1枚1枚すべて手作り! 年間10万枚売れる老舗の「草加せんべい」:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(毎週月曜日よる8時)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は「ニッポンにご招待したら人生が変わっちゃった!感謝のビデオレターが届いちゃいましたスペシャル」をお届けします。

せんべいの曲まで自作するイタリア人女性

まずご紹介するのは、イタリア北部の町・ラヴェンナに住むクラウディアさん。

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今から2年半前に出会ったクラウディアさんが愛してやまないのが、ニッポンの「せんべい」。自宅を訪ねると、9歳年上のご主人・ミケーレさんと笑顔で迎えてくれました。クラウディアさんとせんべいの出会いは10年前で、ニッポンに行った友人のお土産でもらい、虜になったそう。「米や醤油を使って作るニッポンのおやつはイタリアでは全く考えられない特別なものです。初めて食べた時、美味しくて感激しました」と話します。

ニッポンを代表するお菓子「せんべい」。ニッポンでは、古くから余った米を保存するために米を蒸し、塩を練りこんで焼いた「塩せんべい」が作られていました。江戸時代になると醤油の製造が始まり、焼いたせんべいに醤油を塗るように。それが日光街道の宿場町である草加宿などで売られ、全国に広まったといわれています。

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クラウディアさんはせんべいを自作し、さらにご主人とせんべいのオリジナルソングまで作っていました。

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これだけせんべいを愛していながら、まだニッポンに行ったことがないというクラウディアさんをご招待! まず向かったのは埼玉県草加市。醤油の香りとしっかりとした噛み応えが特徴の「草加せんべい」が人気で、50軒ほどのせんべい屋さんが軒を連ねています。そのほとんどが"生地作り"と"焼き"を専門にするお店に分かれていますが、創業113年の「小宮のせんべい」は、全国でも数少ない生地作りから焼きまで行うお店。今回、家族で営むこちらのお店が、クラウディアさんを受け入れてくださることに。出迎えてくださったのは、五代目・菊地友成さん。

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お店の中では、四代目・小宮務さんがせんべいを焼いていました。「小宮のせんべい」は一枚一枚すべて手焼き。一番人気の「沖の石」は、年間10万枚を売り上げます。

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「沖の石」の焼きたてをいただいたクラウディアさんは、「いい香りがします! とてもおいしいです!」と焼きたてのおせんべいに大感動。

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「歯ごたえがあって醤油の味がかすかにします」と伝えると、菊地さんが「お米を活かしたおせんべいを作っているので、醤油を強くしすぎるとお米が負けてしまう」と教えてくれました。

翌朝6時、せんべい作りを見せていただくことに。クラウディアさんは用意してくれた割烹着に着替えます。原料はご飯と同じうるち米で、「草加せんべい」は、関東近県で収穫されたお米を使うことが条件。「小宮のせんべい」では、コシヒカリよりも粘りが強い「彩のかがやき」を使用しています。生地作りの前日にお米を洗い、製粉機にかけ、米粉に加工します。うるち米は餅米と違って一度米粉にしないとお餅にならないそう。米粉をお湯と練り合わせて攪拌し、拳サイズの「練り玉」を作ります。こうすることで蒸しやすくなるとのこと。練り玉を蒸し器に入れ、蒸気で1時間ほど蒸します。

蒸している間に道具の手入れをする職人さんを見て、「道具を掃除するんですね!」とクラウディアさん。すると小宮さんは、「掃除って形じゃなくてここについているもの(米粉)をきれいに取っている。農家の方が一生懸命つくってくれているから我々も無駄にはできない」と教えてくださり、残っていた米粉を集めてまとめていました。

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それを聞いたクラウディアさんは「技術だけではなく、みなさんの心構えもすばらしいです」と感心していました。

蒸し上がった練り玉をついてお餅にしたら、型取り機に通して薄い生地に...。

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出来上がった生地は丸2日天日干しをした後、焼きの工程へ。「全部炭火の手焼きで焼くのがうちのせんべい。醤油も手付けで塗っています」と菊地さん。

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火力が長時間安定する炭火を使い、押し瓦という陶器で生地を平らにしながら形を整えます。この押し焼きも「草加せんべい」ならでは。目と箸先の感覚で焦がさないようひっくり返していきます。クラウディアさんも手焼きに挑戦!

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「上手!上手!すごく良い色になっている」と菊地さん。醤油は焼き上がった熱々のせんべいに塗ると染みこみ過ぎず、お米の味を損なわないそう。自分で焼いたおせんべいの味は?

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「自分を褒めてあげたいです!」と言ってしまうほどおいしかったよう。

別れの時。涙があふれてしまい、なかなか言葉が出てこないクラウディアさん。

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「日本人でも全然わからないおせんべいのことに興味を持ってくれて、一から知ってもらって 逆にすごく有り難かったし嬉しかったです」と話す菊地さんがクラウディアさんにプレゼントしてくださったのは、見学で着た割烹着とせんべいを返す金属製の箸、そして押し瓦!

