日本一人口が少ない鳥取県で進む「都市部副業・兼業人材」の活用

公開: 更新: テレ東プラス

副業、兼業、リモートワーク。新型コロナウイルスの拡大以前から注目を浴びていた働き方の変化は、コロナ禍で否応なく進んでいる。

鳥取県では県として副業や兼業、そしてリモートワーク を使い地域企業の人材不足解消に取り組んできた。10月3日(土)放送の『羽田土曜会』では鳥取県の平井伸治知事をゲストに迎え、都市部人材の活躍に迫った。

都市部にいる副業・兼業人材を積極採用

鳥取県は日本一人口が少ない県で、地域企業の人材不足という問題を抱えている。そこで県が取り組んだのが都市部にいる副業・兼業人材たちと鳥取の地域企業とのマッチングだ。2019年には東京で「地方創生!副業兼業サミット」を開催。さらに鳥取の地域企業を実際に訪問し、直接経営者の経営課題をヒアリングする「鳥取企業スタディツアー」も実施した。

haneda_20201005_01.jpg
平井知事によれば、昨年の募集では14人の副業・兼業人材の募集に対して1400人の応募があったという。ことし9月にもオンラインで「副業兼業サミット〜週1で地方企業の副社長になる〜」を開催し、全国各地から500人が参加した。

都心からの人材で県に新たな風

実際、採用した企業はどうか。

鳥取名物のらっきょうと漬物の販売を行っている「泊綜合食品」は商品開発に経営課題があった。そこで採用したのが、都内の大手食品会社やPR会社で商品開発や広報を担当した副業・兼業人材の柴山紀子さん。

20201005_haneda_07.jpg
現在、冬に発売する新商品の開発に携わっているが、「泊綜合食品」取締役の岸田いずみさんは「これまで柴山さんが築いてきた人脈、マーケティングの知識がいま商品開発に結びついています」と語る。

効果が既に出ている企業もある。自動車部品関連の組み立てロボットを製作する「エイブル精機」は社員が指示を待たずに自ら動けるようにマインドチェンジを行いたいと考えていた。この経営課題を解決するために採用されたのが石川貞康さん。都内の大手電気機器メーカーで技術開発職として勤務し、定年退職後はフリーランスでコンサルティングに携わってきた。

意識改革のため、石川さんが提案したのは「5S」、整理、整頓、清掃、清潔、しつけの徹底だ。

haneda_20201005_03.jpg
一見すると人材育成には関係ないように見えるが、「エイブル精機」では5Sに取り組んだことで共通の工具を写真が一箇所に集め、結果として会社全体の効率化につながった。石川さんも「企業の文化にどう自分の経験を浸透させていくか。少しずつ変化しているのも実感できるようになった」と話す。

山陰地方の戸建住宅などを請け負うアート建工では、企業ブランディングの構築やクオリティチェックに課題を持っており、クリエイティブ領域に副業・兼業人材の活躍に期待を寄せている。同社の新規事業に関わっているのが「AOI Pro.」執行役員でプロデューサーの神吉康太さん。CM制作を通してプロジェクトマネジメントに関わってきた。

haneda_20201005_04.jpg
神吉さんが取り組んだのは、ブランディングにコピーライターに参加してもらい、大谷社長の言葉をブラッシングすることだった。CMなどに携わっていなければなかなか出ない発想で「一流のノウハウを地方に持ってきてもらい、みんな勉強になっている」と大谷社長は話す。

仕事とは自己実現の源

神吉さんは「AOI Pro.」執行役員でもある。送り出す側の同社CEOの中江康人は「タレントがある人はその才能を欲しいと思っている企業さんがあるわけだから、個人が持っている能力をより多くの企業と社会に提供したほうがいいと思っている」と副業・兼業を好意的に受け止めている。

平井知事は都市部人材の活躍について、ピーター・ドラッガーの言葉を引用し次のように語る。

haneda_20201005_05.jpg
「東京から来ていただいて四六時中でなくてもけっこうだからアドバイザリー、またスタッフとしてやっていただく。いわば副社長になっていただく。鳥取の経営者の方も実際に面接をしていただいて、『この人素晴らしいな』という人材を一本釣りした形。出られる方々もそれぞれ思いをもって入っていただいている。いわば自己実現をされている。ドラッカーも言ってましたが『仕事とは自己実現の源である』。その言葉通りだと思います」

他県に先駆けて、新たな働き方に取り組んでいる鳥取県。日本の未来は日本一人口が少ないこの県にあるのかもしれない。

PICK UP