肥満の人は重症化リスクが高くなる...血管系の病気との関連性も? 名医が新型コロナを語る

公開: 更新: テレ東プラス

主治医が見つかる診療所」(木曜夜7時58分から)は、症状や病態に応じた専門的な治療法から生活の中での身近な健康法まで、皆さんが感じているさまざまな疑問に第一線で活躍する医師たちがやさしく答える、知的エンターテイメントバラエティです。

今回WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」に寄せられたのは、新型コロナウイルス感染症の重篤な後遺症の一つとして、医療関連ニュースでも目にするようになった血栓症に関する質問です。同番組のレギュラー・上山博康医師に、脳梗塞発症との関係性などについてお聞きしました!

血管系の病気を引き起こす可能性が

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Q:50代女性です。先日「新型コロナウイルスに感染した患者が脳梗塞を併発する症例が相次いでいる」というネットニュースを目にしました。新型コロナウイルスに感染した結果、血栓を引き起こすという報告が増えているとも書いてありましたが本当なのでしょうか。コロナと脳梗塞の関係性について、上山先生のご意見が伺いたいです。

―― 先生、新型コロナウイルス感染症には脳梗塞を合併するリスクがあるのですか。

「新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、今年6月には感染した子ども74例に川崎病に似た症状が現れたと米国で報告されています。川崎病とは全身の血管に炎症が起こる病気で、小児の心筋梗塞で知られるようになった原因不明の急性熱性疾患です。川崎病というと地名由来の病名のようですが、病気を発見した川崎富作先生の名前からつけられたものです。

新型コロナウイルス感染症で血管炎が起こることはヨーロッパでも報告されており、特に若年者(子ども)に見られる傾向があります。しもやけのように赤く血管が腫れる(炎症が起こる)と、そこに血小板が凝集し血栓ができやすくなるので、それが相談者の質問にあるように脳梗塞の原因になっている可能性が考えられます。

今のところはっきりとしたことはまだわかっていませんが、風邪のウイルスとして古くからあったコロナウイルスが今回新型に変異したのですから、新型コロナウイルス感染症と血管系の病気に関連性があっても不思議ではないのかもしれません。

ただ、もし重症化しやすい高齢者が肺炎ではなく血管炎による心筋梗塞や脳梗塞を合併して亡くなっているのであれば、これは大きな問題です。これからさまざまな症例が出てくる可能性もあるので注意が必要でしょう」。

―― 欧米諸国に比べて日本は感染者数も死亡者数も現時点では抑えられていますが、人種的な要因もあると考えていいのでしょうか。

「新型コロナウイルス感染症によって亡くなる人が欧米人に多く、東洋人に少ない背景には、人種的な違いがあるのではないかといわれています。一説には、ネアンデルタール人から受け継いだ遺伝子が重症化リスクになるといわれていますが、どの程度の関連性があるのかまで証明するのは難しいかもしれません。

一方で、先述した川崎病は日本人に多い病気です。また、脳の血管の炎症で生じる "もやもや病"(ウィリス動脈輪閉塞症)も日本人に特有的に多い病気で、同じく新型コロナウイルス感染症との関連性が疑われ始めています。今後、調査・研究が進められるのはないかと思います」。

肥満は感染だけでなく重症化リスクも高くなる

doctor_20201209_02.jpg画像素材:PIXTA

―― 新型コロナウイルス感染症との関連性がはっきりとわかっていることがあれば教えてください。

「新型コロナウイルス感染症でいえるのは、肥満と関連があるということです。欧米人の肥満は日本人の比ではなく、食習慣を見ても食べる量が多く、甘みが強いものを好む傾向がありますよね。肥満の人は肥満でない人に比べて感染リスクが高いうえに、重症化リスクも高くなることがわかっています。糖尿病あるいは糖尿病予備軍であったり、ほかの疾患を持っていたりすることも多いので、そういう人はさらに重症化しやすくなります」。

―― もうしばらくウィズコロナ(withコロナ)の状況は続きそうですね。

「今回の新型コロナウイルスが問題なのは鼻づまりを起こしたり咳が出て終わるのではなく、肺炎を起こすことです。スペインかぜに始まったインフルエンザも、肺炎や急性脳症などの合併症を起こして死亡する危険性がありますが、学級閉鎖などをすることで児童・生徒間の感染を防ぐ対策をとることができます。

ところが新型コロナウイルスの場合、かりに子どもが感染したとしても軽い症状で済んでしまうことが多いため、かえって感染症が広がりやすくなるのです。エボラ出血熱のように致死率の高いウイルスは人に感染させる前に本人が死亡してしまいますが、多くの人が軽症で済むことが感染を拡大させるわけですね。

さらに、感染した人のすべてが感染症を広げているわけではなく、特定の広げるタイプの人がいるということもわかってきています。自分は無症状または軽症のまま、通常より多くの人にウイルスをまき散らす、スーパースプレッダーと呼ばれる人です。

繰り返しますが、新型コロナウイルスで怖いのは肺炎を起こして死亡してしまうことなので、その部分の対策をまずは考えるべきでしょう」。

―― 上山先生、ありがとうございました。

【上山博康医師 プロフィール】

社会医療法人禎心会脳疾患研究所所長。1973年北海道大学医学部卒業。秋田県立脳血管研究センター、北大医学部脳神経外科講師などを経て、1992年から旭川赤十字病院脳神経外科部長。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医。

2012年4月から現職。著書に「すべてをかけて命を救う」(青春出版社)、「闘う脳外科医」(小学館)など。

※この記事は上山博康医師の見解に基づいて作成したものです。
今回お話を伺った上山先生も出演する主治医が見つかる診療所SP(12月10日木曜夜7時58分)は「コレステロールドック&冬の健康食材&血圧の新常識」!

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