サプライズに涙...休む間もなく働き、露天風呂を自作! 借金5000万円を返済した老舗旅館の若旦那:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は「ニッポンにご招待したら人生が変わっちゃった! 感謝のビデオレターが届いちゃいましたスペシャル」をお届けします。

お客さんを大事に...アットホームな大衆食堂で、人生を変えるサプライズが

紹介するのは、メキシコのメリダで「たま食堂」を営むペドロさんとアイメさん。

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大衆食堂をこよなく愛する2人ですが、ニッポンには一度も行ったことがありません。そんな2人を、3年前、ニッポンにご招待!

「長年続いている家族経営の大衆食堂で、地元の人々に愛され続ける理由を学んでみたい」というアイメさんの希望を聞き向かったのは、茨城県鹿嶋市にある昭和48年開業の「いずみ食堂」。日本屈指の工業地帯がある鹿嶋で、働く人や家族連れなど地元の人たちの胃袋を支えてきました。なんと偶然にも、暖簾がメキシコの「たま食堂」と同じ! 中へ入ると2人を歓迎するための大きなポスターがあり、こちらにも「ムーチャス グラシアス!(本当にありがとうございます)」と大感激。

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「いずみ食堂」を切り盛りするのは、女将の小泉さくさんとご主人の秀雄さん、さくさんの弟・栄三さんの3人。さらに、娘の裕子さんやお孫さんたちも交代でお店をサポートしています。

まずは、皆さんにご挨拶。小泉家の他に常連さんも紹介していただいていると、さらに厨房からもう1人登場! 常連さんは裏から入ってくることが多いそう。このアットホームな雰囲気こそ、「いずみ食堂」が愛される理由なのです。約40種類のメニューの中で、一番人気は焼肉定食。タレにこだわり、ニンニクや生姜焼きなど3つの味のバリエーションがあります。実はアイメさん、生姜焼き定食を「たま食堂」のメニューに入れたいと考えているのですが、ペドロさんは「まだ完璧ではないから出せない」と反対。「たま食堂」で生姜焼き定食を出すためには、ニッポンで本物の味を知ることがその第一歩になります。

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焼肉定食の人気の秘密は、甘辛い自家製のタレ。女将さんが長年の試行錯誤の末にたどり着いた味です。お肉を盛りつけたら、タレをもうひとかけ。生姜焼きは途中でおろし生姜を加え、仕上げにも生姜とタレをたっぷり! 運ばれてきた定食に、2人は大感激。「ニッポンの定食は、主菜にごはん、味噌汁、漬物などが付いていて素晴らしいです」とペドロさん。和食の基本、一汁三菜のバランスの良い定食をメキシコでも出したいと熱く語ります

焼肉定食をいただいた2人は、お肉の柔らかさとタレの味を大絶賛! 続いては生姜焼き。ニッポンで生姜焼きが食堂のメニューとして登場したのは昭和20年代。銀座「銭形」が、とんかつ用のロースをスライスし、醤油とおろし生姜を絡ませたのが始まりといわれています。素早くできてご飯が進むと人気になり、全国に広まったそう。初めて食べる本物の生姜焼きの味に、「ムイムイリコ!(すごく美味しい)」「デリッシオーソ!(美味しすぎる)」と箸が止まりません。

ご飯もおかわりして綺麗に完食! すると、サービスでデザートに梨が。農家の方からもらった果物などを、その時々で提供しているそう。お客さんを大事にする姿勢に感動し、「近所にいたら毎日通います」とアイメさん。ペドロさんも「(常連になって)厨房から入ってきます(笑)」とジョークを飛ばします。閉店後は、ご厚意で小泉家に泊めていただくことに。湯船に浸かり、布団で寝るなど、2人の長年の夢であるニッポンの生活を初めて体験しました。

この日は接客や厨房をお手伝いしながら、たくさんの常連に愛される「いずみ食堂」の秘密を学ばせていただきます。「お待たせしました」「サービスです!」と日本語も随分上達した様子。お店が落ち着いたところで、焼肉定食の秘伝のタレのレシピを特別に教えていただけることに。

