柚子香る「手作りポン酢」が大反響! 幻と呼ばれる「枯木柚子」も紹介

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時~)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は「ニッポンにご招待したら人生が変わっちゃった! 感謝のビデオレターが届いちゃいましたスペシャル」と、ニッポンのあるものが好きすぎて来日し、そのまま住むことを決意した外国の方を応援する「ニッポン住んじゃった人応援団」をお届けします。

ポン酢と本物の柚子を求めて日本へ......帰国後、カナダで奇跡の出会いが!

最初に紹介するのは、カナダ南西部・バンクーバーに住むショーンさん。

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初めて出会ったのは、約2年半前。ショーンさんはもともと高校の先生をしていましたが、台湾出身の妻・サラさんの妊娠を機に退職し、医師である奥さんに代わり、家事や育児をこなす主夫に。慣れない子育てに悩むショーンさんを救ったのが、日本料理でした。中でも「ポン酢は酸味と甘さ、そしてコクのある完璧な調味料です!」と、"ポン酢"の虜に。

「ポン酢」は江戸時代、オランダ人が持ち込んだ「ポンス」という柑橘系の食前酒を、日本人が酒の代わりにお酢を入れて調味料として使ったことで誕生しました。やがて醤油や出汁を加えた「ポン酢醤油」が登場すると、幅広い料理に使用され、和食に欠かせない存在に。近年は減塩ブームも手伝い、海外からも注目を集めています。

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本やインターネットを参考に自己流でポン酢を一から手作りしているショーンさん。しかし、材料の1つである柚子がカナダでは栽培されていないせいか、売っているのを見たことがなく、手に入らないと話します。そのため、柚子果汁がわずかに入ったジュースで代用していますが、どうしても香りが弱いとのこと。

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そんなショーンさんを、ニッポンにご招待! 向かったのは、大阪で長年親しまれている手作りポン酢のお店「勝貴屋(しょうきや)」。ご主人の田中勝さんと奥様の貴子さんが作る2人の名がついた「勝貴屋」のポン酢は、口コミで評判が広まり全国から注文が殺到。ショーンさんの熱意を伝えたところ、快く受け入れてくださいました。「こちらのポン酢が一番美味しいと聞きました」というショーンさんに、勝さんは「えらいこっちゃ」と笑顔。

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早速、その香りと味を試させていただいたショーンさん「柚子の香りが鼻を通りぬけました。ワンダフル!」。「1秒ごとに味が変わります!まずは柚子、そして塩と醤油、それからわずかな酸味、そして出汁の旨味が長く続きます」と絶賛。そして、レシピを知るのはご夫婦2人のみという勝貴屋のポン酢作りを、今回特別に見せていただけることに。

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勝貴屋のこだわりは、出汁から出る旨味。上品な甘さが特徴の北海道産の真昆布と原木栽培の椎茸、さらにさばといわしの削り節を入れ、24時間置いてから煮込みます。ここで、「私は鰹節を入れたらすぐ火にかけていました」というショーンさんに、「灰汁が出すぎてしまう」と貴子さん。カナダから持ってきた自作のポン酢をお2人に味見していただいたところ、貴子さんは魚介の強い香りを感じていました。その原因は、加熱のタイミングにあったようです。

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出汁が取れたらいよいよポン酢づくり。10年の歳月をかけ、ようやく完成させたレシピで材料を混ぜ合わせていきます。中でも重要なのは、高知県産の果汁100%の柚子果汁。香りが命の柚子は、収穫後すぐに搾汁することでその香りを保っています。他の柑橘と比べて果汁量が少ないため、値は高く付きますが、勝貴屋ではふんだんに使用! 出来上がったポン酢は、鮮度を落とさないようすぐに瓶に詰めるのも大切なポイントです。最後に貴子さんが一枚一枚手作業でラベルを貼って完成!

