厚さ7センチのさつまいもに感動!ハンガリー人男性が”ニッポンの天ぷら職人の技”を学ぶ:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時~)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は、島国ニッポンで育まれた食文化やニッポンの味の虜になった外国人の方々を紹介する「江戸前の味を愛する外国人スペシャル」をお届けします。

伝統的ないなり寿司を学び、大胆な発想の創作いなりに刺激を受ける

紹介するのは、アメリカ・シアトル郊外に住む、いなり寿司を愛するジェシカさん。

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甘辛く煮た油揚げと酢飯が織りなす味の合奏、いなり寿司。その歴史は古く、江戸時代から振り売りと呼ばれる移動販売で親しまれていました。ニッポン全国には色とりどりのいなり寿司があり、味付けや形状も千差万別です。

実は15年前に他界したジェシカさんのおばあちゃんは日本人。初孫として溺愛していたジェシカさんに、よく作ってくれたのがいなり寿司でした。その影響もあり、ジェシカさんは学生時代から料理に目覚め、今はケータリングシェフとして、宴会やパーティーの席で料理を作っています。

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早速、おばあちゃん直伝のいなり寿司を作ってもらうことに。まずは出汁から。椎茸と昆布、旨味成分のグルタミン酸が豊富な玉ねぎを煮て、花かつおを入れてさらに煮込み、6時間かけて作ります。油揚げは、一度空き瓶で伸ばして破れにくくし、出汁を染み込ませるため熱湯をかけて油抜きした後、味付けした出汁でショウガとともに煮込みます。
ご飯が炊けたら、手作りのすし酢を混ぜ、揚げで包んで完成! 仕込みから10時間かけて作った思い出の味は、両親や友人にも好評です。しかし、おばあちゃんがいない今、煮込みの方法などわからないこともまだ沢山あるといいます。
そんなジェシカさんを、2年前、ニッポンにご招待! 念願だったおばあちゃんの故郷にやってきました。

向かったのは、茨城県笠間市。ここには、独特のいなり寿司文化があるといいます。笠間のいなり寿司を広める活動をしている「いな吉会」の坪来久子さんと塙茂さんに案内していただいたのは、日本三大稲荷の一つといわれる笠間稲荷神社。全国の稲荷神社に祀られている狐は、いなり寿司と深い関係があるそう。いなり寿司の起源は、稲荷神の使いである狐と油揚げの色が似ていたからともいわれています。稲荷神社は五穀豊穣の神を祀っており、豊作を願う俵形のいなり寿司が生まれたのだとか。

笠間稲荷神社の参道には、いなり寿司を出すお店が7軒もあり、笠間名産のくるみや舞茸を使った変わり種のいなり寿司が名物ですが、中でも人気なのが、三角の揚げに蕎麦が入った蕎麦いなり。茨城県産の茹でたての蕎麦をそばつゆで味付けし、甘辛い揚げで包んだいなり寿司です。初めて食べたジェシカさんは「すごく美味しい!」と完食。

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蕎麦いなりの作り方を教えてもらうため、塙さんに案内していただいた先には地元の方々が集まっており、「ようこそジェシカさん、よぐ来たねぇ~!」と大歓迎。
早速教えていただいた作り方は、茹でた蕎麦に酢を入れためんつゆを絡め、揚げに詰めるというもの。酢が麺をコーティングすることで、時間が経っても麺がくっつかないといいます。出来上がった蕎麦いなりや変わり種いなりを皆さんといただき、大満足のジェシカさん。最後は皆さんと記念撮影をしました。

次に向かったのは、巣鴨にある創業50年の「八千穂寿司」。伝統のいなり寿司は1日3000個以上売れることも。
いなり寿司の原点といわれているのは、江戸時代後期、浮世絵師・歌川広重の錦絵にも描かれた「志乃多巻(しのだまき)」。この志乃多巻にちなんだ名を持つ「志乃多寿司」は、1902年創業のいなり寿司の老舗。そんな「志乃多寿司」で修業を積み、老舗の技を今に受け継いでいるのが「八千穂寿司」なのです。

二代目店主の森本貴之さんが迎えてくださり、まずは伝統のいなり寿司をいただきます。関東では定番の俵型ですが、関西では三角形が一般的。中身は酢飯だけの関東に対し、関西は五目。これは関ヶ原を境に分かれるそう。ジェシカさんは「朝昼晩3食でも食べたい味です」と美味しそうに頬張り、冬限定の酢飯にゆずの皮を混ぜた「柚子いなり」もいただきました。
さらに、貴之さんの妻・愛(つぐみ)さんが出してくれた試作中のいなり寿司には、なんと食用のバラの花が! あまりの美味しさに一気に完食。

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江戸時代から受け継がれるいなり寿司の作り方を教えていただきます。まずは油抜き。たっぷりの熱湯に油揚げを沈めることで油がしっかり抜け、味が染み込みやすくなるそう。一度の油抜きで、約500枚を満遍なくかき混ぜるのですが......お湯を吸った油揚げは、ひとすくいで10キロ! 挑戦したジェシカさんも「すごく重いですね!」とびっくり。「今まで油揚げにはお湯をかける方法しか知らなかったので、お湯に浸す方法で今度からやってみます」。