あれから2年半。クラウディアさんからのビデオレターを「小宮のせんべい」の皆さんに届けます。

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クラウディアさんが「皆さんからいただいた宝物を飾っています」といって見せてくれた一角にはニッポンの思い出が所狭しと飾られていました。見学で着た割烹着は一度も洗っていないとのこと。小宮さんのところでついた醤油の染みも「これは最高の思い出です。洗濯するなんてありえません」と笑顔で見せてくれました。

早速自宅のキッチンでせんべいを作ることに。使うお米は「ヴィアローネ・ナノ」というイタリア米。デンプンが豊富で味に深みと甘味があり、日本米に似た品種だそう。まず米をフードミルで粉末状にし、出来上がった米粉にお湯を入れて攪拌し、蒸していきます。「米一粒たりとも無駄にしない!ですよね」と言いながらスプーンについた材料も集めて使っており、小宮さんの言葉が守られていました。

お餅をつく道具がないので、モルタイオと呼ばれるトマトソースを作る道具で餅玉を作り、型取りにはトルティーヤを焼くプレートを、乾燥にはノンフライヤーを使っていました!

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専用の道具がなくてもせんべいの生地が出来上がりました。続いてプレゼントしていただいた押し瓦を使って焼いていきます。

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焼けたせんべいに醤油を塗り...完成!

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最後にご主人のミケーレさんとせんべいの新曲「草加ダンス」も披露。小宮さんは「イタリアに帰ってからも一生懸命おせんべいのことを思っていただいて本当にありがとうございます。また日本に来るようなことがあったら『小宮のせんべい』を訪ねてください」と伝えました。

イタリアでせんべいを広めたい!

クラウディアさん、お次は青森県八戸市へ。「ニッポンのせんべいについて勉強した時、南部せんべいを知りました」と話していました。こちらが青森県八戸発祥の「南部せんべい」。古くから東北の人たちに愛されてきた小麦粉を原料としたせんべいです。

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今回クラウディアさんを受け入れてくださったのは、伝統を守りながら家族で営んでいる「上舘せんべい店」の皆さん。

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「上舘せんべい店」は創業65年。一雄さんは二代目で、三代目は2児の母でもある娘の加菜子さん。早速ピーナッツ入りの「南部せんべい」をいただいたクラウディアさんは、その風味と味に「とても美味しいです!」とこの表情。

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こちらで作られるせんべいの数は1日4,000枚。工場と戸を一枚隔てて生活する昔ながらの風情を残すお店です。かつて八戸に100軒あったせんべい屋さんも今は15軒に。「上舘せんべい店」は貴重な一軒なのです。

クラウディアさん、早速加菜子さんに「南部せんべい」の作り方を教えていただきます。かつて八戸はお米ができづらく、小麦や蕎麦を育てていました。それを粉にして焼く文化が発達。八戸の人たちにとってせんべいとは"小麦粉を焼いたお菓子"のことを指します。

水と塩と小麦粉を練った生地を餅切り機で団子にし、のし棒を使って平たくしていきます。焼くのは専用の炉。

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2枚の鋳型に生地を挟むと120度に暖められた炉の中を一周し、約5分で「南部せんべい」が焼き上がります。作業をしながら加菜子さんとクラウディアさんはいろいろおしゃべり。加菜子さんが35歳でクラウディアさんが34歳、ご主人がそれぞれ42歳と43歳ということが分かり、より一層お互いを身近に感じたよう。「昔からの友人と話しているようです」とクラウディアさん。

別れの時。加菜子さんがクラウディアさんに宛てた手紙を読んでくれました。「日本のせんべいに興味を持ってくれたことに心から感謝します。父の歳を数えると、そろそろ自分の代に引き継がれることを現実的に感じるようになり、不安に思う日々もあります。そんなとき、あなたの話を聞いた私はとてもワクワクしました。あなたの勇気によってこうして出会えたこと...それは私の仕事に向かう勇気に繋がりました。本当にどうもありがとう!」心のこもった手紙に涙を浮かべるクラウディアさん。そして、一雄さんから「南部せんべい」の手焼きセットをプレゼントしていただきました。

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あれから2年半。クラウディアさんからのビデオレターを一雄さんと加菜子さんのもとへ届けます。「加菜子さん! あなたは友だちのように私の心の中にいる存在です。出会った時はずっと前から知り合いのようでしたね」と始まったクラウディアさんのビデオレター。実はある報告が...。
「私の大切な家族を紹介したいと思います」と話していると、ハイハイをしながら男の子が登場!

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去年6月、クラウディアさんは長男・エネアくんを出産していました。
そして、自宅のキッチンで「南部せんべい」を作ることに。帰国後何回も作り、お友だちからの評判もいいそう。作った生地をプレゼントでいただいた「南部せんべい」専用の鉄板に入れて片面ずつ焼くと...。

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見事な「南部せんべい」が焼けました! その後は生でビデオ電話が繋がり、クラウディアさんが焼いて青森に送った「南部せんべい」をお2人に食べていただきました。

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「私はニッポンの素晴らしいせんべいをイタリアに広めたいです。そしていつかイタリアでせんべいを販売する目標があります」とクラウディアさん。一雄さん、加菜子さんから「お互い頑張りましょう!」という温かい言葉をいただきました。クラウディアさんをニッポンにご招待したら、「イタリアでせんべいを広めたい」という夢が動き始めていました!

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