ジェーン・スーが自伝的エッセイのドラマ化に期待。「年を重ね、親との関係に悩んでいる人に観てほしい」:生きるとか死ぬとか父親とか

公開: 更新: テレ東プラス

いよいよ4月9日(金)深夜0時12分からスタートする、ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」。"独身のカリスマ"と呼ばれ、作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティとして活動するジェーン・スーさんが、その半生や父親との関係について綴った同名エッセイ(新潮社)をドラマ化。スーさんをモデルにした主人公・蒲原トキコを吉田羊さんが演じます。トキコは20年前に母を亡くし、今では父・哲也(國村隼)がたった一人の肉親。40代半ばの娘と70代の父が改めて向き合い、交流を重ねる様を描きます。

ikirutoka_20210409_01.jpg
「テレ東プラス」は、原作者のジェーン・スーさんを取材。インタビューを前後編に渡ってお届けします。

親子で対話するためには"取材"という形が必要でした

――原作では、お父様との関係性を過去のことも含めて、本音で語っていらっしゃいます。ご自分の家族について書こうと思ったきっかけを教えてください。

「私が24歳のときに母が他界し、そのとき、私なりに力を尽くしたつもりでしたが、それでもかなりの後悔が残ったんですね。私は母の女性としての人生についてもっと聞きたかったけれど、母は私のことをまだ子どもだと思っていて、母親を演じきって亡くなってしまった。最期まで親子という枷(かせ)を外すことができませんでした。父については同じ悔いを残したくないと思い、父の話を聞いてそれをエッセイとして書き始めました。5年前から連載を始めましたが、お互い40代と70代になっていて、そこから親子で対話するためには"取材"という形が必要だったんです」

――ドラマ化にあたり、トキコ役を吉田羊さんが演じると決まったときは、どんなお気持ちでしたか。

「びっくりしました。そもそも私の"父親月報"(原作は月刊誌の連載)みたいな本がドラマになるとは思っていませんでしたし、吉田羊さんに演じていただけるとは想像もしていませんでした。実際にお会いしてみると、羊さんは気さくで、すぐ懐に飛び込ませてくれるような方だったで、『この方に演じてもらえてうれしいな』と思いましたね。詳しい話はできませんでしたが、羊さんもお母様を亡くしていらっしゃいますし、お父様もご高齢とのことなので、ドラマとご自身を照らし合わせている部分はあるのかなと思います」

ikirutoka_20210409_02.jpg
――ドラマでは吉田羊さんが縁のあるメガネやヘアバンドを着けていて、「スーさんにかなり似ている!」というのも話題になっています。

「まさか私のビジュアルに寄せてくださるとは...。今では私の方が偽物みたいです(笑)」

――ドラマでは、原作にはないオリジナルの要素として、「ジェーン・スー生活は踊る」(TBSラジオ)を想像させるラジオ番組が登場します。毎回、トキコがスーさんのようにリスナーからの人生相談に答える場面もありますが...。

「それも予想していなかったことで、すごくうれしいです。祖父江里奈プロデューサーから『羊さんのしゃべり方がどんどんスーさんに似てきている』と伺って、私も撮影シーンを見学させていただきました。羊さんの演技を観て、"やっぱり俳優さんはすごい! 本当に役に憑依することができるんだな"と感動しました。オンエアが楽しみです」

――そして、お父様をモデルにした哲也を國村隼さんが演じます。原作では"女性が放っておかないタイプの男性"と書かれていますが...。

「國村さんはすごく色気のあるたたずまいをしていらっしゃいますが、うちの父はヒョロヒョロ。ドラマでは、父よりだいぶモテそうなお父さんになっているのではないかと。ドラマはあくまでフィクションであり、原作とは別ものなので、私と父も"トキコと哲也"の物語として楽しもうと思っています。ただ、父は自分の役を國村さんが演じてくださると知って、ものすごくびっくりしていました(笑)」

ikirutoka_20210409_03.jpg
――回想シーンでは、20代のトキコを松岡茉優さんが演じます。

「松岡さんのラジオ番組が好きでよく聴いていたので、これも驚きました。本に書いた私の20代はなかなか苛酷で、演じていただくのは申し訳ないという気持ちも...。ラジオでの松岡さんはすごく正直で感受性が豊か。年齢のわりに落ち着いていて、人に安心感を与えられる人という印象です。松岡さんのラジオを聴くと心が癒やされました」

――スタートを前に、読者へメッセージをお願いします。

「原作は私と父の個人的なケースを書いたものですが、現在、親とのことを考えていて、『親子の関係が変わってきたな』『このあとどうなるのかな』と考えている方がこのドラマをご覧になったら、何かしら感じるところがあるのではないかと思います。年齢を重ね、家族の中で居心地の悪さを感じている人に、ぜひ観ていただきたいですね」

ジェーン・スーさんのインタビュー後編は、4月15日(木)夜9時30分に公開予定です!

【ジェーン・スー プロフィール】

1973年、東京都出身。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。「ジェーン・スー生活は踊る」(毎週月~木曜午前11時 TBSラジオ)に出演中。「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」(幻冬舎)で講談社エッセイ賞を受賞。著書に「私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな」(ポプラ社)、「女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。」(文藝春秋)、「今夜もカネで解決だ」(朝日新聞出版)、「これでもいいのだ」(中央公論新社)、「女のお悩み動物園」(小学館)など。コミック原作に「未中年~四十路から先、思い描いたことがなかったもので。~」(漫画:ナナトエリ、バンチコミックス)がある。

(取材・文/小田慶子)

そして4月9日(金)深夜0時12分放送! 第1話のあらすじは...。

ikirutoka_20210409_04.jpg
主人公・蒲原トキコ(吉田羊)は20年前に母を亡くし、今では父の蒲原哲也(國村隼)がたった一人の肉親。愛嬌はあるが破天荒な70代の父、独身で勝気な40半ばの娘。ひとたび顔を合わせればギクシャクし一度は絶縁寸前までいった二人だが、今では時々外食しながら話をする関係になっている。そんなある日、トキコは父についてのエッセイを連載することになった。ネタ集めのため父に会うたびいろいろな家族の思い出を聞く。しかしそれは楽しい記憶ばかりではない。母との出会い、全財産の喪失、そして他の女性の影...。父への愛憎と家族の表裏を描く、普遍にして特別な家族の物語。

どうぞお楽しみに!

PICK UP