タレには生姜とニンニクをたっぷり使います。ニンニクは10分ほど水につけておくと皮がやわらかくなり、むきやすくなるそう。生姜とニンニクを細かく刻み、醤油、砂糖、唐辛子などを加えて煮込み、最後にみりんを入れます。途中で入れることで煮詰まりすぎず甘味が出るそう。あえてアクを取らず煮ること40分...ザルで濾せば完成です! 味をしっかり覚えて帰るため、早速試食。「何回も作ってこの味を目指したいです」というペドロさんを、さくさんが「ぜひ頑張ってください。応援します」と激励してくださいました。

翌朝。この日は地区の運動会があり、大量のおかずを準備して、170個の仕出し弁当を作ります。彩りや栄養バランスがよく、近年世界的なブームになっているニッポンの弁当。ペドロさんとアイメさんも、自分たちの店でお弁当を出したいという夢があります。お弁当を包むところを見たアイメさんは、「日本人は全てのものをきれいに包みますよね。まるで美術品を届けるようです」と、ニッポンの包む文化に心を打たれた様子。メキシコにはこうした文化はないのだそう。

無事にお弁当を納品して向かったのは、小学3年生の孫・直生ちゃんが通う豊津小学校。全校生徒が62名と少なく、毎年地区の大人たちと合同で運動会を開催しています。2人にニッポンの文化に触れて欲しいと、学校をあげて歓迎してくださいました。早速、「マシュマロ食い競争」に参加。なんとトップはアイメさん! 実は子どもの頃は器械体操の選手だったそうで、運動神経抜群なのです。外国人の奮闘に会場も大盛り上がり!

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運動会の後はお店に戻り、夜の営業をお手伝い。さくさんは店の外までお客さんを見送り、温かい言葉をかけます。心がこもった接客に感銘を受けたペドロさんが、どのように接客を覚えたのか聞くと、「お客さんと会っていると自然と言葉が出るのよね」とさくさん。「私たちも女将さんのようにお客さんを大切にしたいです。そして美味しい料理を作ってお客さんに喜んでもらう...そんなお店を2人で築き上げたいです」。

営業後は、小泉家で夕食をご一緒させていただきます。せめてものお礼にと、2人はアボカドを使ったメキシコの料理・ワカモレを作り、炒めたひき肉をトッピングしてタコス風にアレンジ。皆さん喜んでくださいました。

ここでアイメさんが、秀雄さんとさくさんの馴れ初めについて質問します。お見合い結婚した2人は、家族で一緒にできることを始めたいと「いずみ食堂」をオープン。以来48年間、ほぼ休みなしで営業してきました。しかし、今のところ後継者はいないそう。「この食堂は宝物ですからなくなって欲しくないです」というアイメさんの言葉に、さくさんは「ありがとうございます」と微笑みます。

翌朝。朝食が終わると、裕子さんがなぜかアイメさんだけを連れて近所の美容室へ。そこにはなんと、美しい振袖が! 裕子さんが成人式で着たもので、今年には夏来さんが成人式で着る代々受け継ぐ振袖をアイメさんにも着てほしいとサプライズで用意してくださったのです。早速着付けをして自宅に戻ると、皆さん「すごーい! かわいい!」と迎えてくださいました。

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毎日働き詰めで、オシャレをする時間もなかったアイメさん。ペドロさんは「ニッポンでこんなことをしていただいて、今まで犠牲にしてきたものが報われました。僕にとって一番大切なのはアイメなんです。どんな辛いことでも彼女のためなら耐えることができます」と涙ぐみ、それを聞いたアイメさんの目にも涙が...。

ペドロさんも羽織袴を着て、2600年以上の歴史を持つ鹿島神宮へ。鹿島アントラーズも必勝祈願に訪れるパワースポットで、お店の成功を祈願します。小泉家の皆さんと記念写真も撮り、一生の思い出ができました。

別れのとき。「何から何までありがとうございました」と感謝の言葉を述べるペドロさんに、「真心のこもった精神で何事もやってくれたことは、私たちも忘れることができません」とさくさん。アイメさんも、「家族のような愛情を感じられるまで気持ちが通じるとは思っていませんでした。だからこそ、この別れが寂しいです」と別れを惜しみます。

