がんの早期発見は自治体の健康診断で可能か? 子宮、肺、あと2つは? 定期的に受けたい<がん検診4>:主治医の小部屋

公開: 更新: テレ東プラス

木曜夜7時58分から放送中の「主治医が見つかる診療所」は、皆さんが知りたい医療の疑問に第一線で活躍する医師たちがやさしく答える、知的エンターテイメントバラエティ。毎回、病院の選び方のコツや今すぐできる健康法などを、最新情報を交えて発信しています!

さて、今回のWEBオリジナル企画「主治医の小部屋」には、がん検診に関する疑問が寄せられました。自治体検診を受けるだけで早期発見できるものなのか、専門クリニックでの検診と発見率に差が出たりするのか気になりますよね。さっそく、同番組レギュラー・秋津壽男医師に相談してみましょう!

家系的になりやすい病気を把握することが先決

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Q:40代になったばかりの女性です。年に1回、大腸がんと乳がんの自治体検診を受けています。同年代の友人から人間ドックでがんが見つかったという話を聞いたりすると、自治体検診だけで本当に大丈夫なのか少し不安に思うようになりました。早期発見のためにはやはり専門のクリニックなどで人間ドックを受けたほうがいいのでしょうか?

―― 先生、がん検診は実施する医療機関によって検査に差があったりするのですか。

「はじめにお話しておきたいのですが、がん検診を受ければ "100%がんが見つかる" というわけではないんですね。さらに、より高額な料金の人間ドックに行けば100%がんを早期に発見できるのかというと、そういうことでもありません。3,000円の検診と3万円の検診では若干正解率に差が出る可能性はありますが、どんなに高額な人間ドックに、どんなに頻繁に検診したとしても、100%には届かないということは知っておいてほしいですね。

ただ、何もせずがんを発見できる確率は0%です。たとえば宝くじだって買わなければ100%当たりませんし、100枚買ったからといって必ず1等が当たるわけではないですよね。1億円以上買っても1億円が当たらないことだってある。同じようにがん検診もどこまで手間をかけて、どこまで精度を上げるかということを考えるべきであって、検診自体を受けることをしないという選択はよくないのです。もちろん、高ければいいというものでもありません」

―― 最低でも受けておいたほうがよいがん検診というのはあるのでしょうか。

「必要最小限、自分の財布と相談しながらこれだけは受けてほしいというのが、肺がん発見のための胸部レントゲン検査、肝臓がんやすい臓がんなどで数値によって異常が見つかる血液検査。女性の場合なら乳がん、子宮がんの婦人科検診です。基本的にこれら4つを受けることができれば、自治体検診であっても人間ドックであってもかまいません。

もし4つとも自治体検診を実施しているところに住んでいるのであれば、それは受けないと損です。たとえば都内の一等地にある検診センターで調べるのと同等の検査が、自治体でなら5分の1くらいの金額でできます。この差額は自分たちが支払った税金が回りまわって還元されているのですから、受けないと損なのです。

では、がん検診は4種類で十分なのかというと、この時点でせいぜい50〜60点くらい。ここにさらに検診の種類を追加して70点、75点にすることはできます。ただし、やはり100点になることはないのです」

―― 相談者の場合、どんながん検診をしておくと安心ですか。

「この方は、乳がん検診は受けていますが、子宮がん検診はしていないようですね。たとえかかりつけの内科があって、週に1回通院しているとしても、内科の医師が子宮を診ることはありませんし、診察するといわれても嫌ですよね(笑)。

婦人科系のがんは見逃されやすいので、乳がん検診と子宮がん検診は自己責任で必ず受けることをおすすめします。懐事情で毎年は無理かもしれませんが、日本ではほぼすべての自治体で実施しているので、まずはそれを受けるようにしましょう。血液検査とレントゲンについては毎年1回受けられますので、それを利用するとよいと思います。

次に、プラスする検診についてですが、まずは検診にかけられる予算を自分なりに立てておきます。たとえば、今年は1万円と決めたら自治体検診で2,000〜3,000円使い、残りを家系に多い病気の検診費用とします。祖父母が脳梗塞になった、姉が肝臓がんだったなど、うちの家系はよそと違って〇〇病に注意が必要な家系だという情報を集めておき、脳卒中家系なら脳のMRIを受けるというようにスペシャルを追加します。MRIは少々高額なので出費がつらいようなら、3年に1回受けるようにするなど工夫するといいでしょう。

イメージとしては基本定食が自治体検診、そこに自分なりのスシャルメニューを上乗せしていく感じです。こうしておけば、家系にまつわる検診をひととおりチェックした後に、今年はまったく違う検診を受けてみようということもできます。PET検査をするとか、便から腸内細菌のバランスを調べる腸内環境検査をするとか、余裕があれば試してみるとよいと思います。

親族の病気については、親が元気なうちにどんなことで亡くなった人が多いのか聞いておきましょう。結婚式や法事など親戚が集まる機会があれば、そこで聞いてみるのもひとつの方法です。祖父母、おじ・おばくらいまで、2等親から3等親が目安です。
家系の情報は、名医にかかろうが、超高級ドックに行こうが関係なく、その人しか知らない重要な医療情報だということを覚えておいてください」

年代ごとに受けるべき検診は変わる

doctor_202001111_02.jpg画像素材:PIXTA

――相談者は今40歳ということですが、年代ごとに受けたほうがよい検診も変わるのでしょうか。また男性の場合はどうですか。

「若い人で飲みすぎなどが心配なようなら肝臓がん、60歳を過ぎた男性なら前立腺がんですね。女性は、閉経するまでは女性ホルモンのおかげで脳梗塞・心筋梗塞は少ないのですが、50歳を過ぎた頃から男性と同じように増えてきます。骨粗鬆症も50歳くらいから始まってくるので、骨の検査もプラスαで加えるといいでしょう。

がんとは別の話になりますが、生活習慣病が気になる年齢になったら生活習慣病(成人病)健診もぜひ受けておくことをおすすめします。

―― 自治体検診だけでもさほど心配はいらなさそうですね。

「自分の家系や年齢のことを考えて組み合わせることができれば、自治体検診だけでも問題はないですよ。それより毎年受け続けることが大事です。できればあまり浮気せずに1カ所で受け続ける、もしくは過去のデータを自分で保管しておいて、その推移がわかるようにしておきましょう。同じ場所で検診(健診)を受けていると、前回より悪くなっていた場合にコメントがついてきたりしますが、受けるたびに毎回初回では、検査データの推移がわかりにくくなってしまう可能性があります。
数値のちょっとした差というのは言葉では把握しにくいですが、血液検査データなども数字で並べてみると変化がわかりやすいですよね。せっかく受けた検診(健診)なのですから、データは自分で整理しておくように心がけましょう」

―― 秋津先生、ありがとうございました。

【秋津壽男医師 プロフィール】
1954年和歌山県生まれ
1977年大阪大学工学部発酵工学科卒業 1986年和歌山県立医科大学卒業
1998年秋津医院を開業
日本内科学会認定総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医
日本医師会公認スポーツドクター 日本体育協会公認スポーツドクター
日本禁煙学会認定禁煙専門医
著書に「本当に怖いのは、第三の脂肪」(幻冬舎)、「薬を使わずに『生活習慣病』とサヨナラする法: 医師が教える『自己治癒力を高める』コツ」(三笠書房)、「こわい病気大全」(ダイアモンド社)など。

※この記事は秋津壽男医師の見解に基づいて作成したものです。

今回お話を伺った秋津先生も出演する主治医が見つかる診療所SP(11月12日木曜夜7時58分)

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