ぬか漬けを愛するリトアニア人女性に驚き! 秘伝のぬか床レシピも公開:世界!ニッポン行きたい人応援団

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ニッポンから世界に広がる「ぬか漬け」のネットワーク

続いて紹介するのは、ニッポンの「ぬか漬け」をこよなく愛するリトアニア出身のルテーネさん。

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ぬか漬けの発祥は江戸時代。精米技術の発達と共に生まれたといわれています。原料となる米ぬかは野菜が持つ栄養素を大幅に増加させ、大根はビタミンB1が16倍にもなるそう。ぬか床の乳酸菌が腸内の悪玉菌を減らす働きも。

6年前、発酵食品に興味を持ち、ニッポンのぬか漬けを知ったルテーネさん。インターネットなどで調べ、ぬか床を自作していますが、留学先のドイツでは米ぬかが手に入りにくいため、麦の表皮部分である麦ふすまで代用。まだ本物のぬか漬けを食べたことがなく、味が合っているかどうかも分からないとのこと。そんなルテーネさんを、3年前、ニッポンにご招待!

「米ぬかでぬか床を作ってみたいです。本物のぬか漬けも食べてみたい」というルテーネさんがどうしても行きたいと向かったのは、福岡県にあるぬか漬けと家庭料理の店「千束(ちづか)」。200年以上守り続けてきたぬか床の味と文化を後世に伝えたいと、40年前に下田敏子さんが始めたお店で、下田さん親子を中心に地元の主婦7人で切り盛りしています。

福岡は、古くからぬか漬けが根付いた土地。江戸時代、大のぬか漬け好きだった小倉城主・小笠原忠真がぬか漬け作りを奨励。栄養があり、保存もきくことから北九州の小倉を中心に広まり、100年以上受け継がれているぬか床も珍しくありません。「ぬか漬けが好きすぎてドイツから来ちゃいました」というルテーネさんに、お店の皆さんも思わず笑顔。

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早速、8種類のぬか漬けに魚と小鉢がついた千束定食をいただきます。初めてニッポンのぬか漬けを食べたルテーネさんは「私が作っているぬか漬けとはまるで味が違います」と箸が止まりません。ぬかを醤油や砂糖と一緒に煮詰め、サバを炊き込んだ北九州の郷土料理「サバのぬか炊き」も美味しいと絶賛。このぬか炊きは、下田さんがお母さんから受け継いだ味だそう。

ぬか床は、かつては嫁入り道具として母から娘へ受け継がれてきました。下田さんのお母さんは戦時中もぬか床を枕元に置き、空襲から守ったといいます。「ヨーロッパにはぬか床のように、食べ物を受け継いでいく文化はありません。それは決して簡単なことではないと思います」。

ルテーネさんが自分で作ったぬか床を下田さんに見ていただくと、「すごい、よく理解していると思う」と褒めてくださいましたが、どうやら混ぜすぎているよう。ぬか床の中の乳酸菌は、ぬかや野菜に含まれる糖を分解して酸味や旨味に変え、美味しいぬか漬けにしてくれますが、実は空気が苦手。頻繁に混ぜて空気に触れると、乳酸菌が少ないぬか床になってしまいます。ルテーネさんは毎日混ぜていましたが、半年未満の若いぬか床は、毎日混ぜない方が良いそう。混ぜるのは1週間に1回でいいとアドバイスをいただきました。

「千束」のぬか床を見せていただくことに。下田さんがぬか床のフタを開けると、「ハァ〜♡ 食欲がそそられる香りです」とうっとり。200年以上熟成された「千束」のぬか床には、1グラムに対し10億もの乳酸菌が存在しているそう。これは一般的なヨーグルトの約100倍。さらに、「千束」のぬか床から誕生した独自の乳酸菌「千束菌」は、一般的な乳酸菌よりも旨み成分を多く作る性質があるといいます。長年ぬかを継ぎ足しながら味を守ることで、ここまで進化させてきたのです。

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ぬか床を上手に育てる混ぜ方「天地返し」を教えていただきます。天地返しとは、ぬか床の表面と底を入れ替えること。混ぜる理由のひとつは悪臭を防ぐためで、においのもとになる、空気に触れて繁殖する酵母菌と空気が少ないと繁殖する酪酸菌の繁殖を抑えるのです。最後は、酸素が苦手な乳酸菌のために、出来るだけ空気を抜いて終了。「本やインターネットでは分からなかったことを知れて本当に嬉しいです」。

