「おじさんになったオードリーだからできる」佐久間宣行プロデューサーに聞く「あちこちオードリー」裏話

公開: 更新: テレ東プラス

テレビだと忘れて不用意発言連発! 「ライターがすげぇ見てる」ためネットニュースをにぎわすこともしばしば、オードリー若林正恭春日俊彰)とゲストがぶっちゃけトークを繰り広げる「あちこちオードリー」(毎週火曜深夜1時35分放送)。若林の「楽しい番組ほどすぐ終わっちゃう」との改編期存続の心配も吹き飛ばし、この度、祝1周年! これを記念して10月28日(水)には初のオンラインイベントも開催する。

ゲストの他では聞けないホンネが飛び出し、これまで知らなかった人間味あふれる一面も見られると話題のこの番組。楽しくて、聞いて欲しくて、ついついしゃべっちゃう......そんなオードリーのトーク番組MCとしての魅力とは? 佐久間宣行プロデューサーに話を聞いた。

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おじさんになったオードリーだったらできるトーク番組

──オードリーさんがMCで、打ち合わせも、事前アンケートも、収録時間のしばりもないトーク番組「あちこちオードリー」をやろうと思われたきっかけは?

「若林くんとは『終電ごはん』『SICKS』『ご本、出しときますね?』(※注1)と定期的に番組をやっていて、賞をいただいたり本になったり、僕らとしては面白い番組を作れていると思っていて。若林くんから、40歳近くなって『昔は自分に精一杯で他人の人間性に興味を持てなかったけど、今は人に興味がある』という話を聞いて、大人になった、おじさんになったオードリーだったらトーク番組ができると思ったのが発端ですね。

元々、打ち合わせも、事前アンケートもないトーク番組をやってみたかったのですが、やってくれるMC、できるMCはそういない。ずっとやってみたかったことと、今のオードリーの人間性が合致したので、やってみようと」

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──ゲストの方が他では話さないこともついしゃべってしまう、オードリーさんのトーク番組MCとしての魅力はどんなところですか?

「ラジオを毎週10年以上やっていてフリートークのスキルが高いことと、ゲストを迎えたときの"面白がる"感じですね。ちょっと前までは、ゲストをどう"イジる"かがMCの腕前だったけど、オードリーはゲストの長所や短所といった凸凹を一緒に"面白がる"んですよね。

楽しむ、受け入れる、引き出す、共感する、若林くんの人間力ですね。若林くんは、ラジオでも"変わっていく"ということを発信していて。『おじさんになって人見知りじゃなくなった』『世の中をナナメに見る目線が徐々に薄れてきた』『もう人のこと憎めません』と正直に言うドキュメント芸人みたいな側面がある。そうした変遷が人間経験を豊かにしているからトーク番組ができるんじゃないかなと思いますね。

そして春日の存在が大きいですね。若林くんひとりだと、ゲストも"若林くんに笑って欲しい、共感して欲しい"と構えるけど、春日はそういう機微の人じゃないので"好きなこと話していいんだ"と思うんですよね。あと、春日って実はよく笑うんです。だから話しやすいんじゃないかな。

オードリーは懐に入るのがうまいんですよ。オードリー自身の懐が深い上に優しいので、みんな気を許して好きなことがしゃべれるんだと思いますね」

"コンテンツ全部見る男"の番組の作り方

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──セット内には、若林さんが自らの不用意発言を戒めるための「この番組はラジオじゃない」との注意書きがありますが、実は、佐久間さんはゲストの方に「ラジオだと思って話していいよ」とおっしゃっているとか(笑)。この他にも話しやすくなるような佐久間さん流の場の空気作り方や、番組作りの秘密はありますか?

「『ラジオだと思って話していいよ』と言っているのは本当ですが(笑)、特に何もないんですよ。しいて言えば、ど真ん中で僕が笑ってる。ゲストのちょっと目に入るところにいて、よく笑う......というか単純に楽しんでるだけですけど。

セットは、話やすいようにこじんまりした空間に。編集については、2週に渡っての放送なので、前後編のバランスを考えてそれぞれにカタルシスがあるようにしたいのと、不必要に炎上するかもしれない発言が出た時は意図を曲解されないよう気を遣うくらいで。あとは現場が面白いから変にこねくり回さず出そうということくらいですかね。

この番組に関しては、"できるだけ気楽にやってもらおう"というのと、"オードリーを信じる"、それだけです。他の番組でも、長年やってもらってるMCの方に関しては絶対的に信用していて、僕とは違う道を選んでも、彼らが選ぶんだったら面白くなるだろうと思うので、どうぞどうぞ、と。

僕は芸人さんと飲みに行くタイプではないですが、番組に出てくれた人が面白くなって何か得になれば、また出てくれると思うので、出たことによって損になることはやめようというのは常にありますね。自分が面白いものを見たいから、そういう環境の方がのびのびやってもらえると思うので」

──「ゴッドタン」はじめ数々のお笑い番組を手掛ける佐久間さんですが、芸人さんと飲みにいかないのは理由があるんですか?

