安藤政信、尖っていた頃の自分へ「いろんな人に頭を下げて回れ」でも「クリエイティブは曲げるな」:理想のオトコ

公開: 更新: テレ東プラス

突然、訪れた年上男性との出会いか? 懐かしき再会を果たした同級生の安心感か......?

対照的な2人の間で心が揺れ動くアラサー大人女子のリアルな恋愛事情を描いた大人の恋物語、ドラマParavi「理想のオトコ」(毎週水曜深夜0時40分放送/テレビ東京系)。

恋愛から遠ざかって久しい美容師・小松燈子(蓮佛美沙子)は、30歳を過ぎてもまったく男っ気がない。ある日、編集者の友人・安積茉莉沙(藤井美菜)から、これから授賞式に登壇するという漫画家・ミツヤス(安藤政信)の身なりを整えてほしいと頼まれ、そのまま授賞式に訪れると、そこでかつて親しくしていた高校の同級生・志摩圭吾(味方良介)と再会。さらには茉莉沙の編集部に出入りする新進気鋭のデザイナー・高野正巳(瀬戸利樹)と出会う。その日を境に、燈子に突然、人生一番の"モテ期"がやってくるが――。

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燈子たちの10歳年上だが、恋に不器用ではっきりしない漫画家・ミツヤス役を演じる安藤政信さんに、ドラマへの意気込み、演じる役柄、そしてタイトルに掛けた「理想の○○」についてお聞きしました。

若い頃は"俺は俺でいい"のスタンスだった

――本作の脚本は小松江里子さんが担当。安藤さんの連続ドラマデビュー作「友達の恋人」、翌年の「青の時代」(ともにTBS系)以来のお仕事となります。

「25年ほど前になりますね。当時は、小松さんがよく家に呼んでくださってご飯を食べさせてもらったんです。旦那さんの伊藤一尋さん(※元TBSのプロデューサー・ディレクター)もかわいがってくださったので、あのころより少しでも成長した姿を見せたかったんです。なのでこのドラマのお話をいただいた時は、即答で『やらせてください』と返事しました」

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――「友達の恋人」は、対照的な2人の女性(桜井幸子瀬戸朝香)に想いを寄せられる青年の役。本作では、主人公・燈子を取り巻く男性のひとり、漫画家・ミツヤス役ですが、どんなキャラクターだと思われましたか?

「人との距離感やバランスがよくわからない人なのかなと思いました。すぐに食事に誘ったり、女性にグイグイいってるように見えるんだけど、本人的には全然そんな意識はないのだと思います。僕もそういうところが多々あるんですけど、こう言ったら相手が喜ぶとか、逆に傷つくとかよくわからないんですよね。ミツヤスは自分勝手な男だと思う人も多いでしょうが、僕はそうは思わなかったです(笑)。

ミツヤスが蓮佛さん演じる燈子との出会いによってどう変わっていくのか? 人前に出るのが苦手な彼が受賞式に出るにあたって勇気をもらって、魔法に掛かったように自信を得て、自分自身がどんどん変化していく。その姿を見ていただきたいです」

――髪型も服装も頓着しない、おもしろい漫画さえ描ければそれでいいというミツヤス。

「ミツヤスの気持ちはわかります。僕もそうでした。昔は人を受け入れず、自分独りの世界にいて"俺は俺でいい"というスタンスでやっていたので。さらには、20代のころはブラブラしていて。1ヵ月仕事をしたら、1年くらい京都で遊んでいたり、3年間まったく仕事しなかったり。借金してまで旅行に行ってましたからね(笑)。で、美術館に行って、綺麗な庭を見て、音楽を聴いて、次(に出演する作品)の台本を読んで......。今は多少、大人にはなりましたが、芝居、映像、写真......クリエイティブなことにしか興味がないというのは昔と変わらないです」

クリエイティブなことにかける思い

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――今回の取材では、ドラマのタイトルに掛けて安藤さんの思う「理想の○○」もお聞きしたいのですが、まずは「理想のシゴト(仕事)」から。ここ数年、ドラマでの露出が増えています。何か心境の変化があったのですか?

「昔は今よりも"やりたくないこと"が、はっきりしていたんですよ。ドラマもそのひとつでした。それがここ数年......この歳になって、やっと何でも受け入れてみよう、乗っかってみるのもいいのかもしれない、という感覚になりました。子どもが生まれたことも大きいですね。いざやってみると、今まで何をやっていたんだ? 何で拒絶してたんだろう? という気持ちになりました。3ヵ月間という期間を共有できると、他の役者やスタッフとの距離も縮まるし、情が沸いてくるし、映画とはまた違う感じでまた心地がいいなと。気づくのに20年もかかりました(笑)」