翌日、下田さんと向かったのは、創業53年のお米店「古賀商店」。「千束」のぬか床には、ここで手に入る新鮮な米ぬかが必要不可欠なのだそう。玄米から白米に精米する際に出る米ぬかには、玄米の栄養素の9割以上が含まれるといいます。ぬか漬けには、白米で捨てていた栄養素を補う役割もあるのです。精米したばかりのぬかを食べたルテーネさんは、「とても甘いです。香りも香ばしい」。すると、社長の古賀政男さんが出来たての米ぬかを5キロもプレゼントしてくださいました。

お店に戻り、下田さんに家庭サイズのぬか床の作り方を教えていただきます。ぬか床に入れるのは、旨味を出す昆布に、味を引き締める唐辛子、天然の防腐剤になる山椒、香り付けのゆずの皮。そして大事なのが、新鮮な米ぬかです。

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ここでルテーネさんが「米ぬかは炒めるんですよね?」と質問。今までインターネットの知識をもとに麦のふすまを炒めていましたが、下田さんによれば、米ぬかを炒めると香りは良くなるが栄養は損なわれてしまうとのこと。精米したての米ぬかは、香りが芳醇なので炒める必要はないそう。新鮮な米ぬかに床分けしたぬか床を加えて3ヵ月ほど寝かせ、乳酸菌を増殖させれば出来上がりです!

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別れの時。ルテーネさんが皆さんに、お茶とマスタード、手作りのハチミツのお土産を渡すと、下田さんが「千束」で200年受け継がれた貴重なぬか床をプレゼントしてくださいました! 「また何かあったら、すぐ私にSOSを出してください。待っています」。2人は熱いハグを交わして別れを惜しみました。

続いて向かったのは、宮崎県新富町。宮崎県は伝統的な「たくあん」の材料となる天日干し大根の生産量日本一。本物のたくあんを食べたいというルテーネさんの願いを伝えたところ、たくあん作り一筋48年、天日干しした大根をぬか漬けにする、昔ながらの「本干したくあん」を作り続けている「キムラ漬物宮崎工業」の木村昭彦社長が迎えて下さいました。

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たくあんもぬか漬けのひとつ。一般的なたくあんは「東京たくあん」と呼ばれ、塩で水分を抜いた後、ぬか漬けにされたもの。大根を燻製にした秋田のいぶりがっこや三重の伊勢たくあんなども、すべてぬかで漬けたものです。江戸時代、沢庵和尚がぬかで漬けていた大根を徳川家光が気に入り、「たくあん」と命名したとの逸話も。

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木村さんが出してくださったのは、一番人気の三年本仕込みたくあん、南九州の伝統的な壺漬けたくあん、そして酸味がきいた昔ながらのたくあん。初めてたくあんを食べたルテーネさんは、どれも「美味しい」と手が止まらず完食! 木村さんも「すごいね!」と笑顔に。

旨みと特有のコリコリした食感はどのようにして生まれるのか、伝統的な天日干しを見せていただきます。案内された畑には、2万本以上の大根が干された「大根やぐら」が! 宮崎平野の冷たく乾いた風と南国特有の強い日差しのもとで2週間天日干しされた大根は、辛味が抜けて旨みと甘みが凝縮するのです。

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天日干しは、1本1本手作業で行っています。大根農家の鬼塚さんご夫婦は、トラック1台分の大根を30分で干してしまうそう。「干し理想」というたくあん専用の大根は、一般的な大根と比べると太さが半分程度のため乾燥しやすく、2週間であの食感が生まれます。たくあんが生まれる一連の工程を見たルテーネさんは、「皆さんが昔ながらの作り方を守っていることが素晴らしいと思います」。

別れの時。木村さんからたくあんの詰め合わせをいただき、「教えてもらったたくあんの作り方は、私の一生の宝になると思います」と笑顔で挨拶をしました。

あれから3年。ルテーネさんからのビデオレターを、木村さんと下田さんのもとに届けます。

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ルテーネさんは、現在ドイツの首都・ベルリン在住。今はスペースがなく、たくあん作りは実践できていませんが、将来は田舎でたくあんを作るのが夢だと話します。番組放送後、SNSにたくさんのメッセージがよせられ、それをきっかけにぬか漬け好きの友だち「ぬか友」ができたそう。