皆さんとの記念写真をプレゼントしていただき、アイメさんは「本当に家族の一員のようです。もう前が見えません......」と感激のあまり涙が止まりません。他にも前掛けや茶碗、お箸などをいただき、2人は皆さんと熱いハグを交わしました。

あれから2年......「いずみ食堂」の皆さんにビデオレターを届けます。

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さくさんがプレゼントした前掛けを身につけ、「お元気ですか? お久しぶりです」と挨拶するペドロさん。ニッポンから帰国後、店の売り上げは前年の3倍に。店内には日本語のメニューを貼り、ニッポンのように、机の下に椅子が収まるよう家具職人に特注して新調した椅子とテーブルが並んでいました。さらに、ニッポンのある有名人のサインが! 実は昨年、元巨人軍のピッチャー・高木勇人選手が来店したのです。メキシカンリーグのチームに所属しており、練習の合間に来店したそう。廊下には、「いずみ食堂」からお土産でいただいた歓迎のポスターと、ニッポンでの写真も。「疲れた時はこの写真を眺めて皆さんのことを思い出し、頑張ろう!と気合いを入れています」とアイメさん。

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「たま食堂」のメニューには、「いずみ食堂」の名前とともに焼肉定食や生姜焼き定食が並びます。早速、教えていただいた生姜焼きを作ってもらうことに。生姜をするのは、「いずみ食堂」と同様に調理する直前。メキシコの生姜は味が薄いので、日本よりも多めに入れているそう。メキシコ産の材料で作った秘伝のタレは、何度も作り直して納得の味を再現。タレを最後にかけて完成です! 出来上がりを見た裕子さんは、「うわ、そっくり! デザートもついてる」。

「生姜が効いてとても柔らかいです。濃い味付けも気に入りました」と、お客さんの評判も上々。「私たちが教えた焼肉のタレとか、そういうのを勉強しながらやっているのは本当に嬉しいです」とさくさん。メニューには、ニッポンで訪問した他の大衆食堂の料理も。岐阜県にある大衆食堂「三勝屋」習ったパーコー定食もそのひとつ。人気メニューのカツカレーは、東京・清瀬市にある「みゆき食堂」で教えていただきました。

生姜焼きは、賄いでもよく作るそう。「生姜焼きを食べると、いつも『いずみ食堂』を思い出します」というアイメさん。2人は「いずみ食堂」に後継者がいないことを気にかけていて、「可能な限り続けて欲しい」「将来家族が出来たら連れて行きたい」という言葉に、「涙が出ちゃう......」と裕子さん。

プライベートでも変化が訪れていました。2019年11月、2人は交際5年の末に結婚。ペドロさんは、ニッポンで着物を着たアイメさんの笑顔を見て「帰国したら結婚式を挙げて、幸せにする」と決意したそうです。しかし、幸せを噛みしめていたのもつかの間、新型コロナウイルスが蔓延し、「たま食堂」も大きな打撃を受けてしまいます。昨年4月の売り上げは前年の80%減に。そこで始めたのが、「いずみ食堂」でお手伝いをさせていただいたお弁当の販売でした。

お店の経営を救ったのは、お弁当の販売とニッポンに行くために続けていた貯金。現在はそれを切り崩して営業を続けています。常連さんもできた今、お弁当の売り上げを伸ばして店を続けていきたいというペドロさん。アイメさんは「私たちの理想の大衆食堂は『いずみ食堂』です。お客さんがいつでも気軽に入って来られる、居心地のいい店にしていきたいです」とメッセージを送ります。

と、ここで......遠く離れた「いずみ食堂」との絆を、もう一度中継で結んじゃいました! ニッポンとメキシコをインターネットで繋ぎ、2年ぶりの再会です。

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「『いずみ食堂』にはさくさんが不可欠です。力になれることがあればいつでも呼んでください」と呼びかけるペドロさんに、「ありがとうございます」とさくさん。最後は皆さんで「アディオス!」と手を振り合いました。

ペドロさんとアイメさんをニッポンにご招待したら、3軒の食堂の味と心を受け継ぎながら、夫婦二人三脚で頑張っていました!

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