伝統の技「金継ぎ」でフィギュアは直せるか? タトゥーに込めた想いに伝説の職人が超神対応!:YOUは何しに日本へ?

公開: 更新: テレ東プラス

日本を訪れる外国人たちを、空港や全国の市町村で勝手に出迎えてアポなしインタビュー! そのまま密着取材を行う「YOUは何しに日本へ?」(毎週月曜夜6時25分~)。今回のテーマは「失われたピースを求めて YOUのお宝探しSP!」。日本で大切な思い出を取り戻したいYOU たちのお宝探しに密着する95 分、はたしてどんな面白YOU に出会えるか?

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空港を飛び出し、街でYOUを直撃して日本で初体験したいことをインタビュー。その中から1人のために初体験を全力サポートする「YOUが日本で初体験したいことは?」。

声をかけたのは、2019年12月から慶應義塾大学の大学院に通う留学生の2人。コロンビア出身のセルジオ(26)さんが初体験してみたいのは「金継ぎ」だそうで、未経験ながらも左腕にはタトゥーを刻むほどの情熱を抱く。

やりたい理由は、「人生が失敗続きだったからかな。金継ぎの、失敗を失敗と捉えない考え方に魅かれた」という。

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後日、初体験を叶えることになった報告をするため、セルジオさんのマンションをサプライズ訪問! 快く招き入れてもらうと、ルームシェア仲間の慶應ボーイYOUたちにも歓迎されながらセルジオさんの部屋へ案内してもらった。

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すると、壁には熱い想いがつまった書き初めがドーン! そんな一途なセルジオさんに金継ぎ初体験のサポートを申し出たところ、即OKがもらえたので密着決定!

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ところで「金継ぎ」といえば、割れた陶器を金でつなぐ日本の伝統的修復技術のことだが、何か直したいものでもあるの?

そこでセルジオさんが出したものは、首が完全にもげてしまったフィギュア...。じつはこれ、昔10歳で引っ越す前に、近所に住む親友のアブラハムさんが餞別代わりにくれた大切な宝物だそう。

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その後16年間、この「友情の証」をお守りとして大切に持ち続けてきたが、日本留学に連れてきた際、荷物の中でこんな姿に...。だから金継ぎでカッコよく直して、いつか親友と再会したら驚かしてやりたいんだって! 素敵な想いなんだけど、ビニール製のフィギュアって金継ぎで直せるの?

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初体験当日は、朝8時に新横浜駅で会って、すぐに新幹線で京都へGo! セルジオさんの無理難題を聞いてくれる工房をリサーチした結果、京都で見つかったのだ。

向かった先は、京都の老舗「漆芸舎 平安堂」さん。出迎えてくださった清川廣樹さんは、全国からの修復依頼が絶えないスゴい職人さんで、これまで数多くの重要文化財も修復させており、イギリスの大手放送局からも取材が来るほどの金継ぎマスター!

セルジオさんはさっそく左腕のタトゥーを見せ、金継ぎへの熱意をお伝えすると、金継ぎ歴45年の大ベテランもさすがに驚いて、思わず笑顔に。

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今回は金継ぎ初体験ということで、まず練習用のお皿でトライする。清川さんは基礎知識のないセルジオさんに、うるしの木に傷を入れて出る樹液を修復に使うというところから説明を始めた。

土器をうるしでくっつけるという修復の歴史は縄文時代に始まったそう。諸説あるようだが、その後、安土桃山時代に金が権力の象徴となったときに茶器の修復に用いられるようになり、うるしで直して金で装飾するという手法になって広まったのが「金継ぎ」だ。

基礎を理解したところで、修復に取りかかる。手順は、練習用の割れた皿の断面にうるしを塗って接着→うるしが固まるまで乾燥させる→乾いたら、はみ出たうるしを削り、お皿と高さを合わせる、だ。

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だがここで、うるしの削りすぎを清川さんに指摘されてしまったセルジオさん。これは失敗か...と思いきや、清川さんは「それ(失敗)がこの子の個性になるんです」と教えてくれた。

完璧にしようと考えていたセルジオさんにとって、清川さんの教えは目からウロコで、「この教えを忘れないように、(へこみを)そのまま残すよ!」と笑顔に。こうして、失敗さえも個性として表現するのが金継ぎの魅力なのだ。

それにしても、なぜ金継ぎに憧れたのか。きっかけは「失恋」だったという。5年前、同棲していた彼女に突如フラれ、傷心の中、ネットで見つけたのが「金継ぎ」。「壊れても美しく生まれ変わる金継ぎを見て、自分も変わらなければって思えたんだ!」というエピソードから、金継ぎへの憧れは始まった。

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そしていよいよ、修復は最後の仕上げへ。発色をよくするために赤いうるしを塗り、その上から筆で慎重に金粉をふりかけて一体化させ、余分な粉を払い、磨けば完成! セルジオさんはこの初金継ぎの出来栄えに大満足。

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しかし本題はここからで、セルジオさんが直そうとしているものはフィギュア。清川さんに事情は伝えたものの、さすがの名人もフィギュアは未経験だ。壊れた断面がデコボコなので、普通のやり方ではくっつかないと、頭を悩ませた。

しかし10分休憩すると、清川さんに秘策が浮かんだようだ。それは、もげた首の断面に和紙を使って肉付けするという起死回生の手法。つまり、和紙にうるしを含ませ断面にかませてくっつけるというもの。とにかく初めての作業に悪戦苦闘しながらも、清川さんも本気モードに。

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作業開始から約1時間後、なんとか固定された首のつなぎ目が目立たぬよう、次はセルジオさんメインでうるしをコーティングする作業にかかった。

細かい作業の中、セルジオさんは親友と観に行った映画館での懐かしい失敗談を思い出していた。清川さんはそんな彼に、「自分自身の思い出とか自分のメンテナンスになってる」と、金継ぎの作業がフィギュアだけでなく、自身の心も修復してくれるのだと教えてくれた。

作業を終えたら、首を完全に固定させるまで保管庫で1週間乾燥させる。セルジオさんにとって、フィギュアと離れ離れになるのはこれが初めてだ。

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そして1週間後、再び平安堂さんを訪れ修復状態を確認する。ドキドキの瞬間、扉を開けてフィギュアを手にすると、セルジオさんは思わず「え!?」と息をのむ。そう、乾燥させたことでうるしがなじんで、破損のつなぎ目がまったくわからなくなっていたのだ。

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そして最後の仕上げは、いよいよ金の装飾。セルジオさんの感性で丁寧に仕上げたところでフィギュアの修復は終了。前よりもカッコよくバージョンアップして、友情の証がここに復活だ!

セルジオさんは、「ここまでキレイに直せると思ってなかったです」と感無量。夢の金継ぎ体験を無事に終えたところで、密着もここで終了。親友に会えたらまずは謝って、でももっとカッコよくなったからきっと喜んでくれるに違いない、と目を輝かせた。金継ぎの次は、親友と再会できる夢も叶うといいね!

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