「モッタイナイけど捨てるしかない...」食品ロスのデータに含まれない”廃棄の現状”と生産者たちの葛藤:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

現場で奮闘する人たちの姿を通して、さまざまな経済ニュースの裏側を伝えるドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(毎週火曜夜10時)。2月23日(火)の放送では、さまざまなロス(廃棄)問題を特集。当事者たちの葛藤や工夫を重ねて苦境を打開する姿を追う。

雪の上に投げ捨てた花「廃棄するしかない」

花農家「堂前農園」(富山県高岡市)では、チューリップの収穫の時期を迎えていた。富山県は、チューリップの球根の出荷量全国1位。堂前農園では、年間約25万本のチューリップを出荷している。しかし、収穫する松永敏之さんは、手にしたチューリップの束を雪の上に投げ捨てた。「廃棄するしかない」と・・・。

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その理由は、花が開きすぎてしまっている、葉の一部が枯れているなど......。
市場が定める基準を満たしていないためだ。
これらは、チューリップ以外にも適用され、市場に出荷されず捨てられる花は、生産量の約2割に及ぶという。さらにこれに、新型コロナウイルスが追い打ちをかける。
結婚式がキャンセル・延期になるなど、花を使うイベントが軒並み中止になっているのだ。
松永さんは「本来ならまだ見られる花。自分がいろいろと手を掛けた花を捨てなければいけないのは、心にグサッとくる。もったいない」と肩を落とす。

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花農家を助けたいと動いたのが、全国に90店舗以上を展開する「ジャパン・フラワー・コーポレーション」(富山県射水市)の松村吉章さんだ。松村さんは、去年4月に「2020スマイルフラワープロジェクト」を立ち上げ、ホームページ上にて、廃棄予定の花を3〜6割引で販売、苦しむ生産者を支援してきた。松村さんは「我々も花を供給してくれる農家がいなくなると、先細りになることを心配している。少しでも農家の収入が増えてほしい」と、プロジェクトの意図を話す。
松村さんの会社には、廃棄されるはずだった花が届けられ、プロの技で可愛らしいブーケに変身。通常なら7000円ほどだが、30本入りで3850円とほぼ半値に。

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松村さんはさらにロスを減らそうと、サブスクリプション(定額制)を導入。
花の定額制サービスとはどのようなものなのか。

「肉屋さんの都合」で評判の豚が規格外に

モッタイナイ話は、畜産業界にも。「江戸屋養豚場」(神奈川県厚木市)では、約300頭の豚を飼育し、乳酸菌で発酵させた野菜を餌にすることで、豚肉の脂に甘みを出す工夫を凝らしている。ところが、この丹精込めて育てた「えどや豚」が、精肉業者には評価されないという。

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豚肉は市場に出荷する際、業界団体が定める格付けがあり、これで売買価格が決まる。
格付けのポイントは、背脂肪(脂身の厚さ)や肉質の締まり具合など。
えどや豚が評価されないのは、これが原因だ。

小原光貴さんは「味は抜群。どの養豚場のどの豚と比べてもおいしい。だけど市場や肉屋さんには評価されないのが現実」と嘆き、業界の規格について「はっきり言ってしまえば、肉屋さんの都合。肉屋さんが使いやすい肉を生産者に求めている」と話す。

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市場に出る一般的な豚肉は、背脂の厚さが1.5センチなのに対し、えどや豚は2.5センチ。
2.5センチだと、店頭に出す際、厚い脂身を精肉店で切り落とす手間が増える。
これが、規格外になってしまう理由だ。
もう一つ安く買いたたかれる理由である「肉質」・・・。そこにも驚きの理由があった。

ときには高級魚も!「深海魚の宅急便」

モッタイナイ話は、さらに海産物にも。駿河湾は、富士山から太平洋に鋭く落ち込んだ海溝で、最も深い場所は2500メートルにもなる。1000種類以上の海洋生物が生息する豊かさを誇るが、漁で獲れた魚が全て売れるわけではない。数が揃わない、知名度がないなどの理由で廃棄される「未利用魚」が、獲った魚の半分を占めるという。

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この未利用魚に注目した女性が。「地域おこし協力隊」の青山沙織さんだ。
これまで漁師が捨てていた魚を買い取り、福袋形式で全国に発送する「深海魚の直送便」を始めた。お値段、1箱5000円。

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ときにはアマダイやノドグロといった高級魚が入ることも。
宅配便を使ってその日のうちに発送し、1ヵ月に100ケース売れることも。
なじみの割烹民宿で教わったレシピをSNSにアップし、食べ方をも教えている。

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以前は、OLとして会社に勤めていたが「言われたことをやるより自分で発信を」と地域おこし協力隊に参加。地元漁師の評価も高く、戸田漁協長は「『村おこしをしよう』という考え方を持っているからしっかりしている。感心した」と話す。
青山さんに舞い込む依頼は実に様々で、ミシュランの星を持つ天ぷら屋さんや深海魚の生態を調べる大学からも。

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さらに番組では、未利用魚を活用するそのほかの現場も取材。
給食での提供や新たな商品開発など、廃棄されていた魚がどう生まれ変わるのかを追跡する。......今晩10時からの「ガイアの夜明け」で放送。どうぞお見逃しなく!

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