あがり症を克服する対策とは? 実は食生活が関係していた! 大人が補給すべき栄養素

公開: 更新: テレ東プラス

主治医が見つかる診療所」(木曜夜7時58分から)は、今話題の健康法から、いざというときの医師・病院選びのコツまで、医療に関するさまざまな疑問に答える知的エンターテイメントバラエティ。毎回テーマに沿った健康情報を第一線で活躍中の医師たちがわかりやすく解説します。

さて、今回のWEBオリジナル企画「主治医の小部屋」に寄せられたのは、最近、急にあがり症になってしまったという女性からの相談です。さっそく同番組のレギュラー・姫野友美医師に、対処法などを教えていただきましょう。

あがり症=社交不安障害には認知行動療法や、自律訓練法が有効

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Q:50歳女性です。45歳を過ぎたころから急にあがり症になってしまいました。とくにプレゼンなど、大勢の前で話すと心臓がバクバクして手が震えます。親しい友人に話すと「信じられない! 全然そう見えない」と言われますが、自分の中ではつねに不安がつきまとい、「失敗するのではないか...」と不安になってしまいます。何か良い対処法はないでしょうか?

―― 先生、大人になるまで何ら問題はなかったのに、急にあがり症になったということですが、治療したり改善できたりするのですか。

「あがり症は医学的には社交不安障害といいます。以前は、あがり症や赤面恐怖症、対人恐怖症などを総称して社会不安障害と呼んでいましたが、現在は社交不安障害に名称が変わっています。

社交不安障害の原因はセロトニンの不足です。ストレスがかかると脳内にはノルアドレナリンという緊張物質が分泌されるのですが、本来はセロトニンがそれを抑える役割をします。ところが、セロトニンが不足するとノルアドレナリンがどんどん出てしまい、交感神経が刺激されてあがり症が引き起こされるのです。治療もSSRIというセロトニンを増やす薬を使います。

もうひとつ関係しているのが脳の扁桃体の働きです。感情をコントロールする部位が過活動になっているんですね。失敗するとそれが記憶に残り、またあのときのように失敗するのではと緊張してしまうのです。

この方の場合、急にあがり症になったというよりも、恐らく顕著になったのがそのころなのでしょう。たとえば、人前で字を書かなければならないときに手が震えるなど、徐々に、微妙に緊張していたのだと思いますが、はっきりと自覚したのがその時期だったと考えられます」。

―― 何をするにも失敗するのでは...と不安になる状態を解消するよい方法はあるのでしょうか。

「社交不安障害の治療には先ほど話した薬のほかに、認知行動療法や、自律訓練法を用いた系統的脱感作法というものがあります。

認知行動療法とはものの見方(認知)を変える方法です。以前失敗してすごく恥ずかしい思いをしたという経験は誰にでもあると思いますが、一瞬恥ずかしいけれど、そこで間違ったのだから次は間違えない、次は大丈夫、いい勉強になった、というようにバランスの良い考え方に変えていくことでストレスを軽減していきます。

自律訓練法は交感神経の過剰な緊張を自分でコントロールするトレーニング法で、心身医学では昔から行っている方法です。系統的脱感作法という自分が不安になりやすい場面を想定して自律訓練法をしていくのですが、気持ちが落ち着いている、右手が重たい、左手が重たい......というように決まった言葉を繰り返して自己暗示をかけ、心身をリラックスさせて緊張を解いていきます。そうして徐々にハードルの高い場面を想定して訓練していきます。

一概にどの治療法が合っているとはいえませんが、この方の場合は、セロトニンの薬をもらう、認知行動療法を試してみる、といったことが対処法としてよいかと思います」。

これまでの食生活が原因になっている可能性も

doctor_20210512_02.jpg画像素材:PIXTA

―― 年齢的なことも関係していたりするのでしょうか?

「じつのところ、社交不安障害は中学生など若い人に多く、年齢がいくと逆にあがり症の人は少なくなるんですね。失敗しても "大したことない" と思えてくるのでしょう(笑)。

この年代にはイライラしたり疲れやすかったり、この方のような症状が現れることもしばしばあるのですが、体調の変化は意外とそれまでの食生活の積み重ねの結果であったりします。やはりタンパク質、鉄、ビタミンCとビタミンBは欠乏しやすいので、普段から意識的に摂るようにしたほうがいいですね。

若いときにはリカバリーシステムがしっかりと働き、自分の中で抗酸化物質を作ることもできます。たとえば、子どもは日焼けしてもあっという間に肌がもとの状態に戻りますよね。あれは日焼けして酸化ストレスを受けてもすぐに吸収して酸化力を弱めることできるからです。年齢とともにそうしたリカバリーができなくなるので、なるべく悪いものを入れないこと、悪いものが入ってきてもそれを除去できる体にしておくことが必要です。

―― 具体的に除去するためにできることはありますか?

抗酸化物質をしっかり摂ること、悪いものをすぐに排出できるような栄養素(亜鉛やタンパク質、セレン、ビタミンCなど)を摂ることが大事です。今はさまざまな食品に添加物が入っており、空気中にも有害な物質がたくさんあります。それらを除去するのは難しくても、排出できる体にしておくことが重要なのだと思います。

ひとつ言えるのは、若いときは栄養が足りていなくても体はちゃんと回りますが、年齢がいくほど栄養の利用効率が悪くなり、栄養を正しく補給しないと体が回ってこなくなります。健康を保つには細胞機能の衰えを補ってあげられるような栄養素を取り入れて、体を作っていかないといけないということです」。

―― 姫野先生、ありがとうございました!

【参考資料(姫野友美先生・著)】
『心療内科医が教える 疲れとストレスからの回復ご飯』(大和書房)

『認知症になりたくなければラーメンをやめなさい』(講談社)

【姫野友美医師 プロフィール】
1954年 静岡県生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。
九州大学医学部付属病院心療内科、Mayo clinic Emergency Room (U.S.A)Visiting Clinician、都立広尾病院、東邦大学大橋病院麻酔科、木原病院、テーオーシービル診療所などを経て、2005年ひめのともみクリニック開設、2006年日本薬科大学漢方薬学科教授就任。「女の取扱説明書」(SBクリエイティブ)、「心療内科に行く前に食事を変えなさい」(青春出版社)、「心療内科医が教える 疲れとストレスからの回復ごはん」(大和書房)など著書多数。近著に「認知症になりたくなければラーメンをやめなさい」(講談社)。

※この記事は姫野友美医師の見解に基づいて作成したものです。

今回お話を伺った姫野先生も出演する主治医が見つかる診療所SP(5月13日木曜夜7時58分)は【人気者をガチ検査!うちの相方が心配です!SP】!

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