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その夜、田中さんのご自宅に招かれたショーンさんは、お孫さんたちと一緒に夕食を。料理好きの貴子さんが、ショーンさんのためにお好み焼きを作ってくれました。ポイントはポン酢で味付けした豚肉とセロリとネギ。これを生地にのせ、さらに生地で挟み、バターで風味づけします。その上から、マヨネーズとポン酢で合わせた特製ソースをたっぷりと。あまりの美味しさに、ショーンさんが具について尋ねる場面も。

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別れの時。「色々と教えていただき本当にありがとうございました」と感謝するショーンさんに、「わずかな時間しかなかったけれど、頑張ってください!」と勝さん。お孫さんたちがお小遣いを出し合って買ったお箸と勝貴屋のポン酢をプレゼントしていただきました。

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続いて向かったのは、柚子の生産量全国1位の高知県。「本物の柚子を見てみたい」というショーンさんの希望を叶えるためにやってきました。柚子は種を植えてから最初に実がつくまで、なんと15年以上もかかるそう。そのため、市場に出ている柚子のほとんどはミカンの木に柚子をつぎ木し、3年から5年で収穫ができるようにしたもの。今回訪れたのは、種から育てる実生柚子にこだわる川島弘明さん。2018年に亡くなったフランス料理界の巨匠、ジョエル・ロブションも認めた最高の柚子を育てています。

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川島さんのもとへ伺うと、ご家族そろって出迎えてくださいました。ショーンさんが今はほとんど栽培されていない実生柚子をなぜ育てているのか尋ねると、「(一般的な柚子とは)全然違う、別ものです」と川島さん。柚子の味や香りは、地中から吸い上げるミネラルや栄養分によって決まるといわれ、樹齢を重ねた木ほど根が深く張るため、より芳醇で濃厚な実になるのです。川島さんが育てているのは、樹齢100年以上! 世界にも類を見ない"幻の柚子"なのです。今回特別にその収穫を見せていただけることに。

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早速、川島さんが所有する山の中へ。傾斜の激しい山道を歩くこと30分。江戸時代に植えた種を川島家が代々守り育て、高さ約15メートルまで育った柚子の木がありました。こちらの柚子の木は川島さんが育てている中で最も古く、樹齢200年を超えているそう。そしてそこに成っていたのは、別名「枯木(こぼく)」と呼ばれる幻の柚子。

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木にハシゴをかけて安全ベルトをしめ、柚子の枝にある固くて長いトゲに気を付けながら命懸けで収穫します。高いところが苦手だというショーンさんも挑戦し、なんとか実をもぎ取ることに成功。

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その実からは、すでにいい香りが。柚子の香りの秘密は皮。油胞とよばれる無数の点には、精油という香りの成分が凝縮されており、精油は一般的な柚子と比べ、枯木柚子の方が多いそう。

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ここで一番美味しい柚子の食べ方を教えてくれると川島さんが案内してくれたのは、目の高さになっていた樹齢100年の枯木柚子。すると柚子を枝につけたまま手で揉み、中で果汁がたまるのを感じ......そのまま口をつけ、果汁を一気に吸い始めました! 「めちゃくちゃ美味い!」と川島さん。挑戦したショーンさんも、「美味しいです!」とにっこり。「こんな贅沢な柚子の食べ方があるなんて知りませんでした!」と、最高の鮮度でいただく柚子に大満足。

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その夜は、川島さんの親戚が集まってショーンさんの歓迎会を開いてくださいました。食卓には、枯木柚子を使った川島さん特製のポン酢をたっぷりかけた旬の戻りガツオに、見た目の美しさと香りづけのために柚子を器として使った柚子釜など心づくしの料理が並びます。

ここで、自らを「柚子馬鹿」と称する川島さんの話に。実は枯木柚子は収穫量が少ないため、市場に出しても値が付かないといいます。それでも川島さんは、柚子本来の味を知ってもらおうと全国を駆け回り、その存在をアピールして大昔からの種を守っているのです。

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「ショーンさんみたいな人が来てくれたことが良かったなと思った。だって、(枯木柚子を守る活動を)やってなかったら会えなかったもん」と川島さんが語ると、ショーンさんも「こちらこそ、とても幸せです。こんな情熱を持った方に出会えたのですから」と語り、握手を交わします。

別れの時。川島さんから柚子Tシャツと枯木柚子を使ったポン酢をいただくと、ショーンさんからは昨晩ホテルに戻って、川島さんへの感謝の想いを込めて作った柚子チーズケーキをプレゼント!