次は味付け。使うのは醤油、砂糖、みりんなど一般的な調味料ですが、配分は秘伝中の秘伝。撮影NGで、ジェシカさんだけ特別に教えていただきます。味見をしたジェシカさんが「甘すぎずベタつかず、舌をくるむような味わいがありますね」というと、「いい表現だね!」と貴之さん。30分煮込んだら常温で半日ほどかけて冷まし、じっくりと味を馴染ませて完成です。「大切なレシピを見せていただいて光栄です。もちろん秘密は守ります」。

続いてシャリ作り。お米は山形県産のはえぬきに、石川県産のコシヒカリを配合したブレンド米です。炊き上がったらすし酢をかけて、約1分でダマにならないよう均等にほぐします。このシャリ切りは、酢でご飯をコーティングするために行うもの。時間をかけると米同士がくっついてダマになり、粘りが出てしまうのです。

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そして包む作業。味を決める工夫は、シャリに揚げのつけ汁を馴染ませること。お米がほぐれやすくなり、均一な味になるそう。包み方にもポイントがあり、シャリを握らず詰めすぎないことで米が潰れず、口の中でほどける食感になるのです。ジェシカさんも挑戦しますが、アメリカでシャリを握ってから入れていたクセが出てしまいます。
「もっと練習したい」という熱意に応え、営業終了後、貴之さんの母・しさこさんがつきっきりで指導してくださることに。包み続けること1時間......最初と比べるときれいな俵形になりました!

翌朝、改めていなり寿司を包むところを見ていただきます。お店の皆さんが見守る中、リズムに乗って包み......特訓した甲斐あって、見事合格! 「こんな短い時間でできるなんて、とても上手」と、しさこさんも感心。

別れの時。皆さんから江戸切子のグラスとハンコをいただき、愛さんが「ともに過ごせた時間はあまりにも短く、十分にお伝えできなかったことが心残りです」と手紙を読み上げると、ジェシカさんの目には涙が。ジェシカさんも、感謝を綴った手紙を読みます。「貴之さん、私を信頼し、秘密の作り方まで教えていただきありがとうございました。しさこさん、温かく迎えてくれて...まるで本当のおばあちゃんといるようでした」。「お別れの挨拶じゃなくて、"またね"」と涙を拭う貴之さん。

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あれから約2年。巣鴨にあった八千穂寿司は、ビルの老朽化のため今年2月、市ヶ谷に移転。新店舗で、ジェシカさんからのビデオレターを観ていただきます。

ジェシカさんの家には、「八千穂寿司」の割り箸とお土産のハンコが飾られていました。ハンコは、友人に手紙を書く時に使っているそう。江戸切子のグラスも大事に使っています。

いなり寿司を作るところを披露します。以前はお湯をかけて油抜きをしていましたが、今は「八千穂寿司」で学んだ通り、鍋に湯を沸かして油揚げを沈めています。来日時に書きためたメモは、ノート1冊分。習ったレシピを忠実に守り、油揚げを煮込みます。
次はシャリ切り。飯台の大きさに対してお米の量が多すぎたようですが、「すし酢をかけたら、切るようになるべく速く」という教えは忘れていません。強く握らないように油揚げで包んでいきます。その上達ぶりに、「一回来て教わっただけなのにすごい」と愛さん。

最近ハマっているパインナッツ(松の実)のいなり寿司も作ってくれました。両親と友人に食べてもらうと、「繊細な味で美味しいわ」「ニッポンで本格的に勉強してきたのね」と大好評! 帰国後は、本業のケータリングメニューにもいなり寿司を加えたそう。

「皆さんとまたお会いできるのを楽しみにしています。マタネ!」と締めくくったジェシカさんに「またお会いしたいですよね」と貴之さん。そんなリクエストに応えるため、遠く離れた絆をもう一度中継で結びます!

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「八千穂寿司ファミリー、またお会いできて嬉しいです。サプライズ!」と笑うジェシカさんに、「嬉しくて涙が出そう」と貴之さん。「私も泣きそうです」と、再会の喜びを分かち合います。
愛さんが考えたバラのいなり寿司に刺激を受けたジェシカさんが、愛さんに新作について聞くと、試作中のココナッツいなりを見せてくれました。狐が化ける時、頭にのせる葉っぱに見立て、ミントの葉があしらわれています。実はジェシカさんも、創作いなり寿司を考えていました。

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地元産のリンゴとアメリカンチェリーにバルサミコ酢を加えて煮込み、濾してチェリーソースを作ります。この煮汁とナッツをシャリに混ぜて揚げの中へ。バルサミコ酢と果実の甘みと酸味が、揚げの味を引き立てるそう。最後にチェリーソースをかけ、オリジナルの創作いなり寿司が完成! 「このアイデアが生まれたのも、愛さんの創作意欲に刺激を受けたおかげです」。

「この再会は最高のプレゼントでした」というジェシカさんの言葉に、「必ずまた、お会いしましょう」と貴之さん。最後は「アリガトウゴザイマス。マタネ!」と日本語で再会を約束しました。

ジェシカさんをニッポンにご招待したら、いなり寿司への愛が一層深まり、その魅力をアメリカで広めていました!

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