「会社は人生そのものだった...」消滅した「三洋電機」元社員たちのその後:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

現場で奮闘する人たちの姿を通して、さまざまな経済ニュースの裏側を伝えるドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(毎週火曜夜10時)。3月23日(火)の放送では、2011年に消滅した総合電機メーカー「三洋電機」元社員のその後を追跡。消滅から10年、第二の人生を歩く人たちの心情を聞いた。

「三洋電機ってご存知ですか?」若者の挙手はゼロ

三洋電機は自転車の発電ランプの製造から始まり、高度経済成長期の波に乗って急成長を遂げた。しかし2000年代以降、大型液晶や半導体への巨額投資に失敗。進めていた多角化も裏目に出るなどで経営が悪化し、2011年「パナソニック」の完全子会社となった。結果、約10万人の社員の多くは居場所を失う。

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三洋電機の営業部に所属していた亀井隆平さんもその一人。いまは家電ベンチャー「シリウス」の代表として各地に飛び、自社の製品を売り込む日々。多機能と低価格を売りにした新製品の空気清浄機を、「ビックカメラ有楽町店」の担当者にアピールする。

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「三洋電機の名前は名乗れないけど、ポリシーやビジョンは引き継ぎたい」。移動中の車内で亀井さんはそう語る。シリウスは平均年齢53歳で、社員13人のうち7人が三洋時代の同僚だ。亀井さんは「三洋電機を辞めた気がしない。『小さい三洋電機』になった」と笑う。

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水圧で汚れをとるクリーナーヘッド「スイトル」が同社の稼ぎ頭で、累積販売台数は約8万台。しかし、ヒットが落ち着くと業績は低迷。新商品の空気清浄機の売り上げが、元三洋電機社員たちの命運を握っていた。実はこの空気清浄機、元は亀井さんが最後に売り歩いた三洋電機の製品で「元三洋マンの手で育てた"本家本元の子ども"」と思い入れもひとしおだ。

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この空気清浄機で海外進出を目論む亀井さんは、製品にある改良を施し、前へ前へと歩み続ける。

もう人事はしないと決意「リストラは麻薬的なもの」

三洋電機で経営戦略部に所属していた鎌谷賢之さんは、フィットネスジムやアパレル、英会話など74社を運営するライザップグループで経営本部長を務めている。同グループは、M&Aによる拡大路線が裏目に出て、2019年度は約194億円の赤字、2020年度は約60億円の赤字に。その立て直しを任された鎌谷さんは、社長にも厳しく提言する。

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三洋電機時代は30代の若さで経営再建のメンバーに加わり、将来を約束されたエリートだった。しかし、リーマン・ショック後、経営陣から「パナソニック」への売却構想を聞いたとき、同社を去る決意をした。

この日も、グループ会社「ジーンズメイト」の倉庫に出向き、コストカットを進める。「三洋電機にいたときに思っていたことが現在につながっている。しょんぼりしないで、上を向いて前を向いて、将来に向かって進んでいきたい」と鎌谷さんは語る。

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大手回転寿司チェーン「くら寿司」の広報宣伝本部長・岡本浩之さんも元三洋電機の社員だ。当時は人事部長を務め、約8000人のリストラに関わった。

「リストラは麻薬的なもので、人を減らしたら固定費が減るので、そのときは業績が良くなる。中期的に守ると会社の体力そのものを奪っていく...結構きつかった。このままでいいのかなと」。

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岡本さんはもう人事の仕事はしないと決めた。三洋電機での最初の配属先は広報部で、会社の栄枯をその目で見てきた。そして再び広報として働く日々が続く。岡本さんは「今(コロナ禍)だからこそどうやって攻めていくのか。広報活動の大切さは今まで以上に大きくなっていく」と話す。

儲からなくても、困っている人のため

かつて三洋電機の電池事業は国内メーカーの中でも屈指の技術力を誇っていた。その中心を担っていた元技術開発の雨堤徹さんはいま、故郷・淡路島で電気の研究所「Amaz技術コンサルティング」(兵庫・洲本市)を設立し、困りごとを抱える人に手を差し伸べている。

当時、携帯電話の軽量化が求められる中、三洋電機の電池は独り勝ち。「世界の雨堤」と呼ばれ、会社を去るときは「パナソニック」をはじめ国内外のメーカーから誘いがあったが、これをすべて断った。

「困っている人が少しでも楽になる、プラスになる仕事ができれば...。残りの人生は半分恩返しができたらいい」と雨堤さん。淡路島の高台には、三洋電機を創業した井植家の菩提寺があり、石碑には「太平洋の彼方に虹の橋を架ける」という創業者の言葉が刻まれている。

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創業者の志を受け継ぎ、5年ほど開発に格闘しているのが、直径15ミリ、重さ6グラムの小さな電池。雨堤さんは「大手のメーカーはこんな電池は作らない。絶対儲からないのが目に見えている」と話す。

そしてこの小型電池を待ちわびる人々がいる。雨堤さんは技術者魂を燃やし、困っている人のために高いハードルに向かって進む...それは三洋電機のときから変わらない。

番組ではこの他、三洋電機で事務職をしていた女性のその後や、シリウスの亀井さんと雨堤さんが共同で開発を進める様子などを紹介。それぞれの人生を歩む元社員の姿を今夜10時からの「ガイアの夜明け」で放送。どうぞお見逃しなく!

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