「行ったら楽しいんですけど。昔の話ですが、芸人さんやMCの方と飲みにいって、飲んだ席でMCの方が言った企画をやる番組を見ていたので、それは違うかなと。あと、あまり仲良くなりすぎると、その人がつまんなくなった時、つまんないのに仲いいから仕事するっていうのも、お互いイヤだなというのもあって。たまにでいいかなと。

そもそも僕は誰も誘わないんですよ。ADの頃からずっと、会社の人とも飲みに行かない。『今日、スター・ウォーズ公開日なんで帰ります』っていうタイプなので(笑)」

──この番組で若林さんが、佐久間さんのことを"コンテンツ全部見る男"とおっしゃってましたが、いろんなものを観るのに忙しいというのもありますか?

「確かに、それはあると思います。コロナ禍以前は週に2本くらい芝居を観に行っていたので。映画も年に80~100本観るし、ネット配信ドラマはもっと、ラジオも聴くし......」

──それはコンテンツを作る側として、企画のためにもいろいろインプットしておきたいということからですか?

「いや、この仕事を始める前からずっと好きで観てますね。企画に関しては、インプットしたものの中からアウトプットが出てくるというより、やりたいことを実現するために今までのインプットが役立つイメージですね。 最初に"自分が面白がってるこの瞬間を実現する番組は何だろう"と考えることが多いのですが、それを実現化するためのアイデアとして、これまでたくさん見たものの引き出しから、これを掛け合わせればいいんじゃないか、と」

──今年6月のテレビ東京の配信イベントで、今後目指すところについて他のプロデューサー陣が番組作りのお話をされる中、佐久間さんは「リスナーに寄り添えるパーソナリティになりたい」とラジオパーソナリティとしての抱負をおっしゃっていたのが印象的で(笑)。「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」での経験はテレビの番組作りに影響はありますか?

「全く別で、ラジオは憧れだったので人生の中のお祭りみたいなものだと思っています。ただ、最初は何の意図もなくラジオ自体が好きでやっていましたが、出演者の気持ちも前以上にわかるようになってきたのもあるし、作り手が発信した方が番組を見てくれる世の中なんだと気づいたので、チャンスは増えたと思いますね」

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──オードリーさんも佐久間さんも「オールナイトニッポン」のパーソナリティをされていますが、ラジオの未来はどのようにお考えですか?

「音声コンテンツは、ここからいろいろな可能性あると思いますね。まずローバジェット(低予算)で作れるというのと、スマホで他のことをやりながら手に入れる情報としては都合がいい。日本はこれからの高齢化社会、老眼で文字が読みづらくなるので音声を聴く社会になるんじゃないかなと」

オンラインイベントは「反省ノートスペシャル」

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──この番組でゲストの方の知らなかった一面を見て、この人とこんな番組をやってみたいと新たな企画がひらめいたことは?

「ハライチとオードリーがものすごく相性がいいので、この2組の番組を作ってみたいという気持ちが沸きました。東野幸治さんとも番組やりたいと思うし、他にもたくさん......。『あちこちオードリー』に出てくれた方のこと、みんな好きになっちゃうんで。芸能人も仕事ですからね。仕事するって、みんな大変なんだなと、この番組が気づかせてくれました」

──10月28日(水)のオンラインイベント「祝!あちこちオードリー開店1周年パーティー~春日の店、今夜は完全予約制ですよ!~」はどんなことを? 配信ならではの見どころも?

パンサーがゲストの回で、向井(慧)くんが反省ノートを書いているという話題になったので、オンラインイベントは向井くんをゲストに迎え、オードリーも反省ノートを書いてきて3人でそれを見ながらしゃべる『反省ノートスペシャル』です。収録と違って時間が自由なので、存分に好きなことしゃべってもらおうかなと思っています」

──この番組に限らず、配信イベントは今後も開催される予定ですか?

「これまでは生で感じること、生で会うことの方がすばらしいと思っていましたが、別件で配信ライブをやった時、地方に住んでいる、子供がいるなど会場には見に行けない方から『配信だと見られてうれしい』という声をいただいて。僕の作っている番組を見てくれている方は、大人の年齢になっていて、それぞれの生活状況もあるということを今まで忘れていたと気づかされました。自分が作った物、関わる物はできるだけいろんな人に見て欲しいのが作り手の性なので、放送とは違った手段もある今の状況はうれしいです」

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