高齢者が安心して住める街を 住宅のサービス会社を目指す「大倉」

公開: 更新: テレ東プラス

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兵庫県・三田市にあるつつじが丘地区は約2300世帯の住宅が建ち並ぶ郊外のベッドタウンです。もともと山だった場所を切り開き、30年前に宅地を造成。多くの子育て世代がこの地にやってきました。しかし今、街は少子高齢化問題に直面しています。

若い世代は独立と同時にこの街を離れ、人口が流出。現在、住民の多くが60歳以上の高齢者となりました。生活に欠かせない商店の減少にも歯止めがかからず、街は活気を失っています。

30年前につつじが丘地区を開発したのは、宅地の造成から注文住宅の建設まで、全国で事業を展開する住宅メーカー「大倉」です。この会社を率いる清瀧静男会長は、街が衰退していく現状に危機感を募らせています。

「ニュータウンの現状は散々なもので、お客さんからは『こんな山奥を売りつけて』と罵声にも近い声もありました。そこに正面からぶつかっていくためにどうしたらいいのか」(清瀧会長)

辿り着いた答えが、住民が暮らしやすい街を再構築することでした。

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まずはAIやIoTを使いロボットや家電を操作する住宅、スマートホームの開発に取り組みました。AIロボットが普段の暮らしを便利にしてくれるだけでなく、健康状態を測る機能を併せ持つスマートホームを、3年かけて自社で開発しました。

さらに街の一角に5Gのアンテナを建設。オンライン診療や、無人自動走行車による食品の宅配も可能になるスマートシティーを作ろうとしています。

「これからは住宅のサービス会社になろうとしています。お客さんが困っていることを仕事にして、解決して喜んでもらったら、仕事は永遠にあるはずです」(清瀧会長)

つつじが丘地区に住んで30年になるという、吉井さん夫婦は「使いこなせるか不安はあるけれど楽しいですね。2人だけだから、年寄りの生活が便利になったらいい」と変わり始めた街に期待を寄せていました。

雪国に暮らす人々の負担を軽減する新技術

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北海道・岩見沢市は積雪が2メートルを超えることもある豪雪地帯です。実は日本は世界有数の豪雪国。積雪による事故も多く、北海道では毎年、雪おろしの作業中の転落や屋根からの落雪で死傷者が出ています。家に積もった雪をどう処理するか困るケースも多く、自らヒーターを使って解かすという人も少なくありません。

持続可能な街作りを目指す大倉では、豪雪地帯の暮らしを安全にするため、岩見沢市で新たな事業を始めています。任されたのは、同社の山﨑英男さん。これまでにない装置を使った屋根の融雪に取り組んでいます。

「こちらの屋根、雪が解けているところがあります。この中には屋根用の融雪マットを入れてます。マットを入れている部分は雪が解けていて、入れていない部分が解けていません」(山﨑さん)

屋根に組み込まれているのは、板状の装置。中には、厚さ0.4ミリのシートが敷き詰められています。ポイントとなるのはシートの黒い部分で、炭素素材「グラフェン」が使用されています。

グラフェンは銅の10倍の熱伝導性があり、電気を流すことで、高い伝熱効果を発揮します。そのため従来のものと比べ、雪を解かす融雪力が強く、電気代の節約が可能になります。

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この費用対効果に注目したのが、除雪費が大きな負担になっている地方自治体です。特に悩みを抱えているのが、道路の融雪。北海道では多くの道路に金属線を張り巡らし、そこに電気を流して雪を解かしています。電気代や維持管理にかかるコストは年間およそ10億円。これを少しでも削減するため、大倉と手を組みました。

そこで開発されたのが、グラフェンが組み込まれた融雪用のマット。グラフェンの特徴には耐久性があり、マットを折り曲げても断線しません。仮に不具合が起きてもマットを取り替えるだけで済み、電気代をおよそ4割削減できるといいます。

また地面に埋め込まれたセンサーが降雪を感知すると、自動で融雪を開始。雪の量に応じて融雪の強さを切り替えることができ、スマートフォンを使えば、安全な場所から融雪の操作も可能です。将来的には、積雪のデータを収集し、AIによる完全自動融雪のシステムを作り上げたい考えです。

「融雪するにあたって労働の大変さや費用の負担がありますので、自動化することによって少しでも負担を減らせられればと思っています」(山﨑さん)

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