脳動脈瘤の権威・上山医師が教える<良い医者の見分け方3カ条>

公開: 更新: テレ東プラス

こんな症状が現れたら何科にかかればいい? 無理なくできる健康法ってあるの?――「主治医が見つかる診療所」(木曜夜7時58分から)は、皆さんが感じているさまざまな疑問に第一線で活躍する医師たちがやさしく答える、知的エンターテイメントバラエティです。

新春初のWEBオリジナル企画「主治医の小部屋」で取り上げるのは、いい医者の見分け方について。さっそくレギュラー医師として同番組に出演中の上山博康医師にお答えいただきました!

医療の究極の目標はQOLを考えること

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―― 先生が考える "いい医者" とはどのような医師でしょうか。「いい医者の真髄にあるべき3か条」のようなものがありましたら教えてください。

「私自身も師匠である医師から言われたことでもあるのですが、指導者の立場として、常日頃、若い先生に伝えていることが3つあります。

<その1 医者に面子(メンツ)は必要ない>

たとえば、手術をしていて手も足も出ないとなったときに、白旗を上げて退散するのは患者さんに対して面子が立たない。だから何かしなければと余計なことをしてしまうと、かえって患者さんの状態が悪くなることがあります。敵が思っていたより手強かった場合にはあっさり引くことも大事で、何もしなければ少なくとも患者さんが現状より悪くなることはありませんし、自分には難しかったとしても、できる人に治療を託すという次の手もあります。

ところが、残念なことに現実には同じ診療科の医師の間で患者さんを紹介することはほとんどありません。できるかできないかで "勝った、負けた"となり、歴然とした差として捉えられてしまうからです。私のもとにも神経内科や放射線科の医師から手術不能といわれた患者さんが紹介されて来院されることもあったのですが、不能とはその外科医にとってできないという意味。医師に面子はいらないというのは、すべて患者さんのためなんですね。

<その2 患者さん自身が受けたい手術(治療)をすること>

これは目線を患者さんに合わせるということです。よく家族の気持ちになれといいますが、ご家族であればどんな形であっても生きていてほしいと思うのが当たり前です。でも、自分だったらどうでしょう。かりに全身麻痺で寝たきりの状態になったとしても生きていたいと思うかどうかは、その人自身でなければわかりません。患者さんに対して自分だったらどうかという意識を持ち、患者さん本人の意思を尊重することが重要なのです。

医療に長けた名医といわれる人は、無駄な治療をしない、苦しめない医療をするなど、患者さん自身を尊重します。医療は治せる病気を治すことが目標ですが、治せない病気については "苦しめない" ようにするというのも医療なのです。たとえばがんの末期で激しい痛みを伴う場合、強い痛み止めを使うことで命を縮めることになるかもしれませんが、それは安楽死とはまったく違う概念ということになります。

実際、高齢者の8割以上の人は延命治療を希望していないともいわれており、病院で体中に管をつけたままでなく、やはり自宅で看取られたいと思っている方が多いようです。これからの医療は、少しでもご本人の意思を尊重した形をとれるように考えていく必要があるのだと思います。

<その3 医療の究極の目標を明確に自覚する>

医療の究極の目標は患者さんの命を永らえることではありません。50年近く医師をしていて明確に自覚しているのはQOL(Quality of Life)、つまり人生の質を保つために医療従事者は闘うべきだということです。目標は患者さんの望むQOLを具現化することであり、病気を治すことは結果としてそこに通じるのです。医療従事者に指導を行うときにはそのことを若いうちから自覚してほしいと伝えています。

有名かどうかではなく、"親友"になれるか

doctor_20210106_02.jpg画像素材:PIXTA

――反対に「こんな医者、病院は避けたほうがいい」、あるいは「セカンドオピニオンを受けたほうがいい」場合があるとすれば、どこで見分ければよいでしょうか?

「セカンドオピニオンというと聞こえはいいですが、あなたは信用できないからほかの医師を紹介してほしいと、医者に喧嘩を売っているようなものですよね(笑)。ひとつしかない命を本当にこの人を信じて預けていいのか迷うのは当たり前で、セカンドオピニオンは当然の権利ですが、同時に面子が立たないと感じる医師は少なくないのです。

なかには個人情報に関する資料だから渡せないという医師もいるようですが、一方で、気持ちよく紹介状を書いてくれる医師もいます。そういう人は患者さんのために医療をしていると明確に意識しているから嫌な顔をしないし、面子よりも患者さんのためにできることをしてあげようと思っているのです。無駄な検査をしなくて済むように検査結果を持たせてくれる医師は、いい医者だと思いますよ。

メールなどで、「いま治療を受けている医師が信用できるかどうかわからない」といった相談を受けることがあるのですが、その場合はわざとセカンドオピニオンに行きたいと言ってみてはどうかと伝えています。そして、"この先生が有名だから" と紹介状を書いてくれるようなら、謝ってその先生の治療を受け続ければよいのです。逆に医療情報を出し惜しみしたり嫌味を言われたりしたなら、別の医師を探すほうが得策でしょう」。

―― 名医にたどり着くのは大変ですね。

「いくらマスコミに取り上げられたり、腕が立つと評判だったりしたとしても、手術して容体が悪くなったときに駆けつけてくれない医師は役に立ちません。名医かどうかはほんのちょっとの差なのですから、たとえ有名でなくても24時間親身になって対応してくれる医師のほうが良いとは思いませんか?

患者さんにとっての名医というのは、いずれ沈んでいく自分の船から逃げ出さずに最後まで一緒に乗ってくれる人であり、そう信じきれる医者を見つけた人は幸運です。古くは『徒然草』で吉田兼好が友に持つべき人として医師を2番目に挙げていますが、本当の親友のような気持ちでなんでも相談できる主治医を持つべきだと思います。

ただし、信頼関係ができていればいるほど、いいことばかりは言わないはずです。親の言うことが子にとって耳が痛いことがあるように、耳障りに聞こえることがあるのならそれは図星で、改善しなければいけないことだからなんです。あえて厳しいことも言ってくれる医師があなたにとって必要な医者なのだと思いますよ」。

―― 上山先生、ありがとうございました。

【上山博康医師 プロフィール】
社会医療法人禎心会脳疾患研究所所長。1973年北海道大学医学部卒業。秋田県立脳血管研究センター、北大医学部脳神経外科講師などを経て、1992年から旭川赤十字病院脳神経外科部長。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医。
2012年4月から現職。著書に「すべてをかけて命を救う」(青春出版社)、「闘う脳外科医」(小学館)など。

※この記事は上山博康医師の見解に基づいて作成したものです。

今回お話を伺った上山先生も出演する主治医が見つかる診療所(1月7日木曜夜7時58分)は【芸能人消化器ドック&旬の免疫力アップ食材SP】!

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