――この1月に、所属していた事務所からの独立を発表しました。

「自分で(マネージメントを)やるようになってからは余計に、ですね。人の話を聞かなければいけないし、それには人を受け入れなきゃいけない。自分1人じゃ何も動かない。20代はそのことにも気づかず、ずっと独りで考えていました。でも、自分がやりたいこととか、頭の中で想像しているクリエイティブなことだって、ちゃんとやればそこに近づけるって、ようやく思えるようになりました。

そうすると、ありがたいことに芝居も映像も写真も、ちゃんと仕事として付いてきて。〆切も納品もあるし、その間、台本を覚えなきゃいけないので大変ですけど、すごく心地がいいです。別にいい車に乗って高い服を着て......ってことには興味がないんです。クリエイティブなことに時間もお金も使いたいので、今の感じが理想に近いんじゃないかと思います」

――そんな多忙なスケジュールの中、「理想のキュウジツ(休日)」は?

「写真を撮りたいです。写真1本で食べていけるなら、それが理想です。役者が写真かじって、カメラぶら下げるって何となく雰囲気ありますよね。自分は本気でカメラに惚れたので、人にどう見られるとかは関係なく、ひたすら夢中になりましたし、好きな写真家のアシスタントもやらせてもらい基礎から学ばせてもらいました。もちろ寝ていいなら好きなだけ寝てたいですけど(笑)、それでも写真だけは撮り続けたいです」

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――では、「理想のジンセイ(人生)」は?

「基本、興味のあることしかやってこなかったですし、何とか生活は出来ているので、今のところ上出来じゃないかなと思います。そこに仕事があって、加えて好きな音楽を聴いて、好きな仲間と酒を飲んで。それで十分、幸せなんじゃないですかね」

――若かった自分に声を掛けるとすれば?

「わけわからず尖っていたので、いろんな人に頭を下げて「あの時はすみませんでした」と謝りたいです(笑)。ただ、クリエイティブに関しては今よりも全力で真摯に向き合っています。だから脚本に疑問があれば、問いただしたり、それでも上手くいかなければ受け入れない体制なので、それは貫いていきたいです」

――今は頭を下げられるようになった?

「はい。なりました。その作品や現場が上手くいくのであれば全然、下げますよ。今までだったら思ったことをすぐ口に出して言っちゃってたんで(笑)」

――(笑)、最後にタイトルは「理想のオトコ」ですが、安藤さんにとっての「理想のジョセイ(女性)」は?

緒形拳さんに21、22歳のころからかわいがってもらっていたんです。緒形さんのような芝居がしたいと思い、ずっとリスペクトしてきたんですけど、そんな緒形さんがおっしゃっていたことがあるんです。『女性から産まれてきたんだから女性を尊敬する』って。共演者の女性も大切にしていらっしゃいました。だから、僕も理想の......という前に、まず女性を尊敬したいです」

――余談ですが、ここ数年ドラマへの出演が増えたことで、10~20代の女性が「イケメン」「そんな歳に見えない」などなど「イケてるオヤジ」として騒いでいて。その反響をどう思われますか?

「(笑)、それは気にしたことはないですし、"イケてる"みたいなキーワードは自分の中にはないです。でも女性にいい評価をもらえるのは単純にうれしいですよね。写真を撮る時も女性とセッションする機会が多いので、イケてないおっさんよりイケてるおっさんの方がいいですし。ただ、どういう意味での"イケてる"のかは、気になりますよね(笑)。『イケてない』と言われないよう、これからも精進します」

【プロフィール】
安藤政信(あんどう・まさのぶ)
1975年5月19日生まれ。神奈川県出身。俳優、写真家。1996年、映画「キッズ・リターン」で主演を務めデビューし、多数の映画賞を受賞。映画やドラマを中心に俳優として活躍する一方で、近年は雑誌・広告で写真家としても活動。近作は「神酒クリニックで乾杯を」(BSテレ東)、「テセウスの船」(TBS)、「DIVER-特殊潜入班-」(CX)、「太陽は動かない-THE ECLIPSE-」(wowow)、NHK大河ドラマ「麒麟がくる」など。映画「デイアンドナイト」(19)、「るろうに剣心 最終章TheBeginning」(6月4日公開)、「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」(6月18日公開)が待機中。

(取材・文/橋本達典)

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ドラマParavi「理想のオトコ」、4月14日(水)深夜0時40分放送の第2話は?

第2話
ミツヤス(安藤政信)との一夜の過ちに落ち込む燈子(蓮佛美沙子)は、体の関係から始まる恋もありだと茉莉沙(藤井美菜)に励まされる。しかし茉莉沙には相手がミツヤスだとは言えずにいた。 恋愛に発展するわけがないと思いながらもミツヤスのことが頭から離れない燈子は、ある日、圭吾(味方良介)から突然の告白を受け、二人の間で気持ちが揺れ動いていく...。 そんな中、意を決してミツヤスと再び会うが、ミツヤスから圭吾とのことを聞かれてしまい...。

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