無限の模様を生み出す...伝統技法「墨流し」の奥深い世界:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(毎週月曜日夜8時~)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今週は応援団「ニッポンにご招待したら人生が変わっちゃった!感謝のビデオレターが届いちゃいましたスペシャル!」をお送りします。

夢は押し寿司を出すレストランの開業!アルゼンチンで魅力伝えるフェデリコさん

最初にご紹介するのは、アルゼンチンで暮らすフェデリコさん。

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約2年前に出会ったフェデリコさんが愛してやまないのは、ニッポンの「押し寿司」。江戸時代に生まれた握り寿司よりも歴史が古く、その原型になったともいわれています。京都の鯖寿司や新幹線のお弁当で人気の柿の葉寿司など、腐りにくく美味しさが長持ちする押し寿司は、全国各地で独自の文化を築き上げました。

フェデリコさんのお宅にお邪魔すると、自分でも「寿司オタク」というほどニッポンや各地の郷土寿司に関する本がたくさん! 仕事は、和食専門の料理教室の先生。大好きな押し寿司はもちろん、様々な寿司も教えているそう。自宅でも週に1度のペースで押し寿司を作っています。

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フェデリコさんが押し寿司に出会ったのは、両親が経営するレストラン。メニューの中に和食があり、子どもの頃から大好きだったと話します。ニッポンで押し寿司作りを学ぶのが夢だというフェデリコさんをニッポンにご招待!

向かったのは山口県岩国市。フェデリコさんが自身の寿司研究ノートに記していた岩国寿司発祥の地。岩国寿司を食べてみたいというフェデリコさんの願いを叶えるために、岩国市観光振興課(※取材当時)の小田将さんに協力を依頼すると、地元で料理教室「桜工房」を開く森本佳代子さんを紹介してくださいました。

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フェデリコさんの来日1週間前には料理教室の生徒さんや市役所の方が集まって作戦会議。そこに岩国寿司で使う押し箱が到着します。

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日本一大きい押し寿司といわれる岩国寿司。地元ではウエディングケーキの代わりに振る舞われることもあり、その量はなんと160人前! 岩国寿司は、岩国初代領主・吉川広家が合戦に備え、保存が効く食べ物として作らせたそう。それを山の上にある城まで運ばせたことから別名・殿様寿司ともいわれています。

いよいよ本番当日。巨大押し寿司を作るため、朝、「桜工房」に続々と人が集まります。料理教室の生徒さんや友人15名に加えて伸ちゃんの名で知られるトランペッター・小笠原伸吾さんまで登場し、入念にお出迎えのリハーサル。フェデリコさんを迎える準備は万端です。小田さんお手製のアルゼンチンの旗を持ち、外で待っていると、ついにフェデリコさんがやってきました! 伸ちゃんの陽気な「聖者の行進」と歓迎の拍手に迎えられ、フェデリコさんは「信じられない!」と大感激。

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挨拶が終わると、早速岩国寿司作りに取りかかります。キッチンには160人分の材料が綺麗に準備してありました。

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5升のお米と50個の卵をはじめ、大量に用意された材料を見て、「そんなに使うんですか?」と驚くフェデリコさん。そしてもうひとつ、岩国寿司に欠かせない食材がありました。それは岩国を代表する名産品・岩国レンコン。初代領主・吉川家の家紋がレンコンに似ていることから重宝され、穴の数が多いことから"見通しが良い縁起物"とされています。

「フェデリコさんに採れたてを食べてもらいたい」という小田さんのはからいでレンコン畑へ。立派な岩国レンコンを掘らせていただきました。

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その頃「桜工房」は、160人前の食材準備で大忙し! 5升のお米を炊き、卵50個分の錦糸卵をホットプレートで作っていきます。岩国寿司の味の決め手となる"合わせ酢"作りは森本さんの仕事です。分量は体で覚えているそうで、手際よく作る様を見て、生徒さんたちも学んでいました。

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レンコン掘りから戻って来たフェデリコさんも、仲間に加わりお手伝い。採れたてのレンコンは酢漬けにします。料理教室の先生だけあって手際がよく、甘く煮たしいたけを薄くスライスすると、森本さんも生徒さんたちもその速さにビックリ。

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準備開始から6時間が経過した午後4時。すべての具材が揃い、いよいよ押し箱に詰める準備が整いました。すると、「郷土料理とはいえ、普段なかなか岩国寿司を見ることはできない」とのことで、「桜工房」にご近所の方が続々と集まってきました。着物に着替えたフェデリコさんが登場すると、集まった40名の皆さんが拍手で迎えます。

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森本さんに教えていただきながら、シャリの上に色鮮やかな具材を敷き詰めていき、1段目が完成。

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これを5段作っていきます。最後の1段は地元の子どもたちにも一緒に詰めてもらい完成。続いて中の空気を抜く作業に。岩国寿司は押し箱のふたの上に新品の足袋を履いた男性が乗って空気を抜くのが伝統。食べ物の上に乗るのは気が引けるというフェデリコさんですが、伝統に従って上に乗ると、「お~!」と歓声が沸き上がりました。

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最後に型を抜きますが、中は密封状態のためかなりの力が必要。「がんばれ、がんばれ」という声援の中、最後にそ~っと型を抜くと伸ちゃんのファンファーレが鳴り響き、拍手と歓声の中、岩国寿司が完成!