ここで、ルテーネさんがぬか漬けを見せてくれることに。帰国後も、下田さんからいただいた千束菌のぬか床でぬか漬け作りを続けており、ニッポンで教わった天地返しも週1回必ず行っているとのこと。「天地返しやってる、すごい!」と下田さんも感心します。そこにやって来たのは、ぬか友のハンスさん。番組を観て「ぜひぬか漬けを教えて欲しい」と連絡してきたハンスさんは、ルテーネさんが分けたぬか床で、3年近くぬか漬けを続けています。世界に広がる千束菌のネットワークに、「とても嬉しいですね」と下田さん。木村さんも、「人の繋がりを作るもとになると考えると、ぬか床やぬか漬けっていうのはすごいな」とコメント。

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ルテーネさんがぬか床から取り出したのは、なんとアボカド! 「これは木村さんに教わったの。教わらなかったら、アボカドをぬか漬けにするなんて発想まったくなかったわ」。早速アボカドを試食すると……「面白い! チーズみたいだ」とハンスさん。「乳製品が食べられない人のためのチーズね」というルテーネさんは、この味わいこそが旨みで、どんな野菜もぬかによって旨みが生まれるのだと話します。

独自に考えたジャガイモのぬか漬けも。5分ほど軽く茹でてから漬けたと聞き、下田さんは「流石!」とまたまた感心。ブロッコリーなどの固い野菜は、下茹ですることで美味しいぬか漬けになるそう。ジャガイモのぬか漬けを試食したハンスさんは、「これは本当に美味しい」と大絶賛! ポテトサラダのような味わいなのだとか。

さらにルテーネさんは「ぬか炊き」も作っていました。ベルリンは内陸で新鮮な青魚が手に入りにくいため、豚肉を使います。砂糖に醤油とみりん、ぬかを入れて煮込むこと30分。ルテーネさんオリジナル「豚肉のぬか炊き」が完成。綺麗に盛り付けたぬか漬けも添えて、ぬか漬けパーティーがスタート! 日本酒で乾杯します。

ハンスさんは特に大根の古漬けが大好きだそう。「(木村さんのもとで)特別な技術を学びたい」と前向きです。「自分たちの仕事にまた誇りを持ってやれますので、本当に嬉しいです。ハンスさんと一緒に漬け込みをするのを楽しみにしています」と木村さん。

そして下田さんには、こんな相談を。ある時、ぬか床に野菜を入れすぎて湿度が上がり、アルコール臭が発生したとのこと。その後アルコール臭は消えたものの、独特の酸味がなくなったような気がするので、何が起こっているのか知りたいとのこと。ルテーネさんが送ったぬか床を食べた下田さんによると、乳酸菌は存在しているものの、パワーが弱まっているそう。そこで、ルテーネさんの悩みを解決するため、2人をインターネットで結んじゃいました!

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「ルテーネちゃん! ハグしたいね」「特大のハグを送ります! お元気そうですね!」と再会を喜び合う2人。乳酸菌の力が弱まって独特の酸味を失っているぬか床を復活させる方法を教えていただきます。それは、野菜を皮ごと漬けて1週間ほったらかしにすること。空気を絶対に入れないことが一番大事で、皮についた乳酸菌が空気のないところで増え、再び元気なぬか床になるとアドバイスしてくださいました。最後は「そのうちドイツに行きます。ありがとう! バーイ」と笑顔で再会を約束しました。

ルテーネさんをニッポンにご招待したら、ニッポンでもらったぬか床を今も大事に育て、ドイツでもぬか漬けの輪を広げていました!

5月17日(月)夜8時からは、月曜プレミア8「世界!ニッポン行きたい人応援団」を放送!

「江戸前の味を愛する外国人SP」
▼“いなり寿司”を愛してやまないアメリカ人女性。日本人の祖母がよく作ってくれたといい、「ニッポンで伝統的ないなり寿司の作り方を学び、おばあちゃんの味を追求したい」という願いを聞き、約2年前ニッポンにご招待。いなり寿司の起源を学び、伝統のいなり寿司の作り方を教えていただいた。そんな彼女からお世話になった皆さんに感謝のビデオレターが届く。さらにアメリカとニッポンをネットでつなぎ、生中継も!

▼天ぷらを愛するハンガリー男性。約4年前、ニッポンにご招待。人生初のニッポンの天ぷらをいただき、大感激。天ぷらの名店をめぐり、その作り方を教えていただいた。

どうぞお楽しみに!

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