東南アジアの大学から人材を獲得するグリーンエネルギー専門のベンチャー企業

公開: 更新: テレ東プラス

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環境問題、貧困、ジェンダー、働き方...。国際社会は今、数多くの難題に取り組んでいる。こうした中、持続可能な社会の実現のために国連サミットで採択されたのが2016年から2030 年までの国際目標「SDGs」だ。

持続可能な社会・経済を作り上げるために、日本は何ができるのか。BSテレ東では『日経スペシャル SDGsが変えるミライ~小谷真生子の地球大調査』と題し、日本の進むべき道を考えるシリーズを2020年3月からスタートさせた。

12月18日の放送では、ベンチャー企業「afterFIT」が取り上げられた。

AI、ドローンを駆使した テクノロジーでメンテナンスをさらに進化

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北海道の大地に広がる白老町竹浦ソーラー発電所。このメガソーラー発電所は10月に稼働が始まった。グリーンボンド(環境改善事業に発行する債券)の枠組みで資金を調達し作られた発電所を管理運営するのがグリーンエネルギー専門の電力会社「afterFIT」だ。発電所で使用されている大容量蓄電池は自動車5万台分。日照時間などに左右され不安定な太陽光発電を安定させるのに貢献している。

太陽光発電所のメンテナンスは、北海道にいる技術者と東京にいるベテラン技術者がタッグを組み、二人三脚で行っている。遠隔リモートシステムを開発、実現することで、より進化したメンテナンス方法を確立している。

さらにメンテナンスにはAIも導入。機械学習で学ばせることで、いろいろな種類の複数の異常を自動で検知。また温度を検知するサーモカメラ搭載のドローンを使うことで、人間が丸一日かけていた作業が15分で済むようになったという。

ドローンは発電所の設計にも生かされている。ドローン撮影で建設前の土地の3Dモデルを作り、シミュレーターでパネルへの日射を分析。365日の日射のシミュレーションを行い、パネルの配置を調整して発電量を最大化する。

東南アジアの大学からトップ人材を獲得

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さらに「afterFIT」ではことし3月、ベトナム電力大学、ハノイ工科大学と連携した。再生可能エネルギー業界では人材不足が問題となっており、日本では2030年におよそ2000人の電気主任技術者が不足すると指摘されている。そこで目をつけたのが東南アジアのトップ大学だった。

ハノイ工科大学を訪れると学生たちは必死に日本語を学んでおり「日本で働いて太陽光電気のエンジニアになりたい」「夢はベトナムで太陽光の会社を作りたい」と話す。実務を伝授するのは元東京電力の執行役員、巻口守男さん。受講生はカリキュラム終了後、日本の電気技術者の資格試験を受ける。

ベトナム電力大学の学長は「今後のベトナムの電力産業は再生可能エネルギーが主力として発展します。私たちはとくに太陽光発電の人材育成に重点を置いています」と語る。

ベトナムだけではなく、マレーシア工科大学、インドネシアのガジャ・マダ大学と東南アジアで人材を探す「afterFIT」。その理由について谷本貫造代表は次のように語る。

「ベトナムに限らず東南アジアでは、日本で働いてみたいといまだに強く思ってくださる方が多い。もともと弊社はベンチャーなので、たとえば東大生であったり、なかなか良い人材が集まるのが難しい中で、ベトナム、インドネシア、マレーシアのトップ大学では、その学校でAIの研究をしている最高峰の人材が『日本に行きたい』と言ってくれる。本当はうちの会社じゃないんじゃないかと、日本に来たいだけではないかと思いつつも、良い人材を獲得できるチャンスがそこにはある。言語、文化の違いはありますが、そうしたトップの人材に来てもらえるのはベンチャーとしてはあり得ないところなので、非常にありがたい。会社自体は300人ほどなんですが、これから入ってくる人も合わせてベトナムの方で100人ほどいます」

世界が脱炭素社会に走り始めた今、再生可能エネルギーを持続可能なものにするためには官民、そして大企業、ベンチャーなどのあらゆる知見を有効活用する必要がある。

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