな哲也は、味噌汁をすすりながら「美味い」とつぶやく。

「そういえばさ、俺が入院してる時に、ママがよくこの味噌汁作って持ってきてくれてたよな」

「そうだったね...」

哲也の入院。それがわが家を見舞った不幸の始まりだった。

(父は昔から、マッチ棒のように細く切った大根の入っている味噌汁が大好物だった)

トキコ(松岡茉優)がまだ20代だった頃、哲也がC型肝炎で入院した。ただでさえ手のかかる哲也の入院は蒲原家にとっては一大事で、母は毎日のように哲也の好きなもの作って病院に通った。この日も大根の味噌汁を用意していた母は、調理の途中で胃腸薬に手を伸ばすと、水で流し込む。その様子を見ていたトキコが、「また飲んでる。最近毎日じゃない?」と心配すると...

「なんかね、胃もたれがするのよ」

「ふぅん」

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母は味噌汁を味見して、満足そうに「じゃ、後よろしく」と身支度を始める。トキコは水筒型の魔法瓶を用意し、母が作った味噌汁を鍋から移す。

「お母さんもさ、一度検査して診てもらったら?」

「大丈夫よ。人間ドッグには毎年行ってるんだから。胃もたれするのは、多分コーヒーの飲み過ぎね」

「じゃあ、コーヒー控えてくださ〜い」

「分かってるんだけどさ、やめられないのよね。編集者やってた頃の名残かな」

「編集の仕事ってそんなにコーヒーよく飲むの?」

「うん。打ち合わせとか校了前で忙しい時とか、とにかくよく飲んでたな」

哲也の病室にやって来たトキコと母。味噌汁を魔法瓶からお椀に移して渡すと、「あーうまい! 生き返るよ」と満足そうな哲也。

「ここの味噌汁薄くてさ。全然味しないんだもん」

「塩分控えめにしてくれてるの」

「そうかもしれないけど、参っちゃったよ」

「他に何か食べたいものある?」

「うーん、フレンチトースト。ママのフレンチトーストは絶品だからね。な、トキコ?」

トキコと母は顔を見合わせて笑う。

「じゃあ、バニラエッセンス買って帰らなきゃ」

「それと、ミルクティーも一緒に持ってきて」

「調子に乗ってるなぁ」

「砂糖とか大丈夫?」

「ダメだけど、ちょこっとだけね」

「えぇ〜、怒られるよ?」

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トキコも両親につられて笑う。そんな束の間の家族の時間を思い出していた哲也は、「毎日ママが来るのが待ち遠しくてさ。廊下を歩いてくる足音で、『あ、ママだ』って分かるの」と言いながら、味噌汁を飲み干す。

「本当かなぁ」

「本当だって」

「私たちが風邪ひいたり病気になったりすると、お母さんは私たちのために好きなもの作ってくれたけど、私たちはお母さんのために何かしてあげられたのかな」

「そんなこと言わないでよ、俺泣いちゃうよ」

「お弁当のおかずにお母さんの好きだったもの作ろうと思ったけど、思い出せなかったんだよね」

「俺、覚えてるよ。ミルフィーユ」

「あれはお菓子でしょうが! 知ってるよ、イチゴたっぷりのってるやつでしょ?」

「そう、それとコーヒーのセットな」

「そうそう。どの喫茶店行っても、あれ頼んでたなぁ」

そんな話をしながら、物思いにふける。哲也が肝炎の治療をしていた頃、もうひとつ重大な事態が進行していた。

かたい表情をした母がテーブルの上に封筒を置く。見ると、国立がん医療センター病院宛の紹介状と書かれている。

「......お母さん、がんなの?」

「まだ分からない。先生が言うには、『可能性があるから、ちゃんとした検査を受けた方がいい』って」

青ざめるトキコを見て、ぎこちなく笑う母。

「心配いらないって、まだ決まったわけじゃないんだから」

「そうだよね...」

沈黙の後、トキコが口を開く。

「お母さん。お願いだから、お父さんより先に死なないでね」

「えっ?」

「だって、あの人と二人きりはキツいよ〜。ワガママだし好き勝手やってるし。お母さんいなくなったら、私どう付き合ったらいいか分かんない。だからお願い! もう何もいらないから、お母さんの方が長生きして。絶対お父さんと二人きりにはしないで」

「分かった。トキちゃんとお父さんを残していくわけにはいかないもんね。トキちゃん......検査の日、一緒に来てくれない? 初めての病院だし、なんか一人じゃ心細いのよね」

「いいよ、いつ?」

スケジュール帳を確認するが、その日はすでに予定が入っていた。

「あーこの日、ライブ観に行く予定なんだよね。ずっと楽しみにしてたライブでね、もうチケットも取っちゃったんだ...」

と謝るトキコ。母は「分かった。お母さん一人で行く」と気丈に振る舞い、カレンダーに予定を書き込むのだった。

(この段になっても、私はまだ自分の都合を優先していた。今思えば、どうしてもっと母のために行動できなかったのだろうと悔やまれるが...現実を直視するのが怖くて逃げていたのかもしれない)

数日後、検査の結果を聞きに行ったトキコと母。はたして母の病状とは...。

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