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地元の名産・岩国レンコンをはじめ、山の恵みと瀬戸内海で獲れた魚を使う押し寿司の重さはなんと7.5㎏! 殿様寿司と呼ぶにふさわしい迫力です。「驚きと感動、そしてみなさんと作れたことが嬉しいです」と感動するフェデリコさん。取り分けて集まってくれた皆さんに振る舞い、余った分は近所の方々にお裾分けします。これも岩国ならではの習わしです。

夜8時。フェデリコさんも念願の岩国寿司をいただきます。「本当に美しいお寿司です。美味しいです」とその味をかみしめます。

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「このお寿司はひとりではできません。みなさんの愛情がたっぷり入っています」。「桜工房」の皆さんとアルゼンチンから持って来たマテ茶を飲みながら盛り上がります。

翌日。日本三名橋の一つ錦帯橋の前に、お世話になった皆さんが集まっていました。「前々からの準備、そして昨日の素晴らしい1日...すべて心に刻み、決して忘れません」感謝の気持ちを伝えると、アルゼンチンのお土産と共に9年前から使っているマテ茶カップをプレゼント。「これを岩国に置いていきますので、いつかまたマテを飲みましょう」と再会を約束します。岩国の皆さんからは、家庭用の押し箱をプレゼントしていただきました。

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あれから2年。フェデリコさんからのビデオレターを森本さんと岩国の皆さんのもとへ。小田さんのはからいで公民館とスクリーンを貸していただき、映画館さながらに上映します。「皆さんと一緒に岩国で過ごした時間は本当に愛おしく、思い出すと胸がいっぱいになります」とビデオレター冒頭ですでに涙目。岩国の皆さんは「彼らしいね」と、お別れの時も涙が止まらなかった姿を思い出した様子。

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「まずは皆さんに紹介したい人がいます」と登場したのは、3か月前に生まれたノア・セイタロウ・フェデリコ・ベジョ・比嘉くん。日系人の奥さま・マリアナさんとの間に生まれた待望の男の子です。「岩国に行ったおかげで神様が授けてくださったのだと思っています」。

帰国後、ニッポンで押し寿司を学んだことが口コミで広がり、料理教室の生徒が25名から55名に増えたそう。ところが、新型コロナの影響で料理教室は閉講せざるを得ない状況に。

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「みなさんが教えてくれた岩国寿司はもちろん、日本食の素晴らしさをもっと知ってほしい。それを広めることが私の使命だと思っています」と諦めず、新たにオンラインでの料理教室を始めたそう。まだ生徒数が少ないため、収入はかつての3分の1ほどですが、それでも押し寿司への情熱は消えていません。

そして、自宅で岩国寿司を作ってくれました。「押し箱をいただいた時は夢かと思いました。まさかアルゼンチンで岩国寿司を作れる日が来るなんて...」。しかしニッポンと同じ食材をアルゼンチンで集めるのは容易ではありません。手に入れることができないコハダはペヘレイという淡白で酢に馴染みやすい淡水魚で代用します。桜でんぶは5時間かけて一から手作り! 錦糸卵や煮しいたけも完成しました。「素材の量が多い岩国寿司こそ、ひとつひとつの作業が大切だと教えられました」。

岩国寿司の主役・レンコンは? アルゼンチンではレンコンが1年に1度しか手に入らないため、切って天日干しをし、長期保存しているそう。一度水で戻してから使います。

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お土産でいただいた押し箱に習った通りの順番でシャリとネタを詰めていきます。その出来映えは?

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その完成度の高さに、岩国の皆さんからは「外国でできているとは思えない」「エビもいいよね」と賞賛の声が上がります。南米で定番のエビと、アクセントにシソも加え、アルゼンチンで広まるようにアレンジされた岩国寿司。近所に住む奥さんの弟・レオナルドさんもやって来て、岩国寿司パーティーが始まります。「私はこの寿司が好きなんです。春の訪れをイメージするからです」とレオナルドさん。

フェデリコさんは「もっと質の良い具材を探して食材の存在感を引き出したいです。勉強が必要です!」とニッポンの岩国寿司に近づけるための研究に余念がありません。余ったお寿司は、もちろんご近所に配ります。

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最後は「帰国以来ずっと押し寿司のことを考えています。いつか自分が満足できるような寿司ができた時、アルゼンチンで本物の押し寿司が食べられるレストランを開きたいです。開店の際には岩国寿司パーティーを開くので、ご招待させてください。その日までお体を大切に!」と話してくれました。

フェデリコさんをニッポンにご招待したら、押し寿司の魅力をアルゼンチンの人々に伝え、レストランを開く夢に向かって走り出していました!

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