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「ありがとう! 素晴らしい時間でした」と感謝を伝え、感激する川島さんとハグを交わしました。

あれから2年......ショーンさんからのビデオレターを、川島さんと勝貴屋の皆さんのもとへ届けます。勝木屋のポン酢は、番組放送後しばらくは品薄の状態が続くほどの反響があったそう。

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早速、ショーンさんからのビデオレターを見ていただくことに。ご招待とほぼ同時に授かったポン酢ベイビーのジェイクくんを紹介します。ジェイクくんが手に持っているのは、川島さんからいただいたポン酢のビンについていた"柚子の飾り"。これには川島さんも、「大事にとってくれていた...嬉しいね」と感動。もちろん勝貴屋の瓶も大事にとってあります。

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帰国後、ますますポン酢愛が深まっているショーンさんファミリーですが、新型コロナによるロックダウンの影響を受け、生活に変化が起きていました。医師である奥さんは在宅でのリモート診察に。一方のショーンさんも家事と育児に加え、登校を控える子どもたちに毎日4時間勉強を教えています。そんな忙しい合間を縫って、柚子とポン酢の魅力を広めたいとブログに原稿用紙50枚以上の長編記事を執筆。すると、たくさんの反響があり、番組を観たカナダに住む日本人から、街で声をかけられたこともあったそう。

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さらにSNSなどで現地の日本人と交流を深める中、ショーンさんはある人との出会いを果たします。「特別な人」と紹介してくれたのは、カナダ在住の日本人・梶岡豊幸さん。20代の頃、広島からバンクーバーに移住した梶岡さんはが、故郷を思い出せるようにと自宅の庭で柚子をはじめとする柑橘類を育てていました。ブログの読者がショーンさんの熱意に感動し、梶岡さんを紹介してくれたそう。カナダで柚子の実が手に入らず困っていたショーンさんでしたが、近所で本物の柚子を育てる日本人に出会う奇跡が起きたのです!

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ショーンさんのポン酢作りにも進化が! 醤油を測り、勝貴屋と同じ北海道産の真昆布と日本産の椎茸を使います。カナダでは高級品ですが、勝貴屋で椎茸がいかに重要なのかを学んでからは、奮発して入れているそう。さらに梶岡さんから分けていただいた柚子を、一滴も残さず絞ります。ここで鰹節を入れ、教わった通り24時間寝かせてから、みりん、米酢などと合わせます。その後も教えていただいた手順で12種類もの材料を鍋に入れ、一晩寝かせたらショーンポン酢の出来上がり!

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「皆さんの感想を聞かせてください」と、ポン酢を送ってくれました。味見をした貴子さんは「以前とは全然違う! まろやかになりました。ここまでできるのはすごいことです!」と絶賛。

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さらに柚子を使った料理にも挑戦! 自家製ポン酢でいただくマグロのたたきに、昆布出汁に少量のポン酢を加えたポン酢柚子うどん、川島さんのお宅でいただいて感動した柚子釜も。デザートには柚子の果汁を入れた自家製アイスクリーム。柚子の皮を細かく切り、砂糖と一緒に煮つめて8時間乾燥させた砂糖菓子がトッピングされています。半日がかりで作ったショーンさんの自信作! 子どもたちも気に入ってくれた様子。勝貴屋のお孫さんからいただいたお箸は、長男のライアンくんが使ってくれていました。

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「僕には夢があります。まずは書き続けているブログを本にして、ポン酢や柚子が本当に優れた食品だと世界中の人に知ってもらいたいのです」とショーンさん。いつか、家族みんなでニッポンを訪れたいと語りました。

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ショーンさんをニッポンにご招待したらカナダで奇跡の出会いがあり、家事と育児に奔走しながら、ポン酢と柚子の魅力を世界に発信していました!

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